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尾原和啓×けんすう対談『物語思考』を語り尽くす(中編)

こんにちは!

9月6日、僕のはじめての書籍『物語思考「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』が発売になりました!

今日は、IT批評家尾原和啓さんのオンラインサロンで、『物語思考』について対談した模様の書き起こし中編です。

※本対談は2023年8月21日(月)に行われました

前編はこちら


キャラクターを活かす「役割」

尾原:このステップ3・4・5もさ、言葉一個一個が細かいエピソードが生きてて、「けんすうって本当にこうやって生きてんだな」っていう気がすごいして、泣けてきたのよ。僕は特に4番とか読んでて。

【物語思考の5ステップ】
1.自分を制限している頭の枷を取る
2.なりたいキャラクター像を設定する
3.そのキャラを実際に動かす
4.そのキャラが活きる環境を作る
5.そのキャラで「物語を転がす」

けんすう:こんな感じでやっていく方が楽じゃないか、っていうのがすごくありますね。

尾原:特にインターネット社会だと、お互いがお互いのキャラクターを認知していると、そのキャラクターが活きやすいように出番作りをし合うみたいな所って、すごくある気がするんですよね。

けんすう:めちゃくちゃありますね。役割論だったりもしますし、順番に出番を作るとかもあります。自分は全然問題ないと思っていることに対しても、「今は、自分は偉い人に注意する役割だな」とか。そうすることで相手のキャラクターが活きるなとか。

このあたりも物語のキャラクター配置に近くて、全員似たような人たちだとバランスが悪くなるけど、「ここでは逆に頭が悪い発言して、それによって誰かが解説して周りや読み手も理解する」みたいなキャラクターの人もいれば、「あえて嫌なことを言って、場面を掻き回すからこそおもしろくなる」キャラクターの人もいる。

いろんな配置があるので、そんな感じで人生も設定した方がいいけど、みんなロールモデルとかを探して「ロールモデルのようにならなきゃいけない」とか思いますよね。

尾原:確かに言われてみるとロールモデルと、キャラクターを活かすための役割は、似てるようだけど全然違うよね。

ロールモデルって理想を突き詰めるものだから。本当はロールって全体の中の役割で、何か一つを突き詰めていくっていう形になるけど、キャラクターはインタラクションの中でしか生まれない。そうするとお互いのキャラクターが引き立つようなキャッチボールというか、ボールを回していくっていう作業に変わっていくよね。

けんすう:尾原さんが言ってることがめちゃくちゃその通りで。「相手からのフィードバックが高速で帰ってきて、こちらも調整し続けるっていうのがコミュニケーションじゃないですか」みたいなことが起こる前提で、「相手もこういう役割だからこうしてくるよね」っていう予測が立たないと、毎回翻弄されちゃうんですよね。

尾原:キャラクターっていうのはコミュニケーションにおける、予測可能性でもあるんだよね。

けんすう:「上司だから注意するよね」とかって役割なんですよね。注意したくてやっている上司よりも、役割としてやってる上司の方が多いはずなので。ただそれを理解しないと「あの人嫌な人だよね」みたいになっちゃう。

尾原:キャラクターだと「キャラクターというものに昇華されているから嫌な人」じゃなくて、「そういうことを突っ込むキャラクターじゃん」っていう風に昇華されるから、役割も動くしキャラクターも立つしっていう。

けんすう:まさにそうですね。

キャラクターを裏切っていく

尾原:「今のお話を聞いて『テイラー・バートン』の西野さんと宮迫さんの掛け合いの凄さを思い出しました」というコメントが来ていますけど、元劇団ブサイコロジカル出身のけんすうさんというキャラクターとしてはどうですか?

けんすう:誰もそんなキャラクター知らない(笑)。演劇でよく使われるのって、キャラクターを裏切ることだと思っていて。演劇は制限がすごいあるので、舞台場面を変えるとか、そういうことがほとんどできない中で何を変えるといいかというと「この人こういう人だと思っていたけど、実は犯人だった」とか、裏側は実はこれだったみたいなことが多分演劇のおもしろさなので。

まさに『テイラー・バートン』って、「この人ってこういうキャラクターだよね」っていうところをみんなが考えた後に裏切っていくっていう要素をめちゃくちゃたくさん入れてるんですよね。「演劇の本質は、裏切りを作るもの」と西野さんが考えたんだろうなと思うと、西野さんすげーってなりました。

尾原:だから結局キャラクターが確立してくると、今度は予測可能性が生まれて、予測可能性が過ぎると退屈に変わるから、いかに緊張っていうものをシナリオで作りながらずらすっていう驚きを作っていくかっていう話だよね。

けんすう:予想を裏切りつつ、期待は上回るみたいなことしないといけないので、だからああいう設計になったんだなと。『テイラー・バートン』は本当におすすめです。

尾原:勉強になりますよ。しかも『テイラー・バートン』の初期の役割っていうのが、舞台を最初見てる時は、宮迫さんだったり西野さんっていうキャラクターが乗っかっているけど、汎用性が高いから意外と他の人が演じても成り立つんだよね。

けんすう:そうなんです。だから本当に冗談で広末(涼子)さんを出しましょうとか言ってるんですけど、多分成り立つんですよね(笑)。

尾原:しかもある種、舞台によってその人のキャラクターらしさみたいなものがみんなに許容されていくので、『テイラー・バートン』は本当にすごい食材だと思います。その人らしく生きることが、その人にとってのみんなを笑わせることだったり、楽しませることだから。

何かちょっとやらかした人っていうのは、すべて『テイラー・バートン』をやることによって、変に自分を殺すことをやめられるんじゃないかな。やっぱり宮迫さんは宮迫さんなんだし、多目的トイレの人は多目的トイレの人だしね。

その人のキャラクターで生きることの方が、その人にとって世界に貢献できるみたいなことはすごくわかるから。変なリセットカルチャー、キャンセルカルチャーになりすぎないためにもキャラクターを大事にするっていうのってすごく重要なんだなって思う。

けんすう:あの中にいると西野さんまでやらかした人感が出るっていうのは、ちょっと僕の中でおもしろくて(笑)。

周りもそんな感じで話していて、僕も最初は自然にそんな気持ちでいたんですけど、別に西野さんやらかしてないっていうのがおもしろいなって。

尾原:世の中全体がやらかしてる感というもの、さっき言ったキャンセルカルチャーだったり、岡田斗司夫さんが言ういい人戦略とかホワイト化社会みたいに寄ってきているのかな。

インターネットで何が炎上するかわからないし、ちょっとでも1個よくないことをやってしまったら。その後もう二度とその人にチャンスがもらえなくなってくる、みたいなことを思って、いい人でい続けなきゃいけないっていうのが岡田斗司夫さんのホワイト化社会なんだけど、それってある意味キャラクターを殺しやすくなるんだよね。キャラクターって少し毒でもあるから。

けんすう:正義の棍棒問題というか、漂白された世界において「今、安全なのが悪い人を叩くっていうことだよね」っていう風になっちゃってるんですけど、この先に何かあるかって多分ないので、呼び戻しとかが来るんだろうなと思いますね。

尾原:どうしても正義の棍棒をかざしていると、永遠にもぐらたたきを続けるようになってしまう。もぐらたたき以外の刺激がないから、どんどんもぐらたたきになっちゃう。

キャラクターっていうのは、その人らしさってことだから分かりやすい話なんだよね。例えばひろゆきさんが遅刻しても「遅刻の罪であいつはもう舞台に出すな」なんていうことはないじゃないですか。家入さんが出番に来なかったって言っても、「家入さんを次呼ばない」っていうとそんなことはない。家入さんが来ないってことを含めて一つの企業のセッションだからね。

となると実は愛されるキャラクターっていうのは、人に被害を与えちゃうのはもちろんよくないけど、ある意味、キャンセルカルチャーに対する1つの対抗措置なんだよね。

けんすう:そうですね。ひろゆきさんとか好感度で食べてないし、嫌われてもいいし、干されてもいいしみたいな。

尾原:一言でいうとね(笑)。

けんすう:キャラクターが前提にあるからこそ、できることは結構あるなと思いますね。

尾原:ある種芸人っていうものって、まさにキャラクター同士が物語のパスをし合うっていう、さっきの『グラップラー刃牙』がキャラクターを配置したら勝手に物語が起こるみたいなことの局地だけど。そういったことが実はあなたにも生まれるかもしれないっていうのが『物語思考』のポイントだよね。

けんすう:そうですね。『異世界ひろゆき』っていう漫画がおもしろくてすごくいいんですけど。

どういう漫画かっていうと、ひろゆきさんが異世界に行って、その世界ではひろゆきさんの力は口喧嘩で精神ダメージを与えると、物理的なダメージになるみたいな設定なんです。「異世界に行ったらひろゆきさんはこうなるんじゃないか?」っていう予測がみんなある程度できるからおもしろいんです。これが異世界尾原だと、どうなるかがちょっとまだふわっとするんですね。

尾原:キャラクター的に固まってないから、予測可能性が低いもんね。

けんすう:ほとんどの芸能人とかでも多分そうで、「異世界に行かせて違和感がない人ほどキャラクターが立ってる」みたいな。

尾原:なるほど、おもしろい!

けんすう:異世界武井壮とかだったら多分できるんですよ。

尾原:すごいわかる。あっという間に異世界におけるスポーツ10種競技みたいなものを、すごい卓越しちゃって突破していくんでしょうかね。

けんすう:モンスターをどんどん倒していくとかあると思うんですけど、予測可能性が高い人って、結構少ないと思いますね。

尾原:異世界けんすうはないんですか?

けんすう:異世界けんすうは成り立たないんですよ。『異世界ひろゆき』がすごいのは、ひろゆきさんの解釈の解像度がすごい高くて、僕が見ても「めちゃくちゃこうやりそう」っていうのがあります。

「ひろゆきさんはピンチになって助かった後はめちゃくちゃテンション高くなりそうだから、これぐらい言いそう」とかの解像度が非常に高い。マニアックな話をすると、『異世界ひろゆき』の原作を書いてる作者さんは、『オーシャンまなぶ』っていう、口喧嘩でしか相手にダメージを与えられない世界のファンタジー漫画を書いていたんですよ。

尾原:元々そういう世界観はやってたんだ。

けんすう:なのでいかに悪口で相手を傷つけるかみたいな漫画を、ちゃんと1周書いて人気が出ていた人なので、その点でもやっぱりすごいよくできてます。

もう1つひろゆき、異世界でも論破で無双します』っていう漫画もおもしろいんですけど、こちらは多分作者さんの性格が良くて、どちらかというとまともなビジネスパーソンとしてのひろゆきさんを書いてますね。

尾原:『異世界ひろゆき』はもう完全に倫理観含めて外れてるがゆえに、逆にこの世界をちょっといいように持ってくっていう。キャラクターのタカが外れているから世界が転がっていくっていう話の典型例だよね。

けんすう:異世界行った時にキャラクターとして「この人こうなりそう」ぐらいになってるといいよねっていう話です。

尾原:自分がなりたいキャラクターが異世界だったら、それが物語として転がるかっていうのが一つのベンチマークとして考えられますっていう話ですな。

けんすう:さすがに異世界で言ったらどうなるか?みたいな話は分かりづらいかなと思ったので、『物語思考』では、「例えば織田信長が今の時代生きてたら何をしそうですか?」っていう問いを設定したんですね。ちょっと飛び抜けたことをやりそうだよね、みたいな想像ができるので、そんな想像ができるぐらいのキャラクターになればこっちのもんだ、という感じで書いてますね。

けんすうというキャラクター

尾原:ちなみにけんすうって自分で改めて『物語思考』のワークをやってみた時に、想定してるキャラクターっているの?

けんすう:結構手慣れているのでコロコロ変わりますね。長期目線ではないかもしれないです。でもなりたい状態から逆算するみたいなことは当然やっていたんですけど、やった結果今行き詰まっています。

尾原:行き詰まってるのかよ(笑)。本出しているところで行き詰まってるって言うなよ(笑)。

けんすう:嫌な話、いい大学に入って、リクルートに入って3年ぐらいで起業して、若いうちに会社を売却して億万長者になって、働かなくても年収1億円ぐらいになったらめっちゃ人生楽じゃん、みたいなところの逆算でやってたんですけど。

その状態になった結果幸せなんだっけ?と言うと、「あれ、なんかそうでもねーな」みたいな、そこじゃないなっていうのに気づいたので、またやらなきゃいけないようなタイミングな気がしますね。

尾原:確かにね。どこまで本のネタバレをしていいかというのはあるんだけど、「成功」をお金とかに置いてなくて、幸せに置いているっていうところがすごく誠実だなと思った。

結局、じゃあ幸せって何?ってなった時に、「今を楽しく生きれるかどうか」っていう風に定義をしてるって言うところが誠実だなと思います。

けんすう:ありがとうございます。とはいえやっぱり、本を読んでいる人は「お金があった方が幸せなんじゃないか」とも感じると思うので、一旦お金からスタートしてもいいのでは、みたいな感じにはしてますね。

尾原:ステップ3・4・5のところで「インターネットの中でなりたい自分、キャラクターになる」っていうのがあるんだけど、「物語を転がすためにはある程度コミュニティの中に入っていかなきゃいけない」とか、「インターネットの中で影響力を持った方が物語が転がりやすくなるよね」とか、すごい実践的にアドバイスを書いてるじゃん。

インターネットの時代って、お金は途中で生まれる成果物なんだけど、自分がやりたいキャラクターの中で活躍する機会に恵まれて、機会をちゃんと活かして、それを積み重ねていくと、結果としてお金もついてきやすくなる。そういう意味でも、お金に対してものすごい実践的に書いているよね。

けんすう:だから抽象論、精神論をあんまり書かなかったですね。屁理屈で読んでる人の認知をずらす、みたいなことをやるっていうのが意図的にあって。「やっぱりそうなのかな」「やっぱりこうでしょ」みたいな部分を何でもいいからずらしてみると、行動が変わるかなということが事細かにあるので。

傍点っていう、文章の横に点々がある表記を多用しているんです。傍点がないと違和感のある文章が多すぎて、誤読されるだろうなと思ったんです。

逆説的なこと、例えば普通の人って「お金を貯めるにはお金を使わないこと」だって思い込んでいるのでその認知を変えるんですけど、思い込んでいることが強いとスルーっと読んじゃうので、点々をつけて「これは逆に珍しいこと言ってますよ」っていう感じにしました。

尾原:あえてここで摩擦を作っているから、ここの摩擦を大切にすることによって、自分の考えをずらしていきましょうって話ですね。

『物語思考』って何人かに読ませてみたの?

けんすう:最終稿を読んでるのは、尾原さんと宇野(常寛)さんぐらいですかね?細かくはブログとかでよく書いてたりしました。

尾原:これはやっぱり、一気に読むと全体のイメージが持てるから、やや照れながらステップ1の「枷を外したキャラクターを自分に当てはめてみる」っていうところから始めた方がいい本だと思う。

けんすう:「内容を聞いてると早く読みたくなります」というコメントが。ありがたいです。

尾原:発売日はいつなんでしたっけ。

けんすう:9月6日です。あと2週間ぐらいかな。

編集者が格闘技もやる、箕輪さんのキャラクター

けんすう:箕輪さんはやっぱり編集者としてすごいですね。

尾原:一緒にやってみてどうでした?

けんすう:箕輪さんって物語思考をマジでやるんですよ。これで人生設計するくらいの気持ちで自分でやる。

尾原:自分で実際試してみるってことね。

けんすう:試してみた結果、「ここが詰まります」とか「ここが分からない」、「ここが納得がいかなかった」というフィードバックが返ってくるので、じゃあその部分を書き直さなきゃいけないですね、とかを結構やりましたね。

「この章全部やり直しで」と返ってきて、全部書き直しとかはしょっちゅうでした。

尾原:箕輪さんは編集者としてはトリッキーなマーケティングとか、そもそも取り扱ってる著者が時代の人っていうところに目が行きがちですけど、編集はストロングスタイルで愚直なんだよね。

けんすう:すごく真っ当な編集をして、その上で売る力があるっていうことですよね。

尾原:本当に困ったもんだよ。

けんすう:西野さんも箕輪さんもそうですけど、売る力が上手い人って売る力で売ってるように見られちゃうっていう。

尾原:中身があるから売る力で増幅されるのであって。1じゃない、0.3とか0.2を5倍にしても1だからね。

けんすう:お二人とも「売り方よりも作品だよ」って言ってるのは当たり前の話なんですけど、やっぱ誤解されちゃうんだろうなと思いますね。

尾原:ちなみにコメントをもらった中で、当初思ってたところから一番変わった部分ってどの辺なんですか。

けんすう:「なぜ物語なのか」っていうところは何度か議論に上がったところですね。ステップ1、2ぐらいは結構スムーズだったんですけど、ステップ3、4、5がやっぱり難しいというか。

尾原:出来上がってる人にとって見ると、自然にお互いがキャラクターを活かし合うようになっている。まさに箕輪さんと西野さんとけんすうさんと僕が入ってるLINEのメッセージグループってもう、完全にコントじゃん(笑)。お互いのキャラクターが決まってるから「ここで箕輪さんがこう来るな」、みたいにお互い出番づくりをやっている。

それを改めて言語化して、誰もが1から出来るのかとか、極端な話箕輪さんが別のキャラクターをまとった時に、このステップ1から5までをもう1回再構成できるのか。っていうと、やっぱり僕ら無意識にキャラクターを活かし合って来ちゃっている分、なれるかどうかわからないもんね 

けんすう:箕輪さんのダイエットの話がこの本と連動してあったんです。箕輪さんは痩せたいと思ってるけど痩せられない。「物語思考的にはなぜか?」って聞かれたんですが、結構単純で「ダイエットしてんのにラーメン深夜に食べちゃった」って書くキャラクターなんですよ。

尾原:「ストイックなことは頑張るんだけど、欲望に忠実な俺」ってキャラクターだもんね。

けんすう:だからラーメン食べちゃうんですよ。むしろ食べたくないけど食べちゃったりするみたいな矛盾した行動をすると。

尾原:そうだよね(笑)。「ずっとストイックで言い続けると、箕輪っぽくない」っていう風に周りから思われるんじゃないかって不安に駆られるわけだよね。

けんすう:ネットでもラーメン食べたやつの方が反応がいいと。でもやっぱり箕輪さんがうまいのが、そこで格闘技をやるんですよね。「編集者が何で格闘技をやるの?」みたいなことを言われたいキャラクターなので、格闘技をやるとなるとその時は痩せる。

編集者なのに格闘技を真面目にやってるっていうのがおもしろいので、箕輪さんはダイエットのためにずっと格闘技の試合で予定が入ってるっていう謎の感じになってるんです。それで痛風とかを直してるので、メカニズムをすごくよく理解してやってんなって思いました。

尾原:中級編上級編っていう話で、1回自分のキャラクターが外に認められ始めると、外から求められるキャラクターを演じなきゃっていう圧力がかかる。圧力に対して自分がもう一皮向けたとか、別のものになりたい時に、外から求められるキャラクターとその自分が次に作りたいキャラクターにどう飛ぶのかっていう話はあるよね。

けんすう:箕輪さんだと文春砲みたいな、ある意味強制的なイベントがあったんですけど。ああいうことがあると、次に『かすり傷も痛かった』という本を書いて、その上で「ガツガツした成長も仕事の上では大事だけど、人生の上では脱成長みたいな観点も大事だよね」みたいな新しい要素を入れられるので。

これは不謹慎ですけど、リクルート社もリクルート事件があったように、どこかで強制的なリセットみたいなものがあると意外といいんじゃないかとは思いますね。

尾原:転職もリセットだよね。僕も7年前に逆SEOで「尾原」って検索しても1件しか出ないみたいなところから逆に振るとか。それこそキャラクターとセットで、そのキャラクターに合う環境っていうものもある程度リセットしたり、逆に、トラブルとかも物語の中に吸収していけますよね。

けんすう:尾原さんって7年以上前だと、完全な黒幕キャラで絶対に表に出ないみたいな。

尾原:お前、悪い人のように言うなよ(笑)。

けんすう:悪いことをやっているから表に出ない・・・というわけじゃないんですけど(笑)。

表に出て花を持つのは別の人という「表に出ない美学」のようなものから、自分が表に出て「分かる人」として解説しなきゃいけないみたいな使命感に変わったんですかね。数年後にはソーシャル切腹みたいな感じで、全部出るのをやめるとおっしゃってたと思うんですけど。

尾原:あんたよく覚えてんね。

けんすう:ははは(笑)。おそらく10年単位で、今この10年だけ出るっていう事をやっていると思うんですけど、そうやって軽やかに転換できる人は物語思考に向いていると思います。

尾原:本当にあんたよく見てるね(笑)。10年単位で、外から期待される自分のキャラクターと時代性を考えるんですよね。

もう大分役割は終わったんですけど、これからの10年は未来の変化が早くなってくるから、変化を怖いと思うんじゃなくて、変化をワクワクと捉えさせる役割が必要だと思って、表に出る10年っていうのを設けたんです。

一方で、僕はあと5年ぐらい経つと、こういう知識についてはAIの方が誰が見ても分かりやすく解説をしてくれるものになっていくと思っています。

あともう一つは、自分というものが一つのIDじゃなくて、複数のIDで人生を謳歌できるようになる時代になるので、そうすると「一つのIDにこだわっている人生ってつまらないよね」っていう話をしたい。

一番表に出てるキャラクターIDを消して、実は他に持ってる4つのIDで生きていくっていうことをやっていくっていうのが、大きなストーリーの中で。4つのキャラクターを今大事に、みんなに気づかれないようにWeb3の中にいるわけなんですけれども。

けんすう:有名なのだと滝沢ガレソさんとかですよね。

尾原:そんなわけないでしょ(笑)

けんすう:みなさん勘違いしないでくださいね。


というわけで、尾原さんとの対談の記事中編でした。後編に続きます!

『物語思考』は現在発売中です!

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