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Web3は「株式会社」以来のインセンティブ革命?NFTで人間の行動がどう変わるのか語ってみた

こんにちは!

今日は、きせかえできるNFT「sloth」の企画として、「#NFTの未来を語る」というシリーズの対談記事をお届けします。

今回のゲストは、「SoudanNFT」というNFTについて相談できるコミュニティを主催する仮想筋肉さんです。

少し専門的な話も混ざりつつ、できるだけ初心者にも分かりやすいように、Web3やNFTという領域について、こういうふうに変化していくんじゃないか?という話をしました!

slothの詳細についてはこちら。

こちらの対談は、Twitterスペースでの録音を聴くこともできます。

複数の大企業と提携するNFT相談コミュニティ

けんすう:こんにちは、よろしくお願いします。今回はNFTの未来について語るスペースですが、最近はどんな感じですか?

仮想筋肉:よろしくお願いします。考えてみると、1年前には想像できなかったことが、周りの方々のおかげでたくさん実現しているので、足を向けて寝られないところがいっぱいです。

けんすう:それって仕事の面で良いことが起こっているということですか?

仮想筋肉:はい。この後も少し触れるかもしれませんが、ここ最近は「絵師コレクション」というNFTの実証実験に取り組んでいました。

これは電通グループさんと一緒に取り組ませてもらったものです。

仮想筋肉:またKDDIさんの「αU(アルファユー)プロジェクト」でNFT関係のご支援をさせていただきました。

さらに、TISさんでWeb3事業部門の設立があり、そこでも少し支援をさせていただいています。こういったことができるなんて、1年前には全く思っていなかったですね。

けんすう:すごいですね、どんどん大きな企業と関わっているんですね。素晴らしいですね。

仮想筋肉:本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

今回は未来というテーマで話す機会をいただき、先ほどの実証実験から感じたことや可能性について話せるのではと、楽しみにしておりました。

けんすうさんの意見もお伺いできると新しい発見がありそうで、わくわくしています。

けんすう:ありがとうございます。僕も楽しみです。まず、仮想筋肉さんの自己紹介をお願いします。

仮想筋肉:あらためまして、仮想筋肉と申します。最近、この名前で自己紹介するのが違和感なくなってきている自分が怖いです。

けんすう:刺激的な名前ですよね。

仮想筋肉:そうですね。以前、京都府庁の方とお話ししたことがあって、驚かれていましたね(笑)。

私は「SoudanNFT」というNFTコミュニティの代表を務めています。

SoudanNFTは、もともとNFTに関して相談し合い、助け合う場を作りたいという思いから始まりました。

最近は企業さんからの相談が増えており、電通グループさんのような実証実験の取り組みや、企業さんがNFTを導入する際に、ご相談いただいています。

けんすう:NFTプロジェクトだけではなく、いろんな企業さんとも相談するようになっているんですね。

仮想筋肉:そうですね。コミュニティの皆さんに支えられて、感謝の日々を過ごしています。

けんすう:SoudanNFTに相談したい場合、どのように連絡すればいいですか?

仮想筋肉:いつでも、どんな方法でも構いません。DMでもメールでも。

けんすう:基本的にはDiscordに入るんですか?

仮想筋肉:そうですね。Discordで聞いていただく場もありますし、結構人から紹介されることも多いです。

私はNFTが大好きで、NFTについて話すのが本当に好きなので、声をかけてもらえるなら何でも嬉しいです。そんなことから始まることが多い気がします。

けんすう:仮想筋肉さんはすごく親切で、紳士的で優しいので、人に紹介しやすいですね。

仮想筋肉:恥ずかしいですが光栄です。でも、おそらくもともとの出発点が違うんだと思います。

もともとはただNFTが大好きなおじさんなんですよね。本当にそれだけで、営利目的や利益追求ではなく、単純に好きだからやっていることも大きいです。

これが本業ではないので、そういう部分で、他の人とは違いがあるんだろうと思います。これで生活費を稼ぐ必要がないので、土台が違うんです。

けんすう:そうですね。それもあるし、Web3やNFTについてハードコアな人たちもいるじゃないですか。

彼らの中には、「中央集権はダメだ」という考えを強く持っている人もいるように思いますが、仮想筋肉さんはそういう方ではないですよね。

仮想筋肉:そうですね、私はいろんな意見があっていいと思っている派なので。

今日の話題にもなるかもしれませんが、Web3は人々をより自由にするものだと思っています。そして、それが望ましいと考えています。

もっと多様性が生まれると良いし、いろんな意見があってもいいのかなと思っています。それが、あまり一つの見方に固執せずに、複数の見方を受け入れ、いろいろな角度からものをみることにつながっているのかもしれません。

けんすう:なるほど、ありがとうございます。

それでは、私の自己紹介も簡単にしておきますね。私はクリエイティブ活動を加速させることをテーマにしたアルという会社をやっています。

最近は、「sloth」というナマケモノをテーマにした着せ替えNFTを作っています。

さまざまなところとコラボさせていただいたりして、初心者向けのNFTを広めようとしています。

仮想筋肉:けんすうさんは私が言うのも僭越ですが、言語化の天才だと思っていて、slothのNFTとしての哲学を掲げたことで、NFT界隈に大きな影響を与えていらっしゃると思います。

以前投稿されていたNFTについてのつぶやきでも、お金の話だけではなく、「NFTで社会をどう良くするのか」という点についても触れていましたよね。

それを見て、「これだな」と私も思いました。本当に尊敬しています。

けんすう:ありがとうございます。

開始数ヶ月で3万人規模のコミュニティへ拡大

けんすう:仮想筋肉さんのこれまでの歩みや、どのようなステップで今に至ったのかをお聞きしてもよろしいでしょうか?

仮想筋肉:もともとは仮想通貨の投資家で、2021年にNFTに興味を持ち始めた、いわゆるニュービー(新参者)ですね。仮想通貨について勉強しているうちに、NFTというものの存在に気づきました。

猿のNFT(※BAYC)が非常に高額で取引されていて、当時は正直ちょっと馬鹿げているし、意味が分からないと感じていたのですが、2021年の夏頃にたまたまNFTを購入する機会があり、買ってみたら面白かったんです。

その流れで、たまたまKuraminさんが出していたNFTを購入しました。私はアニメが好きで、KuraminさんのNFTが可愛かったので買ったのですが、クリエイターの方と距離が近くなり、それ以来やり取りができるようになりました。

それが楽しくて、NFTに対する考え方が変わったように思います。

2021年の夏は、イラストレーターやクリエイターを中心に、NFTが日本でブームになっていました。その時期は、たくさんの方がNFTに興味を持っていて、MetaMaskやOpenSeaの使い方に関する疑問がたくさんある状態でした。

そこで2021年の10月、相談や助け合いの場としてSoudanNFTを作ったら、ブームに乗ったからか、年末にはメンバーが3000人くらいまで増えました。

そこから、何かここから新しいものを作ろうという声が上がって、海外で流行っているジェネラティブNFTを作ることになりました。

Kuraminさんがアートワークをメインに担当し、それが「Love Addicted Girls」という可愛い女の子のNFTになりました。

仮想筋肉:これは再現性のないことなんですが、当時「Azuki」というNFTがリリースされ、アニメ調のNFTがブームだったんですね。

その影響で、「Love Addicted Girls」も注目を浴びました。年末の3000人から、2022年2月14日のリリース時には、コミュニティは3万人まで増えました。

けんすう:すごい増え方ですね。

仮想筋肉:そうなんです。本当におかしくて、ある時期には、一晩で数千人が増えるようなこともありました。

Discordコミュニティの人数が増えていって、恥ずかしいですが、当時の我々は素人の集まりだったので、すごく戸惑いながら活動していました。というか、当時日本でコミュニティ構築型の大規模NFTプロジェクトが存在しておらず、「Love Addicted Girls」が日本初だったので、どこにも知見が無くて。本は当然ないし、関係する記事もほぼなくて。日本人の誰も知っている人がいなかったんです。なので、のたうち回りながら知見を積み上げていった感じです。よく深夜まで活動していて、チーム同士で知見を共有し合っていましたね。

当時のブームの影響で、「Love Addicted Girls」のNFT販売は2分で完売しました。一次販売価格が0.05ETHだったんですが、当時は今と違って0.05でも安いと言われていたんです。「安くてありがたい」と言われて、2分で売り切れました(笑)。

そんな感じで、最初は我々も個人の素人集団からのスタートだったので、ある意味でハードルを下げたことで、その後、日本でいろんなプロジェクトがたくさん出てくるのに貢献できたと思っています。

「あいつらにできるなら、おれらにもできるじゃん」みたいな感じというか、それは良かったと思います。NFTが拡がってほしい私にとっては嬉しいことですね。

けんすう:なるほど。3万人が参加しているというのはすごいことですね。今調べたら、兵庫県の稲見町というところの人口と、同じくらいの人数ですね。

仮想筋肉:町の人口と同じですか!それはすごい。今思い返すと、当時は大変すぎて、控えめに言っても死ぬかと思いました(笑)。

ただその中で、のたうち回りながら知見を実地で学んでいけたと感じています。

SoudanNFTでは、皆さんのおかげで今があるという感謝があるので、自分たちが得た知見は守秘義務に反しなければ基本的に全て公開すると決めています。

それで、他のNFTプロジェクトから聞かれたら答えるということを繰り返しているうちに、企業さんからの相談が増えていって。普通に答えていたんですが、無料でやってもらうのは申し訳ないという声をいただくようになり、昨年の8月に会社を設立しました。

そこから先ほど言ったような、いろいろな企業とのご縁があり、電通さんやKDDIさん、TISさんとつながりを持つことができました。その結果、現在に至っています。ざっくりとした経緯としてはこんな感じです。

けんすう:なるほど、ありがとうございます。タイミングがやっぱり重要なんだなと感じますね。

ただ、立ち上げのタイミングは重要ですが、継続はリーダーや参加者の人柄に左右されるので。そして、電通さんやKDDIさんのような、ちゃんとした企業とちゃんと話せるというのはすごいですよね。

仮想筋肉:本当に周りの方々に助けられたということしかないですね。コミュニティを支えてくれている方々のおかげです。

そして残念ながらかもですが、これは再現性がないとも思いますね。今後について言えば、皆さんへの恩返しとして、NFTを使った活動で何かできればと思っています。

けんすう:SoudanNFTって、みんないい人のイメージがあります。

仮想筋肉:そうですね。そうありたいなとは思っているので、そう仰っていただけるのはありがたいですね。

Web3 / NFTはもっと自由でいい

けんすう:これからどんな活動をしていきたいですか?

仮想筋肉:そうですね、今日のテーマ的な、未来っぽい話題で大丈夫ですかね。ちょっと話が大きくて皆さん引かれるかもしれませんが、NFTを通じて世の中をちょっと良くしたいと思っているんですね。

これはけんすうさんの言語化の影響や刺激も受けていますが、先ほど話した電通グループさんとの「絵師コレクション」での学びの影響も受けています。

これって、「NFTを活用することで、楽しく活性化した自発的なコミュニティをいかに創れるのだろうか?」という実証実験だったんです。

そのプロジェクトで、タツノコプロさんのドロンジョというキャラクターをお借りして、3ヶ月かけてコミュニティと対話しながら、一緒にイラストを創り上げていくというものでした。

そのときに、運営陣の想定を超えることが起きたんですね。それが利他的な行動なんです。

けんすう:「他人に利する」と書いて利他ですね。

仮想筋肉:はい、具体的には、コミュニティにおいて話したりすると、ポイントが手に入り、それがNFTと交換できるという仕組みでした。

そのポイントでしかもらえないNFTがあるんですが、みんなが一生懸命貯めたポイントを互いに贈り合うという行動が起きたんですね。

これって一見すると経済的合理性がないように思える行動です。これは想定していなかったのでちょっと驚きました。

今言語化しますと、NFTを通じて、お互い優しくなれるとか、世の中を良くする行動が起こる可能性を感じたんです。ちょっと大きな話ですが、「人間も捨てたもんじゃないな」と思ったんですよね(笑)。

けんすう:仮想通貨周りは詐欺や騙し騙されが多いイメージがありますもんね。

仮想筋肉:人間には利他的な一面もあるんだなと改めて思えて、とても嬉しかったです。

これを社会に実装することで、人々がもっと良い関係を築けたり、世の中を良くする行動が起きたり、お互いに優しくなれるようなことができるのではないかと思い、今後はそんなことをやりたいと考えています。

けんすう:素晴らしいですね。具体的に何か考えていることがあるのでしょうか?

仮想筋肉:色々と各種組織の方から相談をいただくこともあり、今後1年くらいで公表できると思います。一方で、まだ世の中全体として黎明期のフェーズで、どこにも答えがないので知見を積み重ねていく必要があると思います

先に話した「絵師コレクション」」はデジタル空間での行動加速、コミュニティ形成の実証実験でした。次は、現実空間で人々の行動が変化するか、加速するかということを実証実験する必要があると思っています。

まだ公開できないのですが、観光や飲食の分野での話もありNFTを使って、現実世界における人々の行動が変わるかどうかを実験したいと思っています。

今年中には公開できるといいなと考えています。

けんすう:それは楽しみですね。デジタル空間だけでなく、リアルな空間でも活用できるということですね。

仮想筋肉:私はデジタルもリアルもどちらも好きな人間です。NFTの活用を現実空間ともつなげていきたい派ですね。

けんすう:面白いですね。逆に、日本のNFTの現状で課題だと思う部分はありますか?

仮想筋肉:ありがとうございます。そうですね、2つほど思い浮かぶのですが、1つ目は「息苦しい」と感じる点です。

のぶめいさんとけんすうさんの対談の録音を聞いて、のぶめいさんは「みんな、まじめすぎひん?」とおっしゃられていましたが、私の言葉で表現すると「息苦しい」という感じです。

Web3やNFTって、人々をもっと自由にするものであってほしいと私個人は思っているんです。今の日本のNFTは価値観が限定的だったり排他的だったりする部分があるので、もっといろいろあってもいいんじゃないかと思っています。

けんすう:仮想筋肉さんもそう感じることがあるんですね。具体的な例はありますか?

仮想筋肉:ちょっとどこまで話したものか微妙なこともあるかもですが、私はNFTについて、個人の行動、すなわち売り買いは自由だと思っています。特定の行動を強制するとか、そういったことを強く主張するのは、私からすると違和感があります。

けんすう:なるほど。つまり、ずっと持ち続けないとコミュニティから批判されるようなことがあると、仮想筋肉さん的には少し息苦しく感じると。

仮想筋肉:そういうことです。私がそう思うだけかもしれませんし、別に強制しているわけではないという見方もあると思います。

私もNFTの運営をしているので、もちろん、ガチホ(※長期間にわたってNFTを保有し続けること)してくれたらすごく嬉しいです。ただ、売ってくれても、それはそれで二次流通の手数料をいただけるのでありがたいことですよね。

一時でもNFTを持ってくれたことに対する感謝がありますし、またいつか戻ってきてくれたら嬉しいとも思います。

なので、NFTを売ること自体は悪いことではないし、もし手放されてしまったとしたら、そのNFTの魅力が不十分だったということで、運営側が責任を感じるべきだと私は考えているっていう感じですね。

けんすう:たしかに、プロジェクト側がそういう風潮を作っている場合もあるし、コミュニティ内でなんとなく雰囲気でそういうプレッシャーがあったりして、そうなってしまうこともありますよね。

仮想筋肉:そうですよね。同質性を重んじるところがそもそも日本にはあるとも思うんですが。けれども、もっと自由で多様性があるほうがいいなと思います。

NFTの価値は論理的に説明できない?

仮想筋肉:でも、今お話ししたことよりも、もっと大きなトピックがあると思っています。

それは、NFTがもっと広く多くの方に触れてもらうことや、社会実装をいかに進めていけるかということです。それによって、NFTに触れる人、楽しむ人が増えることを目指したいんです。

けんすう:初心者さんやインターネットに詳しくない人たちでも使えるようになるといいですね。

仮想筋肉:そういった方向性の取り組みをしていきたいです。それによって、NFTが健全に発展することにつながると思っています。

けんすう:なるほど、ありがとうございます。

話は変わりますが、NFT業界はタイミングが重要で、安いと言われるときもあれば高いと叩かれることもあり、移り変わりが早くて驚きますよね。

仮想筋肉:そうですよね、だから私は正解があるとは思っていないです。私がNFT界隈に参加してから1年半ちょっとの間で、界隈での常識が何度も変わっているんです。

だから賢しげに、「NFT界隈ではこうすべき」とか「これが正解だ」という自称マーケッターには気を付けるべきだと思います。いろんなやり方を楽しんでいいんじゃないでしょうか。

例えばslothも、楽しむためのNFTとという哲学を打ち出していらして、こういった多様性があることは素晴らしいです。slothの哲学に触れて、どこか救われた感じがしました。

けんすう:これはいろんな方に言っていただいたんですが、ある意味、速攻で売れなきゃいけないという雰囲気があったら、辛いじゃないですか。

実際、ほとんどの人が作ったNFTはすぐには売れないわけですし。すぐに完売しないといけないから、めちゃくちゃ安く売りますっていうのも、ビジネスとしてはアンチパターンですよね。

本来の価値よりも安く買った人は大事にしてくれないとか、クリエイターに収益が入らないとか。

皆さんそこをプレッシャーに感じることが多いですが、私たちがやっていることに対して、多くの方から感謝の声をいただけるのは嬉しいです。

仮想筋肉:実際のところ、現実世界では出した商品が数時間で売り切れてしまうようなことは滅多にありませんよね。

むしろ、あまりにもすぐ売り切れるとしたら、値付けや商品数の設計が間違っているんじゃないかと思います。

けんすう:おっしゃる通りで、ユニクロのエアリズムとかよく売り切れていて悲しいんですが、それってお客さんにとっても不便ですよね。

仮想筋肉:そうですね。とはいえ、いろんな販売方法があってもいいと思います。

あえて売り切れることを前提とした限定品があってもいいし、いつでも手に取れるような商品もあるといい。どちらも私は好きです。

けんすう:言い方が少し悪いですが、NFTの価値を判断できる人類はあまりいないと思うんですよ。

アートの世界ではプロが評価をしたり、歴史的な背景を読み解いたりする人がいますが、Azukiは価値があって、Azukiと同じぐらいクオリティが高いこっちのNFTは全然価値がないっていうのを、論理的に説明できる人はほとんどいなくて。

なので、信頼できる人が買っているか、実際に売れているかの結果を見るしかないという部分はありますよね。

仮想筋肉:はい、それが現状だと思います。

けんすう:たしかにそれは正しいんですが、そこでしか判断できないため、そこがハックされて、有名な人をプロジェクトに巻き込めるといいよねみたいになっているんですよね。

仮想筋肉:そうですね、プロジェクトに一瞬だけ出てくる人がいますよね。

けんすう:有名な人が一瞬だけ出てきて一瞬で消えたりとか、売れそう感を演出する仕組みを作る、つまり巻き込む共犯関係の人が多ければ多いほど、AL(※アローリスト:NFTの優先購入権)を配って安く買ってもらい、一般販売でちょっと高く売って完売だよってやった後、二次流通でみんなが売り抜けられるようなことも起こるよねとは思ってて。

仮想筋肉:そういうことは実際起きていますね。

けんすう:そうですね、クリプトインフルエンサーみたいな人たちが、いくらで買っていくらで売り抜けました、という投稿をしていたりしますが、普通に考えて、誰かからお金を吸い取っているので、損する人が大量に出て業界が沈むパターンにハマりやすいですね。

仮想筋肉:こういう部分を超えて、本質的な価値提供をしていくということは、業界全体で考えなきゃいけないことだと感じます。

けんすう:本当の投資商品や株だったら、ある程度分かるんですけれど、NFTを完全な投資商品的にすると、価値を決める基準がなさすぎて騙し合いになっちゃうんだと思います。

仮想筋肉:株だったらPER(※株価収益率)とか、そういう指標である程度見ることができますけど、NFTにはそういうものがありませんからね。

けんすう:株だと法整備もされていますが、NFTだと「来週にこれが発表されるから値上がりするよ」ということを平気で言えますし、こういうインサイダーな取引が起こると、初心者とかが損を被りますよね。

仮想筋肉:本当ですよね。関係者情報をもとに、事前に買っておいて、煽って盛り上げて売り抜ける人がいると聞きます。それは本当に良くないことだと思います。

けんすう:よくないですし、合理的な動きをする投資家が多いので、どうしてもそうなりますよね。そういうことが起こらない仕組みのプロジェクトが増えないといけない。

「虚構」が人類を進化させる

仮想筋肉:だから、投資商品ではないNFTがもっとたくさんあっていいと思います。

slothがその一つだし、そういうものが社会実装されていき、会員権や行動履歴としてのSBT(※ソウルバウンドトークン:譲渡不可能なNFTのこと)など、こういったことがいろいろ増えていくといいなと思います。

けんすう:そうですね、ここは変えていきたいところですね。

仮想筋肉:みんなが価値があると思っているから、価値があるというのは本当にそうですよね。私は『サピエンス全史』が好きで、「虚構」という概念が好きなんですね。

今けんすうさんがおっしゃったようなことは本当にあると思うし、「虚構」のパワーが悪い方向で使われると、大変なことが起こりますからね。

けんすう:そうですね。知らない人に向けて説明すると、農業革命など、いろんな革命があったけれど、非常に大きかったのが虚構革命で、みんなが共同体として「この川には神様がいるよね」と信じられるようになると、集団生活ができるようになるんです。

仮想筋肉:そうですね、国や村といった概念も自然界には存在しないけれど、この国や村という虚構を信じられたからこそ、今の人類が他のサピエンスとの生存競争に打ち勝ち、存在しています。

けんすう:そうですね。最近読んだ本で、人の欲望とは何かということが書かれた本では、「欲望の本質は模倣だ」って話で、つまり、生理的な欲求以外はほとんど真似なんですよね。

あの人が持っているものが欲しいとか、あの人が出世したから出世したいとか、基本的には、社会的な関係の元でモデルとなる人を真似するという話がありますよね。

だから、NFTも誰々が持っているから欲しいというところになるんでしょうね。

仮想筋肉:そうですね、それはある意味、人間の根源的な欲求かもしれないんですが、比較が人を不幸にすることもありますよね。

例えば、同じ会社で年収800万円のトップレベルの人は非常に幸せを感じる一方、みんなが2000万円もらっている別の会社で年収800万円の人は不幸に感じるという実験結果があります。比較で人は幸せ不幸せを感じるっていうのがありますよね。

けんすう:そうですね、そこは大事だと思います。slothにおいても、高い服を着ているから良いわけではなくて、コーディネート的に素敵だとか、センスがあるという点で、比較や真似をするのが良いのかなと考えています。


現実世界でも、いい服を着ているなーと思ったときに、「これ20万円なんだよ」と自慢されたら、ちょっと違和感がありますよね。

仮想筋肉:友達をなくしますね(笑)。

けんすう:どうしてもAzukiのコンセプトや絵が好きだとみんな言っているものの、本質的にはすごく高くていいもの持ってるっていう感覚が9割くらいだと思っていて。

逆に、絵が好きだからという理由で持っている人がいても、フロアプライスを見て、「小さいプロジェクトだね」と見られるので絵のセンスや自分の好きなものを表現するのに全然使えなくなってるので、お金の威力が強すぎるんですよね。

もともとはNFT自体がいいなと思って買ったものでも、「これ〇〇ETHですよね」みたいな話をされると、どうしてもつまらないなと感じてしまうんですよね。

仮想筋肉:そうですね。本来的に我々がNFTでやりたかったこととは、ちょっと違う方向に進んでしまっているような気がしていて、もともとNFTで感じた可能性やときめき、楽しさといった部分が、お金の力に押されている感じがありますね。

けんすう:そういった楽しさを押し出すようなプロジェクトが増えてくると、もっと面白くなると思うんですけどね。

NFTは「共犯関係」を作るのに向いている

けんすう:そこで、NFTの未来についてどう思います?

仮想筋肉:正直に言うと、分からないです。正確にいうと、未来は誰にも分からないと思っています。なので、自分が未来の正解を知っているという人は疑った方がいい気がします(笑)。

ただ、今は私たちがNFTの未来を創っていけるチャンスがあるフェーズだと思うんです。

扉は誰にでも開いているんですが、あと1〜2年で閉じると思うので、今皆さんと一緒に良い未来を創っていくのが私のやりたいことですね。

何が良い未来かは人それぞれですが、各自がそれぞれの幸せの判断軸を持ちながら進んでいくことが大事だと思います。

私は、NFTを通じて人が幸せになるような未来がいいと思います。例えば、NFTのおかげで出会えた友達が世界中にできるとか、そういうことが起こると、素晴らしいと思います。

NFTが社会に広がることでそういったことがたくさん起こり、人々が楽しくなったり、繋がったり、幸せになったり、お互いに優しくなれたり、自由になれる未来がいいなと思っています。

けんすう:素敵ですね。他の人にも聞いたんですけど、今まで聞いた話の中で一番素敵な回答でしたね。

仮想筋肉:いやいや、けんすうさんにそんなことをおっしゃっていただくなんて、本当に恐縮です。それを実現できるだけの努力はしていきたいですし、皆さんのお力をお借りして一緒に進んでいきたいと思います。

私の考えも一つの意見に過ぎず、他にもたくさんの良い意見があると思います。

私もそれを聞いて、考えを変えることもありますし、考えををより進化させていく、それが楽しいと感じますし、コミュニティの醍醐味だなと思います。

けんすう:僕のほうからも実利的な話をすると、長期的な目線で言うと、メタバース、AI、NFTが融合して使われていくんだと思います。

メタバース空間でダサいTシャツを着ていたらかっこ悪いから、課金して変えたいと思うのは当たり前ですから、そういうときにNFTが使われるだろうし、どのメタバースでも、自分たちでオンラインショップの実装をするのが面倒なので、NFTでやったほうが二次流通も含めて、基盤が整っているので盛り上がるんじゃないかっていう。

ただそこまでは、冬の時代のようで、今だと市場が動いていない感じもありますし、これから数ヶ月後に市場が動くかもしれません。

この前は5ETHだったものが、今は1ETHになって、半年後には7ETHくらいになったりと、状況が大きく変わっていくことがよくあるんですよね。

短期的な変動に振り回されると疲れちゃうと思うので、3年くらいのスパンで見たほうがいいかなと思います。

仮想筋肉:時間軸が短くなってますよね、1週間前のニュースが古いと言われることがありますし。これはすごいことですよね。

けんすう:よく言うのが、私たちが認知できる時代の速度を超えたと言われてますよね。

AIが自分でAIを改善するようになるまで、10年から20年と言われていたんですが、最近の専門家の話だと、3年から5年って言ってたので、そこが次の山ですよね。

また、エンジニアやデザイナーの仕事はなくならないと言われてたんですが、最近はうちのエンジニアも自分でやらなければいけない仕事量が減っていて、長年一緒に働いているエンジニアのスピードが、冗談抜きで5倍くらいになっていると思います。

仮想筋肉:そうなんですか。それはすごい。

けんすう:こうなると、営業力や人と人が話すスキルが貴重になってくる感じはしていて、NFTも人と仲良くなる体験やスキルが重要になっていく感じがします。

仮想筋肉:たしかにそうかもしれません。けんすうさんの話を聞いて頭に浮かんだのですが、コミュニティを創りたいという要望を受けて支援することもあるんですが、コミュニティマネジメントにはある特性・能力が求められるんです。

これが何かというと、「いい感じに人とやり取りできる」ということなんですね。

これは当たり前のようで実は非常に難しいことだと思っています。実際に相手とやり取りすると、相手から好かれる人がいるんです。言い換えると、相手を幸せにする人がいるんです。

そういう人は、コミュニティマネジメントするときに非常に有能だと思うんです。そこから熱や動きが生まれるのですが、これをできるかできないかは、真似できないところがあるんですよね。

けんすう:そうですね。とある人材会社の人が言っていておもしろいと思ったんですが、「あなたはどんな社会人になりたいですか?」「何を成長させたいですか?」と聞くと、みんなスキルの話をするんですよね。

でも「あなたはどんな人と働きたいですか?」と聞くと、リスペクトして接してくれる、優しい、情熱があるといった感じで、スキルの話をする人がほとんどいないんです。

つまり、自分がなりたい層と一緒に働きたい層がかけ離れているのに、気づいていないということが多いんです。なので、それはたしかになと思いました。

仮想筋肉:なるほど……それは非常に示唆深いですね。今の話からちょっとずれますが……。

私はコミュニティやDAO的なものに可能性を感じておりまして、人は個人としてリスペクトされたり尊重されたいところがあると思うんです。

株式会社という概念は人類を推進し、進化させてきたと思います。ただ、会社組織によって、個人の自由や尊重が失われる作用も多少あると思うんですね。

その点、DAO的なコミュニティになった瞬間に、ヒエラルキーが作用しにくくなって、人が人として扱われやすくなり、尊重されることが起きやすいなと考えてるんですね。

なので、株式会社に対するカウンターカルチャーとして、コミュニティやDAO的な存在が機能したらいいなと思っていて、私はそのような未来を探求したり、世の中に実装していくこともやりたいと考えています。

けんすう:NFTやトークンエコノミクスは関連性が高いと思いますが、しがらみ作りの面が強いですね。

仮想筋肉:なるほど、しがらみ作りとは非常におもしろいですね。

けんすう:多くの人は避けたいと思いがちですが、それを求める面もあると思います。

ただのネットコミュニティだと、それほど仲良くならないけど、NFTでお金が絡んだり利害が絡むと、仲良くなりやすいということがあるんですよね。

仮想筋肉:逆にそれがいいんですね。

けんすう:エンジェル投資をするのでよく分かるんですが、普通に友達になるよりも、こちらが300万円投資して株主になると、仲良くなり方が加速します。

応援すればするほど、得するわけですからね。心からこのサービスがうまくいってほしいと思うから、モチベートしたいし、応援するし、サービスの宣伝もします。

向こうも必死ですから、いろいろアドバイスをもらおうとしたり、協力してもらおうとするので、人間関係が深くなりやすいですね。

仮想筋肉:おもしろいですね。

けんすう:2回しか会っていないのにものすごく仲良くなるという例はエンジェル投資ぐらいだと思ったとき、やはり共犯関係というか、実社会で今まで作れなかった関係が作れるようになるということがありますね。

仮想筋肉:それが、Web3やNFTの根源的価値だったりするのかもしれないですね。

けんすう:そうだと思います。だから、プロジェクトがうまくいったら自分の持っているNFTの価値が上がって嬉しいという気持ちがあって、お互いに頑張るし、仲良くなりやすいんですよね。

これからますます、AIによってアウトプットのクオリティが高くなっていくと、頑張ろうと思う気持ちで、仲良くなる速度や深さが増していく気がします。

仮想筋肉:人類の歴史においても大切なことですね。

私たちホモサピエンスは、実は他の類人猿と比べ頭も悪くて、力も弱い存在だった研究があるそうなのですが、なぜそんな我々が生き残れたかというと、「仲間を作り群れを作ること」が大きかったという説があるそうです。

株式会社や国家も、ある意味で集結の仕組みですが、今はトークンやNFTを使った新しい集結の仕組みが生まれつつあるのかもしれません。

けんすう:そうですね、株式会社が出る前まで、1つの目的のために向かう組織は存在しなかったんですよね。

仮想筋肉:また面白い話を。それは国家も含めてですか?

けんすう:そうですね。国家はたまたまその地域にあるけれど、目的には向かっていなくて。

宗教や村も同じで、株式会社ができて初めて、例えば黒胡椒を持ってきて貿易で売って利益を出すことを目的に集まる組織が生まれたりしたわけです。

株式会社はとてもすごい発明なんですが、それに匹敵するのが今のインセンティブ革命というか、Web3やNFTだと思っています。

仮想筋肉:コミュニティの目的は何だろうって思いますね。SoudanNFTって何だろうなとか。

けんすう:そうですね。株式会社ではミッションや株主利益の最大化が普遍的なものですが、NFTの場合はホルダーの利益の最大化ではないじゃないですか。

仮想筋肉:おっしゃるとおりですね、この利益が、経済的な利益を意味することもあってもいいでしょうし、経済的な利益以外の存在目的もあっていいような気がします。その多様性に期待をしたいという気持ちです。

さいごに

けんすう:ところで、何か告知したいことや言いたいことはありますか?

仮想筋肉:告知ですか……いやこの時間が楽しすぎたので今は思いつかないですね(笑)。ちょっと大げさだと思いますが、私にとって幸せな時間でした。

けんすうさんとNFTを通じて知り合えたり、お話できること自体が本当にすごい、光栄なことだなと思っています。

このご縁を繋いでくれたNFTへの感謝をもって明日以降も歩んでいける気がします。

けんすう:すごい、アイドルみたいな言葉選びですね。

仮想筋肉:いやいや、身に余るお言葉です。今日は本当に光栄で幸せな時間でした。ありがとうございました。

けんすう:最後にslothの宣伝をします。slothはナマケモノのNFTで、着せ替えが楽しめるものです。

本体と衣装とアイテムがあり、サイト上でガス代を払えば、着せ替えすることができます。ブロックチェーン上のNFT画像も合成されて変わるんですよ。売るときは、一体として売ることもできます。

現在、一般発売中で、今はアイテムと本体を合わせて、8000個以上売れています。

仮想筋肉:トータル8000個ですか。すごいですね。私も購入しました。服とかアイテムを揃えたくなりました。

けんすう:発売中なので、ぜひ買ってください。非常に初心者向けに作っていて、そういう人たちが買ってるイメージですね。

では、今日はお忙しい中ありがとうございました!

仮想筋肉:ありがとうございました!


というわけで、以上になります!ありがとうございます!

繰り返しになりますが、きせかえできるNFT「sloth」、一般販売中です。

NFTを買ったことがない、という方向けのヘルプページも用意しましたので、こちらもぜひご覧ください。

NFT初心者でも大丈夫!sloth初心者ガイド

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