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連載「NFTアート、やってよかった?」ampontant・君さんインタビュー

こんにちは!

今日は、きせかえできるNFT「sloth」の企画として、クリエイターさんにインタビュー配信した内容を、記事化してお届けします。

テーマは、「NFTアート、やってよかった?」です。まだNFTにはさまざまな課題がある一方、すでに「NFTのおかげで人生が変わった!」というクリエイターの方も多く現れています。

そういった人たちに、現状についての率直な意見を聞くことで、NFTという「なんだかよくわからないもの」の輪郭を探っていく企画です。

今回のゲストは、ampontant(あんぽんたん)という、かわいいアヒルのNFTコレクションを運営している、デザイナーの君(きみ)さん。

slothの詳細についてはこちら。

この記事の内容は、Twitterスペースの録音から聴くこともできます。
https://twitter.com/sloth_life_nft/status/1635203176264777729

出発点は落書きだった

——今日はampontantの君さんに、「ぶっちゃけNFTアートやってよかったの?」というテーマで、いろいろお話を聞けたらと思っております。

NFTはまだまだ黎明期なので、分からない方にとってはこわいお話もあるんですが、一方、これで仕事が生まれた、人生がちょっといい方向に変わったという方も多いんじゃないかなと思っているので、そういった方々にお話を聞いていく企画です。

よろしくお願いします。

君:君と申します。ampontantという、ツノの生えたアヒルのキャラクターのNFTを展開していて、 主にデザインを担当しています。

——最初に気になったんですが、なんで「あんぽんたん」なんですか?

君:そもそもampontantというキャラクター自体は、だいぶ前に自分の中で作っていたものです。

もともとは砂漠にいる鳥のキャラクターとして考えていて、体が水分でできているんですけど、ノロマだからいろんな動物から体の水分を取られちゃうみたいな設定でした。

今はその設定は活かされていないんですが、名前はそのノロマな特徴から、ドードーやアホウドリをヒントにしました。

アホウドリも完全にノロマで警戒心がなく、すぐ捕まえられるので絶滅してしまったんですが、そういう鳥はストレートに悪口みたいなネーミングが付くなと思って。

そこから考えて、あんぽんたんって悪口なんだけど、響きがすごい可愛いから、このネーミングにしました。

——すごく可愛らしい名前ですね。このampontantはNFTとは関係なく、もともと考えてらっしゃったっていうことなんですか?

君:そうですね。でも、考えていたと言っても、自分が落書きをするときにちょっと描いたりするくらいで、SNSで絵を発信したり、グッズを作ったりは考えていませんでした。

NFTをやるまでは、出し先がなかったんです。そもそも当時はイラストレーターでもデザイナーでもなかったので、グッズを作るのはハードルがすごく高いという認識がありました。

——そうなんですね。もともとどういったお仕事をご経験をされてから今のampontant NFTを始めたんですか?

君:Webの会社をいくつか転々としていて、やっていることはその会社ごとに違ったんですが、基本的にずっとWeb系にいました。

もともと大学時代から広告関係の仕事をやりたかったので、Web広告や代理店への出向、プランニング、ディレクション、をやることが多かったですね。

——ampontantというキャラクターは当初、落書きぐらいのものだったんですね。

君:そうですね。手癖でちょっと描くようなキャラクターでした。

たくさんバリエーションがある絵が好き

——そこからどうしてNFTをやってみよう、となったんですか?

君:ampontantは、僕とNissy(にっしー)っていう技術担当の二人でやっています。

もともと僕とNissyは中学校の同級生で、卒業した後もちょこちょこ連絡を取り合ってたんですが、彼は2017年ぐらいからずっとブロックチェーンや仮想通貨を見ていて。

仮想通貨おもしろいよとか、ブロックチェーンすごいよ、NFTっていうのがあって、クリプトがどうで、みたいな話を、3〜4年前から聞いていました。

CryptoKitties(クリプトキティーズ)というゲームとかもあるよ、と言われても、そのときはまだ、「そうなんだ」ぐらいでしたね。

それからZonbie ZooなどをきっかけにNFTが流行ったタイミングが2回ぐらいあって、毎回Nissyから話を振られるので、都度見ていました。

それまではあんまり興味がなかったんですが、ジェネラティブという、一つの素体からたくさんのバリエーションのイラストを生み出すNFT展開の手法が主流になっているのを見て、興味を持ち始めました。

僕はもともとBE@RBRICKやステッカー、ガチャガチャがすごく好きで、一個のフォーマットでたくさんのバリエーションがある、みたいなものが自分の癖に刺さったんだと思います。

そこから、そういう系のものを展開できるんだったら、ちょっとやってみようかなと思って、始めたのが去年の頭ぐらいですね。

——なるほど。お仕事として絵を描いたり、趣味で描いたりすることはそれまでにもあったんですか?

君:絵を描く仕事はしていなかったんですが、一応大学はデザイン学科だったので、多少は描いたり、その勉強をしたりはしていましたね。

単純にデザインは好きだったので、仕事ではやっていませんでしたが、情報を見たりデザインツールを触ったりはしていた感じです。

最初のNFTも別にampontantでやるつもりはなかったので、どういうのがいいんだろうとパターンをいくつか考えていたんですが、結局しっくりくるものがなくて。

最終的にampontantっていうキャラクターをどうにかブラッシュアップして出してみようかなと考えた結果、自分のなかで割としっくりきたのが去年の頭で、実際に出しながら勉強していけばいいかなと思ってやってみました。

——以前、君さんとお話ししたときに一番びっくりしたのが、ampontantはジェネラティブっぽいだけで、実はジェネラティブではないという話でした。全部手で描いているんですか?

君:そうですね。機械的に組み合わせているのではなくて、ハンドジェネラティブみたいな、ハンドメイドと言ったりもするんですが、1個ずつ描いて作っています。

——それが今、200数十体くらいでしたっけ。

君:はい。300弱か、そのぐらいだと思います。

——いきなり200というより、ちょっとずつ描いては出してと、やっていった感じですか?

君:そうですね。最初は100体、その1週間後に追加で50体、あとは少しずつ定期的に出す、という更新の仕方をしています。

他のプロジェクトみたいに一気に1万体や数千体みたいな出し方は時間がかかっちゃうのでできていないんですが、少しずつ出す代わり、一個一個こだわりを持って作れるようにちょこちょこ運営している形です。

——機械的に作ることをしなかったのは、手描きへのこだわりがあったからですか?

君:そもそも、ampontantはフルオンチェーン(※ブロックチェーン上でのみデータの管理がされている状態)で実装しているので、SVG(※Scalable Vector Graphics:ベクター形式の画像ファイルのこと)でブロックチェーンにアップしているんですが、そのやり方だと実は一個一個手描きしたほうがむしろ楽なんです。

あとは単純にパーツの組み合わせって、あんまり趣味と合わないというか。

同じフォーマットで違うバリエーションがあるっていうのも、単純なパーツの組み合わせではなく、もうちょっとハンドメイドで特性があったほうが、自分は欲しいと思えるので。

自分が欲しいものをベースに作っていった感じはありますね。

——簡単に補足すると、普通のNFTの場合は画像データを別のサーバーに置いていて、それを呼び出すような形で表示しているのを、フルオンチェーンは、画像やデータを全部チェーンに載せている、という認識で合っていますか?

君:そうですね。基本的にはフルオンチェーンでないものに関しては、分散型のサーバーにアップしているので、実際そのサーバーから画像が消えてしまったら、今OpenSeaで参照している画像やデータ自体も消えてしまうような形なんです。

フルオンチェーンの場合だと、ブロックチェーン自体に参照できるデータを刻むので、そもそもサーバーにはアップされておらず、フルオンチェーンがある限りは消えないものになります。

売れる売れないより、やりたいことを優先した

——フルオンチェーンにしようと思ったのは、どうしてなんですか?

君:それは相方のNissyのこだわりで、やるんだったらフルオンチェーンがいいとずっと言っていました。

そこは技術好きのこだわりというか、やりたいことに合致していたので、じゃあそうしようという話になったって経緯ですね。

——お二人のこだわりなんですね。

君:そうですね。売れる売れないというよりかは、自分たちでやりたいことをやってみようっていうのがありました。

それに加えて、僕とNissyも一応方針を作ってやっていたから、という理由もあります。それこそ、僕らも最初はNFTのプロジェクトをやる前に、クリエイターのNFT参入をサポートするようなことができないかと思っていたんです。

実際に、何名かのクリエイターのNFT制作をサポートをさせてもらっています。

そのサポートをするのに、自分たちの実績がないと微妙なので、技術的におもしろいことを含めたやり方で、一回プロジェクトをやってみようとなりました。

——開始した段階から、お二人とも本業でやっていくぞって感じだったんですか?

君:開始時は、副業的な感じでした。Nissyは本業もブロックチェーン周りのことをやっているので、今やっているNFTが大きく本業とずれているわけではなく、割と近いことをやっています。

——marimoもslothも君さんやNissyさんにご相談させていただいたことがあったので、 僕らもある種サポートしていただいた側ですね。

君:こういう風に、普段の仕事だけでは関わらない人たちと、関わりを持てることも目的の1つだったので。

それもampontantというプロジェクトで、フルオンチェーンでやっていますという看板があるから、こちらからのお声がけもしやすかったりして。

自分たちがやっていたおかげで、今こうやってお話できているのかなっていうのはあります。

NFTやブロックチェーンの第一印象は「怪しい」

——ampontantを開始した去年の初め頃、NFTやブロックチェーン、仮想通貨への印象はどんな感じでしたか?

君:僕の中で「仮想通貨は怪しい」っていう印象はやっぱりありました。ただNissyがいろいろ話をしてくれたり、この本を読んでおけばいいよとがっつりした技術書を紹介されて、それを読んだりしていたので、技術的なところから理解しました。

怪しいことに使われるっていうのも重々理解はしつつ、分からないことや気になることがあればNissyに聞けばどうにかなるから大丈夫か、と思いながら始めた感じです。

今もそうですが、怪しいのも分かりつつ、ただ技術的なところで興味があったので、おもしろそうだなっていうのと、半々ぐらいの認識です。

——何も分からないときは怪しく見えますけど、ちょっと裏側がわかってくると、怪しいものと、そうでないものの見分け方が少しわかってくるみたいな感じがありますよね。

君:そうですね。Web系あるあるじゃないですが、怪しいとおもしろいが半々のものって、時代によってそれぞれですが、今までもずっとあったなって思います。

——最初は売れるかどうかを考えていなかった、というようなお話があったと思うんですが、実際はどんな感じで進行していたんですか?

君:ampontantを始めたときは、売れなくてもいいかなと思っていました。

こだわっていたのは、技術的にはフルオンチェーンではあるんですが、あまりそれを押さないようにしよう、というところです。

ずっとチェーンに刻まれているという理由で買ってもらうとか、値上がりする可能性があるから買ってもらうのではなく、単純にキャラクターを可愛いと思って買ってもらうことを目標にしていたので。

NFTらしい勝ちパターンみたいなところではなくて、ちゃんとキャラクターとして運営したいなという考えがありました。

Twitterの投稿も、アートワークを投稿していくとか、そもそも自分たちのアカウントとampontantのアカウントを分けて、ampontantというキャラクターが運用しているような形にしています。

NFTらしくないように運営したいっていうのは、最初から思っていたことではありますね。

——NFTらしくないNFTみたいなイメージですかね。

君:そうですね。NFTだから買うってよりも、可愛いから買って、それがNFTだったとか、それが実はフルオンチェーンだった、みたいにできたほうが綺麗だなと思っています。

もともと、ブランディングやデザインという分野はすごく好きだったので、そういう意味で自分が好きなやり方でできるようにしたいなっていうのはありました。

LINE着せかえやスタンプも作成

——ampontant単体を好きになってもらうために、ブランディング的にやったことは何かありますか?

君:キャラクター自体はもともといたんですが、NFTにするに当たって元のデザインから変えたところはあります。「体が水でできている」という設定とか。

——最初にお話しされていた設定ですね。

君:NFTをプロフィール画像にしてもらったとき、キャラクターが発言しているように見えるようなポーズにするとか。

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