「ビビリが起業しても大丈夫ですか?」ABBA Lab・小笠原治×dotstudio・菅原のびすけ起業家対談
この記事は、「若い起業家が先輩起業家に、気になることをざっくばらんに聞ける」対談シリーズ、第二弾です。
今回は数々のハードウェア・スタートアップの立ち上げを支援しているABBA Lab・小笠原治さんと、今年7月にdotstudioを創業したばかりの菅原のびすけさんにご登場いただきました。Webエンジニアから転身し、IoTビジネスをスタートアップした菅原さんが、ベテランである小笠原さんに聞きたいこととは?
(構成:福岡夏樹)
プロフィール
小笠原治さん(写真左)・・・1971年生まれ。さくらインターネット株式会社、フェロー。2013年にはABBALabを設立し、「DMM.make AKIBA」や、ハードウェア・スタートアップを支援する「DMM.make」の総合プロデューサーも務めた。京都造形芸術大学 顧問。
菅原のびすけさん(写真右)・・・1989年生まれ。dotstudio株式会社、代表取締役。同社では創業と当時に、IoTのセレクトショップ「dotstudio(ドットスタジオ)」をリリース。一方では個人活動として、毎回200名以上の参加者が集まるIoT縛りのトークイベント「LoTLT」も主宰する。
「いいもの」の定義とは、何だと思いますか?
菅原のびすけさん(以下、のびすけ):僕はもともとLIGという会社でWebエンジニアとして働きつつ、IoT領域がすごく好きで、個人的に勉強したり、イベントを主催したりしていました。そんな中、LIGの岩上副社長から「事業化しようよ」と声をかけてもらえて、今年7月にdotstudio株式会社を創業しました。
現時点のメインはIoTのセレクトEC「dotstudio」の運営です。「IoTとはこういうものだよ!」という出し方よりも、利用シーンや「どんな生活スタイルにおすすめできるのか」を前面に出したほうが、IoTデバイスやガジェットが、初心者にとってやさしい世界になると思っているんです。
小笠原治さん(以下、小笠原):IoTの製品は、今はまだ体験商材に近いので、使ってみないとわからないんですよね。販売方法をすごく考えないと、売れない商材が出てしまう。
のびすけ:パーツやセンサー類などは、埋もれてしまっている商品が膨大です。僕自身、初めてIoTをやろうとしたとき「まず何を買えばいいのかわからない」となっていました。そういったところを解決したいんです。Webエンジニア時代から「いいものを作れば売れる」は幻想だな…と感じていました。
小笠原:「いいもの」には、andとorがありますね。僕は「いいものを作らなくても売れる」というのは、わりと悪だと思っています。「いいものを作りつつ、それを売る」というandの話にしないと、面白くないですよね。
一方で、orの話です。今は「いいもの」の定義がいろいろありすぎますよね。
例に挙げるなら、「グローバルニッチ」と呼ばれる、ニッチ分野で高いシェアを出す世界です。ここでは、たとえば1つの国にいる特定の興味範囲や必要性が共通する200人にとって「いいもの」を考え抜き、作るやり方が正解です。これが「この200人以外の人たちにも売れそうなもの」を作ってしまうと、特定の人たちにとって過不足が起こります。「いいもの」も見方によってだいぶ変わるんです。
のびすけ:「誰にとっての“いいもの”なのか」も、すごく大事ですよね。
小笠原:ウェアラブルカメラ「GoPro」がいい例ですよね。登場した当時、日本のカメラメーカーの人たちは「液晶のビューも何もついていないようなカメラは、カメラじゃない」と言っていました。
※GoPro・・・スポーツやアクションの撮影に特化したウェアラブルカメラ。機種によって、静止画や動画、タイムプラスなどの撮影が可能。販売者はアメリカのGoPro社。
小笠原:でもあれは、サーフィンなどを楽しみながら目の前の様子を撮影するためのものです。「サーフィンしている間は、どうしたって見られないよね」と割り切った結果、液晶のビューをつけなかったんですよね。なので、「サーフィンしながら動画を撮りたい人」の欲求・要望に対してはピッタリなものなんです。
独占的な「いいもの」を押し付けつつ、スピード感を持って商品を出していくためには、今までのジャパニーズ・クオリティのような過剰品質にならない程度で世の中に投入していくことも大事です。なので、あまり「いいものとは」と考え過ぎないほうがいいかなとも思うんですよね。
のびすけ:なるほど。
小笠原:スタートアップの領域は「急げ急げ」です。超ド短期での急成長を目指す必要がある。でも、現実には「よく考えろ」「それで本当にいいのか」とブレーキとなる人が山盛りです。
実際に、製造工場などでもブレーキだらけだったりするでしょう? 現場が欲しいと思っていても、技術者などから「待った」とブレーキがかかることもよくあります。独善的な「いいもの」を、スタートアップのスピード感でやろうとするとき、そういったブレーキ役にどう打ち勝つかが大事なんですよね。
のびすけ:どう打ち勝つんですか。熱意ですか?
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