学生からの質問に小笠原治さんと答えまくったよ(中編)
2022年8月16日に、学生さん向けに質問会みたいなのをやったのです。
で、僕一人だと心細いので、尊敬する、株式会社ABBALabの小笠原治さんと一緒に答えていきました。
学生の質問も素晴らしくて・・・。がんばって答えたものをまとめたのがこちらの記事になります。
前編はこちらです。では中編いきます。
日本にチップ文化が浸透するには、何が必要だと思いますか?
けんすう:チップ文化がない方がいいと思ってるんですけど、どうなんですかね?
小笠原:チップ文化が浸透するのは、たぶん最低時給撤廃とか、そっち方向なんですよね。
けんすう:そうですね。
小笠原:最低時給を上げながら、チップもらおうっていうのはなかなか難しくて……。
けんすう:たしかに。最低時給を減らして、時給500円でチップをもらえないとやっていけないっていう感じにして、チップを渡さないと、サービスの質をめちゃくちゃ落とすみたいな。
小笠原:例えば、ニューヨークで夢見て頑張ってるアーティストが、時給はほとんどないレストランだけどチップでだいぶ稼いでる、みたいなのが一昔前の文化としてイメージしやすいじゃないですか。
それってやっぱり、時給がある程度保証されてると、なかなかそうはならないという。
けんすう:そうですね。僕は、時給もちゃんと決まっていて、お客さんが払うお金もちゃんと決まっている方が便利なんじゃないかと思いますね。
小笠原:チップっていうよりは、ファン投票みたいな投げ銭的なものならあり得るのかもしれないですね。みんなにじゃなくて、特定の人に投げ銭が集まるならありえるかも。
けんすう:そうですね。
DiscordやSlackなどの雑談チャンネルを使う人が固定され、特定の人たちが形成しているグループ感のような雰囲気をなくして、新しく入った方やROM専の方が喋りやすい空気にするために、重要なことは何ですか?
けんすう:いい質問ですね。僕はコミュニティー運営をやってたんですけど、昔からいる古参の人や、すごいコミュニティーに貢献してる人を、いかに追い出すかがやっぱり重要ですね。
ちゃんと管理してくれてるような人がいたり、主的な雰囲気を作ってくれている人を追い出さないと、やっぱり入りづらい。
なので、強制的に退会する仕組みを作るとか、新しくグループも作っちゃうとかにした方がいいと思ってます。
小笠原:主の人とかって、なんか圧を出しはじめるじゃないですか。その人も無自覚のうちにその人の許容範囲でコミュニティの枠を決めちゃったり、発言に対して変な圧が入ったりするから、やっぱり新陳代謝みたいなことになっちゃいますよね。
けんすう:そうですね。僕は絶対新陳代謝しないと喋りづらくなり続けると思うので、それがいいんじゃないかなと思います。
お金と人脈に頼れないけれどもエンジニアを巻き込みたい、というジレンマを解決する際に、最も重要なポイントは何ですか?
小笠原:お金や人脈はないけど、エンジニアと一緒にやりたい、ってことですかね?
けんすう:いろんな人に聞いた時に、「どういう人とともに働きたいですか」って聞くと、やっぱり「仕事に対して情熱がある」とか「やりたいことに対してすごい一生懸命だ」とか「誠実だ」とかみんな言うんですよ。
でもプロジェクトを始める人って、「お金が重要じゃないか」とか「人脈が重要じゃないか」と、「スキルが重要じゃないか」って別なことが重要だと思ってたりするので……。
それでいうと、やっぱり情熱とか、こういうことをやりたいんだと、どれだけ熱く伝えられるかが重要なんじゃないかなと思いました。
小笠原:僕はそこにプラスして、エンジニアへの敬意かな。エンジニアに対して「こいつすげえ」っていう気持ちを持つこと。
けんすう:持つこと、大事。
あと、エンジニアにやってもらおうと思ってやってると思うんですけど、自分でエンジニアリングを学んで、 1人でもやろうって思ってなんとか実装する人の元には、エンジニアは結構来るんですよ。
小笠原:来ますね。
けんすう:なぜなら、その大変さもわかるし、技術の話もわかるので。
でも、「エンジニアリングを、自分でやる気はないけど、巻き込みたい」と思ってる人って、めちゃくちゃたくさんいるので、競合しちゃうんですよね。
小笠原:ちょっとはコード書いたり、例えば僕だと元々サーバーを自分で組んでたわけで……。まずやってみる、その上で巻き込む、一緒にやってもらうというのは大事かもしれないですね。
けんすう:大事ですね。なので、「自分で全部実装するぞ!」という気合の元で勉強して、実装して、動いて、お客さんがついてる状態になると、エンジニアはすごく見つかりやすいです。
小笠原:うちも学生に一応そのコード書く授業とかもあるんですけど、あれって別にコード書けるようになってほしいわけじゃなくて「コード書くってどういうこと?」とか「大変!」とか「自分には難しい!」とか、そういうのわかってもらうつもりで授業を作ってる感じです。
けんすう:めっちゃ大事ですね。なので、自分で書くというのが答えだと思いました。
ビジネスにおいて優しさが生きる場面を教えていただきたいです!
けんすう:深い質問。いい質問ですね。なにかありますか?
小笠原:高校生の時の話していいですか。
けんすう:もちろんです。
小笠原:さっきいったイベント会社ってやってたんですけど、当時パーティー券という先輩とか怖い人から「イベントのチケットを売れ!」って渡されるものがあったんですよ(笑)。
けんすう:あった(笑)。ありました。
小笠原:パー券っていわれるやつ(笑)。「1万円とかで売ってこい」っていわれて、10枚渡されて「10万円よこせ」っていわれるんですよ。
「売ってきたら、お前もパーティーに入れてやるから」っていうやつ。
けんすう:めちゃくちゃ嫌だった(笑)。
小笠原:「別にパーティー行きたないねん」と思いながら、あまりにムカつきすぎて、「もうええわ、こっちでやるわ」と思って、(自分で)イベントをやって。
ただ、たしかにパーティー券は売らないといけないので、金額を半額にして3割バックにしたんですよ。3500円で売ってもいいわけですよ。
けんすう:はいはい。
小笠原:今まで1万円で「どうしよう…」っていうのが、「まぁ3000円ぐらいだったら、行ってみたい」という人がいるかも。自分の利益をとるなら、5000円で売ってくればいい。
で、イベントの最後に、チケットを売ってくれた人たちを壇上に上げて、「彼らのおかげでイベントが成立してます!」っていうのを毎回やるようになったら、チケット売る人たちはほぼほぼ僕の方に来た。
普通に考えると、別にチケットを売ってくれた人たちを、みんなの前で褒め称える必要ってないんですけど、彼らがいないと成立しないのも確かなんで、彼らを称えたいなと思って……。
僕の中では、優しさとお金がくっついた瞬間でしたね。
けんすう:あぁ、なるほど、おもしろいですね。ちゃんと貢献してくれた人を称えるし、利害関係も一致させる。 これは僕も近いかも。
つながりの中で、すごい強いのは損得感情っていうのがあって……。僕も嬉しいし、相手もすごい得があるみたいな状態をいかに作れるかを考えるっていうのが優しさかなとか思ったり。
自分が犠牲になって、相手のためになんかやるっていうのは続かないので、ビジネスにおいてはあんまり生きないですよね。
小笠原:ほんとに。苦しさとか、我慢の先に成功があるわけじゃないし。
けんすう:そうですね。うちの会社、キングコングの西野さんという方に投資してもらっているんですけど、 彼が使ってるオンラインサロンのシステム(salon.jp)を僕らも使っていて、僕らが売上げると何%か入るんですね。
なので、西野さんはめちゃくちゃ宣伝してくれるし、僕らもめちゃくちゃ助かる。お互いめっちゃ儲かる。
小笠原:で、そこでまた仲良くもなるし。
けんすう:そうですね。損得勘定があると仲良くなるんですよね。
西野さんは投資した額よりも、全然多い額が、1か月に何百万単位でうちの会社から入ってるし、うちは西野さんのおかげで何百万も入ってるので、みんな超ご機嫌になる。
小笠原:そこ、シンプルな優しさだよなー。
けんすう:優しさですよね。得を作ってあげる設計を作るって感じですね。
最近は生き方が多様で自分で何でも選択できるため、迷ってしまうことも多いです。選択に迷った時に使う軸はありますか?
けんすう:これ多分かなり多い質問で、 僕らも迷ってるぐらいですよね(笑)。
小笠原:はい、迷ってます。毎回同じ軸で選べるほど、出来上がっておりません(笑)。毎回考える。
けんすう:なんとなくみんな、「自分のやりたいこととかが見つかったり、自分の軸があると、迷わずに100%の力とか情熱を注げそう」みたいな幻想があって、なので、「やりたいことが見つかりません」とか、「自分の軸が欲しいです」ってなるんですけど、軸持ってる人あんまり見たことないですね。
小笠原:ないですね。
けんすう:ただ、軸を持ってるように見せちゃうことはありますよね。
小笠原:そう!しかもね、大体後から振り返ってなんですよね。
けんすう:そうですね、後付けですね。
小笠原:後から振り返ったのをマンガにしたみたいな状態。迷わなくなった時って、すごいかっこよく描かれるじゃないですか。
けんすう:はいはい。
小笠原:少なくとも迷わないかもしれないけど、めっちゃ考えるっていうのはあります。
けんすう:そうですね。
小笠原:どっちにしようかなっていうよりは、何手先まで考えるかなみたいな……。考えると判断するための材料が増えるので、考えます。
けんすう:僕、「諦めるものを先に決める」はありますね。やらないことを決める。
例えば、「飲み会に行きまくって人脈を増やすのは、できなさそうだからやらない」って決めちゃうとそこは迷わない。
嫌なものを決めるのは人間結構楽っていうのがありますね。
小笠原:うん、分かります。
投資ファンドを作るときに、当時大きいファンドを作るかどうかとか、 IVSとかB-Dashみたいにスタートアップ向けの大規模イベントをやるのは無理だなと悩んだので、「自分は小さいファンドと小さいお店でやる」みたいな……。
けんすう:あ〜、いいですね。
小笠原:イベントじゃなくて、お店でやったら、トータル年間でみるとあんまり変わんないかなとか、違う選択肢を色々考えてみるってのはやります。
けんすう:いいですね。この辺りは答えに近そう。
芸大っていく必要ありますか?
けんすう:ありますか?
小笠原:ありますよ。
けんすう:あります。
小笠原:あります。以上(笑)。
けんすう:補足すると・・・、これ、言葉で説明するのが大変だと思うんです。
なので、芸大の近くにいる人が「あります!」て言ってるってことは、なんかあるかも、という前提を手に入れた、ということで考えてみるとよさそうです。
起業している大学生で、今は受託をしながら事業アイデアを模索していますが、なかなか人生通してやりたいと思えることが見つからず、1度就活しようか悩んでます。
けんすう:これも「人生通してやりたいこと」を探そうとしてるから、難易度高いことをして失敗しているというか・・・。いわゆるアンチパターンに陥ってる説はあるかなと思います。
小笠原:(笑)。人間、5年も1つのことに集中したら、燃え尽きますよ。
けんすう:そうですね。スタートアップ経営者でも、「別にこの分野とか好きじゃなかったけど、これ来そう」っていうので、やり始めて、やってるうちに、「これすごい素敵な仕事だな」とか思ってきた、とかよくあります。
やってるうちに情熱が増えたりするのもあるので、個人的には今来てる市場とか、マーケットを狙う方がいいんじゃないかなと思ってます。
小笠原:今、学生の人たちによくいうのが、残念なお知らせとして「皆さんはあと100年ぐらい生きます」。
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