見出し画像

僕が「コテンラジオ」のCOTEN社に出資した理由

今日発表がありましたが、コテンラジオという人気のPodcastをやっていらっしゃる株式会社COTENに出資をさせていただきました。

こういったエンジェル投資はよくしている僕なんですが、、COTENへの出資は、今までとはちょっと違った気持ちで投資をしているので、記事として残しておくと面白いかなぁと思ったので、書いてみたいと思いました。

出資した理由

まず株式会社COTENへの出資が少し変わっていると言うのは、ご本人たちの以下のpodcastを聴いてみるとわかると思います。1時間半説明しているので、ちょっと大変かもしれませんが、 僕が適当な解説をしてしまうとミスリーディングしてしまう可能性があるので、ぜひとも本編を聞いていただけるといいかな。

ここでCOTEN代表の深井さんの言っている事と被る部分もあれば、ちょっと違うところもあるかもしれませんが、、まず、株式市場において、どういう会社が投資を受けやすいかを単純化するために、以下みたいな図が僕の頭の中であります。

右上の「課題を感じやすい」かつ、「利益が期待できる」に関しては、これはめちゃくちゃ投資が集まるんです。

よく、投資で「社長が優秀だから」とか「技術力が高いから」みたいな話があるんですが、これはこの右上のゾーンの中での話だったりします。たとえば「東京からニューヨークまで1時間で1万円で移動できます。しかも移動にかかる会社の費用は100円です」だったら、めちゃくちゃ課題感あるし、利益もでそうですよね。なので、それだったら「それを実現できる技術があり、実行できるチームかどうか」みたいなのが判断されるというイメージです。

なので、右上は基本的には、投資対象としては魅力的です。ベンチャーキャピタルとかからも集めやすい。

そして、「利益が期待できるけど、課題を感じづらい」とかも、投資家としては投資しやすい分野です。

たとえば、利益が期待できるけど、課題を感じづらい代表例は、ソーシャルゲームとかです。僕もブロックチェーンゲームなどに投資をしていますが、これは「利益がめっちゃ出る可能性がある」けど、社会的な課題はあまりありません。

ここも、資本主義下における投資家の動きとしては、魅力的とまではいかないけど、投資したい対象になります。

もちろん、ここも「依存症などに導いてしまうようなSNS、ゲーム、ギャンブル系はどうなのよ」と言われたりすることもあるので、儲かるから投資します!みたいな簡単な話ではないんですが・・・。

ベンチャーキャピタルの原資って、たとえば年金のお金が入ってたりするので「いい会社にしか投資をしません。でも、年金のお金は減っちゃうかもです」とかは許されないわけです。なので、仕事として、利益が出るなら投資しよう、となるのは普通です。

んで、左上です。ここは「利益は期待できないけど、社会の課題が多い」系です。

ここは、最近インパクト投資とか、ESG投資といわれたりしますが、「利益がでなくてもいいけど、社会的に正しいことをやっているところに投資しよう」は、意外と投資しやすいんです。

ここは「個人とかでは投資しやすいけど、組織だと難しいよねー」というゾーンです。

たとえば、僕の場合「Branch」という発達障がい児の人や、不登校の方の可能性を高めるようなサービスをやっているところに投資しているんですが、ここは課題は大きいものの、一人ひとりに向き合うと利益が出づらい分野です。利益を大きく出そうとすると、ご両親に負担がかかるからです。

でも、社会的には必要だと思うし、課題感が高いので投資ができるわけですね。

しかし、他人様のお金を預かって運用している、という仕事でやっているVCさんとかは、ここに投資しづらいんです。ESG投資です、とかの理由が必要になってきます。そして、右上の「課題を感じやすいけど、利益がでる」ゾーンの会社もたくさんあるんで「課題解決でいうと、右上への投資を優先すべきだよね」というふうになるのも自然です。

今回、COTENにドーガンさんとかのVCが投資をしているのは「あえてここに投資をするんだぞ」という表れじゃないかなーと思っています。

んで、、、

正直、僕の今回のCOTENへの投資って、実は「左上ですらない」という感じなんです。

 真に投資すべき対象

今回の投資は、僕は「利益が期待できない」けど「課題も感じづらい」部分だと思っています。

ここでいう、利益の期待づらさとか、課題の感じづらさとかは、どちらかというと「一般的に」くらいの感じで捉えてもらえるといいんですが、COTENがやろうとしている「世界史のデータベースを作る」って、課題は感じづらいと思うんですね。

気候変動とか、格差の問題など、「課題を感じやすい」ところはたくさんあっても、「世界史のデータベースがない」を課題に感じた人ってほとんどいないはずなんです。

いや、もちろん、COTENのみなさんは「これは絶対にあったほうがいい」というのがあってやっていると思うんですが、VCやLPからしてみたら「ESG投資にするとしても、左下だと説明しづらい」みたいになってしまう分野なんです。そして、寄付とかでもまかないづらい。寄付をするなら、今日ごはんを食べられていない子供とかに寄付をしたほうがいいんじゃないか、という気持ちになったりするからです。

これがすごいポイントじゃないかなあ、と。

左下への投資はもっと増えたほうがいいのでは

というのも、これって「現時点では」、課題を感じないし、利益が期待できない、というものだと思うんですね。

近い将来に「これめっちゃ利益でるよね」とか「課題があったね」となる可能性があるものがたくさんある領域なのではないかと思っています。

たとえば、僕がエンジェル投資をした中で一番リターンがあったのが、ホロライブを運営する「カバー」だったんですが、これって、左下だったんです。売上、利益が上がってきても、VCとかから投資があまり集まらなかったくらいなのです。

で、、多くのスタートアップが投資を集める時って、左下だと当然駄目なので、なるべく「課題もあるし、利益もあがるんです」という事業プランを作るんですね。

これはこれで正しい動きだと思うんですが、それをやると「プロダクトやサービス設計が歪む」というのがあります。近いうちに利益を出さないといけなかったり、ユーザーの課題に早くささないといけない、となります。

今回のCOTENがおもしろかったのは、事業をその方向にドライブするみたいなことをしたくないから、「考えるという行為自体を、積極的に止める」、というのをやっている感じを受けたからです。

もちろん「自分たちの考える、課題に対しての解決法を作る」というところをやっているんですが、、

「投資家の人たちが、理解しやすいように捻じ曲げない」

というのを徹底している感じです。

勘違いしないほうがいいポイント

で、このような投資をすると、「うちのサイトもビジネスモデルわからないんですけれども、人類のためにいいと思うので、こういったサービスをつくりました。投資してください!」みたいなスタートアップが結構出てくるんですけれども、これともまたちょっと違うんです。

それは単に考えられていなかったり、ビジネスができないからやっているみたいな感じのものが多いんですね。基本的には「この株式会社の仕組みを使って、資金調達するなら、全力でそこに取り組む」が真っ当だと思っています。

じゃあそういう会社とCOTENの違いは何かというと・・・、ビジネスモデルを考えたり、事業計画を作ったりできるけれども、優秀な人たちがあえてそれに取り組まない、というのがおもしろいと思ったんです。

代表の深井さんと話してる時に思ったんですが、「これって普通に事業計画を作って投資家にアプローチして4億とか5億とか集めたほうが楽じゃないですか」というのがありました。

こういってはなんですが、たぶん余裕でできちゃうんです。その上で、「まあ、資金調達のときはこういったけど、実際は全然やらない」みたいなこともできたと思います。これも、「騙す」みたいな話ではなくて、投資家の人も「いろいろわかっているけど、他の投資委員会の人や、LPに向けて、わかりやすいように、まあいい感じにプランを作ってください」みたいな感じだったりするんですね。

僕も、そのあたりの作法がわからず、ずっと「自分たち的にはこういう事業プランになるんすわ」とやってたら、相手から「頼むから嘘をついてくれ」と言われたことがあります。

これ、「意思決定者を騙すため」とかじゃないんです。全員わかっているけど、コンセンサスをとるために、その数字とプランが必要、という感じだったんです。

わけわからないな、と思ってたんですが、これを深井さんは「コンセンサスのための予測と定量化は呪術」といってたんです。要は「全員が理性ではわかってても、コンセンサスをとるための予測と定量化が必要な状況になったりすることが多い。これはもう儀式や呪術みたいなものに近い」ということですね。

で、今回のCOTENの資金調達は「そこで呪術を使うほうが楽だけど、それによってプロダクトが歪む可能性があるということを排除する。そして、呪術をスルーした資金調達をした成功例がいくつか出てくると、課題感を感じづらく、利益がでなそうに見えるところにももっと投資が集まる」というのをやっているのではないか、というので、僕は投資を決めました。

(これはCOTENがいっているわけじゃなくて、僕の感じたものです)

その上で投資した理由3つ

こうかいていくと、なんとなく「資本主義から離れた感じでやっているんかな」と思われるかもしれないですが、僕の中では、勝算がバリバリにあるという感じなんですね。

3つほど理由を説明します。

世界史のデータベースは世に必要

まず、1つは世界史のデータベースってほんとに必要だよねと思っているからです。

僕も世界史を勉強するようになって、いろいろな本を読んだりとかネットで検索をしているんですけれども、これを一気痛感で、見たりとか横で並べてみたりみたいなことが 意外なほど困難なんです。

例えば、イギリスの第二次世界大戦の戦とドイツの世界大戦の戦を比較して、その後の財政状況を調べようみたいになったときに、多分データはあるんでしょうけど、めちゃくちゃ調べるのがめんどくさい。

あと、例えばイギリスのエリザベス一世について興味を持って、エリザベス救貧法について調べているときに、「なんでこれがこの時代に出てきたんだろう」と不思議だったんですが、

当時のイギリスだと核家族化が進んでいて、若いうちから都市部に出て、職人の弟子になって、そこで働き口を見つけて、そのまま実家に帰らずに暮らしていく、みたいなのが多かったから老人が独居老人になったり、老人だけで暮らしたりするようになりがちで、地方の老人の貧困化が問題になるみたいな背景があった、

みたいなことがわかったんですけど、これ、たまたまたどり着いたにすぎないんです。本をたくさん読むしかない、という極めて大変な作業を強いられてしまうというのがありました。

Podcastの強みは今後すごいことになる

あとは、単純に「Podcastが人気なことがめちゃくちゃ強みになる」と思っているからです。たぶん、Podcastがこれから2030年くらいまで急激にビジネスが拡大する分野です。しかも、数年後には「あらゆる言語で聞けるようになる」が実現します。

となると、世界史のデータベースが2030年まで利益が0だったとしても、実は十分に利益がでるとすら思っています。

コテンラジオに人生変えられたから

最後の理由としては、これも完全なエモーショナルの部分なんですけれども、コテンラジオによって、かなり私の中のメタ認知力や知識が広がって事業にとても役に立ってると言うのがあるから、といういうのもあります。

今まで正直、歴史とかリベラルアーツ系のものは、実践的でないと思っていました。それよりも、実務的なビジネス書とか、企画書の作り方とか、営業の仕方などのハウツーを覚えたほうが全然仕事に使えるよね、、と思っていたんです。

でも、コテンラジオを通じて、いろいろな知識を吸収して自分の中にインストールして、認知や意思決定のときの参考にするというのが、いかに重要かを知ってしまったんです。

そういう、リベラルアーツ的な知識って、勉強が大変なのが難点なんですが、、COTENさんは、その入り口としての、素晴らしいコンテンツを作っているなぁと思っています。

なので、究極、投資した額が全部損したとしても全く問題がない、くらいの気持ちで投資しています。

というわけで

COTENさんに出資した理由みたいなのを書いてみました!

これはおそらく数年後に答え合わせができると思うので、楽しみだなぁと思っています。

コテンラジオ、めちゃおもしろいので、おすすめです。

では!

ここから先は

0字
けんすうの視点でわかりやすくまとめた記事が毎月20本ぐらい読めます。ビジネス書1冊ぐらいの金額で様々な話題をキャッチアップできて便利です!

アル開発室

¥980 / 月

【全記事読み放題】クリエイターエコノミーの事業に挑戦しているアル社の裏側を知れるマガジンです。代表けんすうが、やっている事業の裏側やリリー…

サポートされたお金はすべて、クリエイター支援のための会社運営に使われます!