未来予想図超会議 (尾原和啓さん×けんすう) NFTからお絵かきAIまで(中編)

こんにちは!

今日も「未来予想超会議」という大げさなタイトルの割に、評論家の尾原和啓さんとZoomでダラダラ話しただけの会の書きおこしを掲載します。

今日は中編です。前編はこちらです。


NFTコミュニティの重力と価値のつくり方

けんすう:一方で、NFTの話とかもしてみますか?

尾原:そうですよ。「marimo」で、1時間で2,000万円を売った男でしょ?ってことは、1日24時間で2.4億円売れちゃって、365日で700億円くらいの売上が出ちゃうということですよね。

けんすう:めちゃくちゃ適当な計算をしないでください!

知らない人のために言っておくと、「marimo」というNFTをやっておりまして。NFTって、画像が売れるとか、所有権があるといった間違ったイメージで捉えられがちじゃないですか。

尾原:はい、そうですね。

けんすう:『これからのNFT』という本によると、NFTは構造的には3レイヤーくらいあるらしいです。

その3つとは、インデックスデータとメタデータとコンテンツデータ。

インデックスデータは、要は「このデータをこの人が持っている」みたいなものですね。

尾原:唯一性を証明するものですね。

けんすう:そうです。で、メタデータは「marimo」でいうと、パワーとかスピードみたいなデータを持っているんです。

尾原:さっきのお絵かきAIでいう「プロンプト」みたいなものですね。

けんすう:そうですね。そういったものを持つこともできると。そして、marimoの画像はコンテンツデータというところに格納されている感じなんですが。

ただ、NFTのそんな仕組みの話は実はどうでもよくて、「人間が虚構をどれだけ信じられるか」がポイントかなと思ったんですよ。

画像データって、コピーが簡単なので今まで「所有する」「育てる」ものとして、みんな認識しづらかったのです。もちろん、ゲームとかで成長ゲームとかがあって所有感を持てたりはするんですが、それは「スマートフォンと、そのアプリで没入させる」という環境が必要だったかなと。

それが「NFTというなんかすごい仕組みがあって、ブロックチェーンというものに保存されるらしい」という、その情報だけで虚構を信じられるようになったらおもしろいなと思って作ったのが、これですね。

尾原:さすがです。実際これ、販売してそろそろ1ヶ月くらい(経つの)でしたっけ?

けんすう:そうですね。

尾原:どうですか?みなさんの水の替え方とか、一緒に育てている感じとか。

けんすう:Twitterコミュニティがあって、すごく盛り上がっています。

尾原:Twitterコミュニティにしてるの?なるほどなあ。

けんすう:投稿も1日でこれだけあるし、緩やかに話されている。

他のNFTってコミュニティはあるんですけど、コミュニティって重力があるじゃないですか。

尾原:そうですね。どうしても。

けんすう:その重力が、安く売って高く売る、というのが目的のNFTになると、「どう値上げようか?」という話になりがちだと思うんですね。それはそれでいいんですけど、そうなると最適解って、派手な企画をぶち上げて、真面目にやらなくても成り立っちゃうわけですよ。

尾原:要は、希少性の幻想を作り出すことにみんな熱心になるから(ですね)。前にも言ったように、希少性の重力って結婚詐欺師だからね。

けんすう:そうですね。まさに。

尾原:「お前と俺とは偶然の中で、お前にとってはこれは得難いものなんだ」という幻想を(抱かせて)、そしてそれはものすごくレアなものの掛け算の中で、運命としか思えないものなんだよと、どれだけ錯覚させるかという技術だからね。

けんすう:おっしゃるとおりです。それを「値段が上がりますよ」「これは希少なんですよ」と言い続けるのとは、別の盛り上げ方ができないかと思っていて。

けんすう:(画面を指して)例えば、昨日投稿したのはコレなんですね。

尾原:また、ジャーゴンを本当によくわかっているね。

ジャーゴン・・・部外者には理解できない専門用語 · 隠語・俗語のこと。

けんすう:これを投稿することによってどうなるかを見ると、みんなが真似して「マリモーニング」とかを書くみたいな。

尾原:「まどマギ」文字が生まれた瞬間みたいなものですね。

けんすう:(画面を指して)最初はみんな「おはよう」とか言っていたのを、だれかが「マリモーニング」と言い出して盛り上がる。次はおしゃれな言い方とか、歌を作るとか。こういう方向だけでいけないかを試している感じですね。

尾原:メタバースにしてもNFTにしても、真実は一つです。結局、「機能性は共有に向かい、意味性は所有に向かう」という話なんですよね。

車って一番の典型例で、単に「移動する」という機能性だけを追及するのであれば、自分で持つと降りた場所で乗らなきゃいけないから不便じゃないですか。そうすると、Uberみたいに「他の人の車に一緒に乗っていきましょう」みたいなかたちで、共有性に向かうわけです。

共有性に向かうと、共有性を追及するためにはオープンであったほうが、だれかとだれかの交換がされやすいから利便性が上がるんですよね。

なんだけど、意味性って何かというと、価値は「違い×理解」だから、「この人にしか理解できないギリギリの違い」が最大の違いなわけですよ。

そうすると、むしろお互いだけが理解できる秘密をどうクローズの中にため込んでいくかのほうが、価値性を増すんですよね。

けんすう:若者言葉とかも近いんですかね。

尾原:そうですね。若者言葉の場合は、自分たちが消費される立場だから、外から蛮族化することによって理解されなくするという、別の話もあるんですけど。要は、「理解されると搾取される」からです。

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