エウレカ・赤坂優×ラブグラフ・駒下純兵「創業者と社長の違いは何ですか?」
起業家の悩みは尽きないものです。
特に初期フェーズで戦う起業家は「相談できる相手がいない」と悩んでいたりしますよね。相談相手がいたとしても「これ、聞いていいのかな…?」となって、結局聞きたいことを聞けないまま終わることもよくあります。
そこで今回は「若い起業家が先輩起業家に、気になることをざっくばらんに聞ける場」を作ってみました。第一回目は、エウレカ・赤坂優さんとラブグラフ・駒下純兵さんにご登場いただきました。駒下さんが赤坂さんに聞きたいこととは?
(聞き手:古川健介)
プロフィール
赤坂優さん(写真左)・・・1983年生まれ。株式会社エウレカ、代表取締役CEO。2015年5月には、M&Aによって米IAC入りを果たす。恋愛・婚活マッチングサービス「pairs」は今年5月、日本及び台湾の会員数が400万人、マッチング数が2,230万組を突破。カップルのためのコミュニケーションアプリ「Couples」はリリースから2年で350万ダウンロードに到達している。
駒下純兵さん(写真右)・・・1993年生まれ。株式会社ラブグラフ、代表取締役。同社では2015年、カップルや家族のデートにプロカメラマンが同行し、写真や動画を撮影するサービス「Lovegraph」をリリース。月間撮影件数は100組以上、カップル写真を掲載するサイトは月間30万PVに上り、10〜20代を中心に支持を集めている。
創業者と社長、それぞれの仕事の違いは何だと思いますか?
駒下純兵さん(以下、駒下):最近、弊社サービスの「Lovegraph」は、テレビなどでも取り上げていただいたり、事業も順調に伸びてきています。
おかげ様でメンバーも増え、今では10人くらいになりました。優秀な人がどんどんジョインしてくれる状況で、会社としてはとてもありがたいです。
一方で「創業者としての仕事、社長としての仕事ってなんだろう」と考えるようになりました。赤坂さんは、その違いをどう考えていますか?
赤坂優さん(以下、赤坂):その人の「何が優秀なのか」という定義によりますよね。ひと口に「優秀」と言えど、エンジニアリングやデザインが優れているとか、自分よりファイナンスの知識を持っているなどがあると思うんですが。
これは前提にあるとしても、まず自分より「社長として優秀な人」は、自分の会社には入社していないはずだと思うんですよ。というのも、会社に入る=創業者が作った「ユニバース」の中に入ってきてもらうということなので。その時点で、どっちの方がビジョンが大きいのかというと、創業者の方だと僕は思うんです。だから、優秀な人が入ってきた、という時に、自分の仕事に引け目を感じる必要はまったくないと思っています。
駒下:はい。
赤坂:そして、この話の流れから言うと、創業者はずっと「創業者」でいい気がしています。社長は、交代することもあるし、1人とも限らない。でも、創業者は本当に1人しかいないんですよ。
―創業者の仕事って、どの範囲ですか?
赤坂:偏った表現になりますけど、僕は「想い」だと思っています。「このサービスを作って、こういう世界にしたい」とかって、プロ社長には言えない。業績を上げる、利益を出す、資金調達をする、といったものはプロ社長、プロ経営者ならできることです。
でも「俺がこうしたいから、こういう会社にするんだ!」なんてワガママは、創業者にしか言えない気がしています。創業者が「やりたい!」と言ったら、それが会社のカラーになり、カルチャーになる。「想い」さえあれば、別に何の仕事でもいいというのが僕の持論です。
社員が増えてきて、社長っぽい仕事を求められる。ファイナンスをする、マネジメントのルールを作る…というのは、社長だけでなく創業者もやらなくちゃいけないことです。だけど、得意不得意は絶対にある。得意なことがあれば、不得意でできないこともいっぱいある。
僕、できないことが99/100くらいあるんですよ。だから、それはそれで肯定しようと思っているんです。できないことはできない、しょうがないと思えるのが一番いい気がしています。とはいえ、初期フェーズは特に自信がないじゃないですか。
―今、駒下さんはおいくつでしたっけ?
駒下:23歳です。会社を始めて、ちょうど1年が経ちました。
赤坂:1年前まで普通の青年だった人が、突如「社長」と呼ばれることがあったり、よくわからない人材紹介系会社とかに「社長のご意思は?」といわれたりするわけですよ(笑)。そんなこと言われても、「社長である以前に、俺は人だし!」みたいなところもあるわけで。
まずは自分の意思に自信を持つとか、「俺はこれがやりたいんだ!」というような一番プライオリティが高くて強みになるものを常に持つべきじゃないかな。
駒下:赤坂さんは、自分より優秀な人やスキルを持った人がジョインしたとき、プレッシャーを感じたりしましたか?
赤坂:うーん…。
―駒下さんは今、それを感じているんですか?
駒下:プレッシャーというより、今後、それを感じる場面が出てくるのかなと思っています。
ラブグラフは僕ともう一人創業者がいるんですけど、どちらかがそういう気持ちになったりするんじゃないかと思っているんです。
赤坂:逆に今、「自分のほうが強い」と思えるところはどこなの?
駒下:僕の場合、やっぱり「事業への想い」「人を巻き込む」かなと思っています。
赤坂:それを、ほかの人たちは理解している?
駒下:そうですね。
赤坂:だったら大丈夫(笑)。仮に「駒下さんがいなくても大丈夫」となったら、たぶん、組織は崩壊すると思いますよ。「別にあの人がやっていることって必要なくない?」みたいな。
先ほど「できないことが99/100くらいある」と話しましたが、その1/100がすごく重要なことだったらいい気がしています。創業者の1/100が、組織の成長における重要なドライバーになったりするじゃないですか。たとえば「海外展開するぞ!」とかね。ほかの業務でパフォーマンスを出していなくても、ほかの人が収集していない情報を手に入れて「なるほど、ここはこういう世界なのか」と知ることのほうが仕事として大事だったりすると思うんですよ。
最初こそ完璧を求められるし、完璧でありたいと思うし。でも、苦手なことをやってもしょうがない。
駒下:創業者の仕事として、具体的にどういったものが挙げられるんでしょうか。
赤坂:熱をかけるべきなのは「ワクワクするようなビジョンを描き、さも実現できるように語れること」と「その仲間を集めるためのリクルーティング」。特に前者が最重要です。あとは、たとえばラブグラフの事業をピボットしなきゃいけないような重要な状況での決断力。社員の中には、その事業がやりたくて集まった仲間もいれば、チームに惹かれて集まった仲間もいる。そうなったとき、決断するのは創業者しかいないから。
―判断は誰でもできるけど、決断は創業者にしかできない。
赤坂:それも「自分がやりたいほうを選ぶ」という(笑)。
駒下:そうですね(笑)。
赤坂:もちろん、好き嫌いで決断しないことも重要なんでしょうけど、僕は、好き嫌いが一番重要だと思っているんですよね。
なんかね、「嫌いでもいいから…」と選んだことは、いつかまた「嫌いだから」と手放したくなる気がするんです。僕自身、そういった経験があって(笑)。
例えば「相性良くないけど、優秀だから採ろう!」と採用した人って、結局、相手も僕や会社のことをそれほど好きじゃないパターンもあるので。好き嫌いは、わりと重要です。
「この人好きだ!」で採用した人は、チームや事業がダメになって「次のことをやろう」というときも、「駒下さんが言うんだったらやりましょう!」となると思う。スキルだけで採用した人の中には「この事業に可能性をかけてきたんだから、もう転職します」という人もいますしね。
売上1兆円と3,000億円のイメージがつきません
駒下:この前、会社のメンバーで経営合宿をしたんです。そのとき、最近COOとして入ってきてくれたメンバーから「1兆円の会社を作りたいのか、それとも3,000億円の会社を作りたいのか?」と聞かれて。
この質問をしてくれた彼は、事業ドメインの話をしていたんですよね。たとえば「Lovegraph」が写真しかやらないサービスだったら、事業的にも頭打ちすることは目に見えている。もし「写真」以外の範囲でもっと広くとるのであれば、いろんなことができます。彼が言いたかったのは「1兆円であれば、そのための戦略を組む。3,000億円であれば、そのための戦略を組む」なんです。
―1兆円も3,000億円も、イメージがつかないということですか?
駒下:そうですね。僕には「大きなお金」くらいの感覚でしかない、みたいな。
―エウレカは決めてました?
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