議論のときに比較対象を間違えると変な方向にいっちゃう気がするですよ、の巻

最近、こういう投稿を見ました。結構バズっていました。

Google Mapがゼンリンの地図データを使うのをやめたのではないか?という噂についてのツイートですね。

で、これはみんな結構賛同していたりしていました。以下のTogetterにまとまっています。

しかし、このあたりの議論、解像度が低すぎて「あー、やっぱり日本はダメだよね」みたいな適当な結論に達しちゃていて、なんかよくないんじゃないかなーと思っています。

他にもよくあるのが「日本からなぜスティーブ・ジョブズが生まれないのか?」とかです。

このあたりについて考えてみたいと思います!

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まず、「日本がダメ」「アメリカがすごい」は全く別のものとして区別したほうがいいんじゃないかなーと思いました。

たとえば、GoogleもAppleもMicrosoftもFacebookもAmazonもアメリカなわけです。

Googleみたいなのが、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・中国・韓国・ロシア・ブラジルで生まれているけど、なぜ日本は・・・だったらわかるのですが、「というかアメリカ以外ではほとんど生まれていないのでは?」と思っちゃうのですね。最近だと中国すごいですが。

2019年2月時点での時価総額ランキングは以下みたいな感じらしいです。10社中8社がアメリカ、2社が中国ですね。そして実に7社がテクノロジー企業です。

1位 マイクロソフト(アメリカ)
2位 アップル(アメリカ)
3位 アマゾン・ドット・コム(アメリカ)
4位 アルファベット(アメリカ)
5位 バークシャー・ハサウェイ(アメリカ)
6位 アリババ・グループ・ホールディング(中国)
7位 フェイスブック(アメリカ)
8位 テンセント・ホールディングス(中国)
9位 ジョンソン&ジョンソン(アメリカ)
10位 JPモルガン・チェース(アメリカ)

参考:世界時価総額ランキング2019 ― World Stock Market Capitalization Ranking 2019

50位まで見てもらってもわかるように、アメリカが圧倒的、次点が中国で、あとのイギリス、フランス、台湾、韓国、日本、スイスあたりはちらほら入っているだけです(スイス3社も入っててすげえと思いました)。

アメリカすごい!と思うのですが、圧倒的勝者であるアメリカがすごいのと、日本がダメだ、というのはちょっと違うと思うので、ここの議論は分けたほうがいいかなーと思いました。

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さらに、テクノロジー企業にしぼっていうと、「アメリカがすごい」のか「シリコンバレーがすごいのか」もちょっと別かなと。AppleもGoogleもNetflixもFacebookもTwitterもシリコンバレーなんですが、アメリカの中でも特異な地域なんじゃないかなと。

これが各州でガンガン生まれてたら、アメリカってマジすげえなって思うんですけど、シリコンバレー、シアトル、ニューヨークあたりに集中しているので、ここも、一緒くたに「アメリカ」ってすると、解像度が低い議論になっちゃうんじゃないかと思っています。

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さらにさらに、「アメリカすごい」と「シリコンバレーすごい」と「Googleすごい」というのも分けたほうがよさそうです。

そもそもGoogleはアメリカ企業の中でもダントツの存在なので、そんなにガンガン生まれるものでもないのですね。5年に一度、Google並の会社が出てたらすごいなって思うんですが、やっぱり歴史的にみても相当な会社です。

検索で圧倒的なシェアを持ちつつ、AndroidみたいなモバイルOSのシェア70%持ってる、みたいな支配的な独占状態な会社はやはりGoogleくらいなので、そこは区別しておいてもいいかなと。

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というので、今回のケースを考えてみると、そもそも、ゼンリンさんって比較対象になるんだっけ?というところが気になりました。

「地図のデータベース事業を主にやっていて時価総額1500億円くらいの日本企業」と「インターネットの総合サービスをやっている時価総額90兆円くらいのアメリカ企業」を比べて、

「結局日本は優れた要素技術を持ってるけど、それらをまとめて大きなサービスを実現して世界にビジネス展開するのが苦手」

という議論にしちゃうのは、間違いとまでは言わなくても、まとまりのない話になっちゃう気はしたのです。

GoogleさんはスマホのOSのシェアがめっちゃあって、そこにGoogle Mapをデフォルトの地図として入れられるというかなり有利な状態にある会社です。さらに検索技術もあり、世界最大クラスの広告技術を持っている上にキャッシュリッチなので、地図でのマネタイズを急がなくてもいいという立場。ちなみにグーグルは。1年に214億ドルくらい研究開発費使っているとか。

一方で、ゼンリンさんは、やっぱり地図の会社です。会社HPには以下のようにあります。

『知・時空間情報』の基盤となる各種情報を収集、管理し、住宅地図帳などの各種地図、地図データベース、コンテンツとして提供。また、『知・時空間情報』に付帯、関連するソフトウェアの開発・サービスの提供。

地図表現とか整備技術に研究開発費使っていますが、8億くらいのようです(2018年3月期)。

というので、OSまで握っていて何十億人のユーザーを抱えていて、世界でトップクラスの技術者を大量に集めていて、研究開発に毎年2兆円以上使うキャッシュリッチな巨大グローバルインターネット総合企業と、ビジネスの基盤が日本のローカルで、ドメインが地図を中心としたデータベース企業を比べて「日本は優れた要素技術を持ってるけど、それらをまとめて大きなサービスを実現して世界にビジネス展開するのが苦手」としちゃうのは、議論を歪める可能性があるかしら・・・と思いました。

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もちろん、ゼンリンもスマホ向けに「ゼンリン住宅地図スマートフォン」とかを提供しているので、競合の部分も大きく、「Google Map」と「ゼンリン住宅地図スマートフォン」、なぜGoogle Mapが勝ったのか、、、みたいな議論だったらわかりやすいかもしれません。

でもゼンリンさんってそもそも日本の地図をビジネスの主軸にしているので「まとめて大きなサービスを実現して世界に展開しよう」としていないと思うのですよね。インドの地図はやっているみたいですが・・・。

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あ、最初に貼ったスティーブ・ジョブズは「なぜ日本から生まれないのか?」、についてですが、彼はアメリカでも特異な存在じゃないかなと。

あれほどのイノベーターで世界一の企業を作っちゃったり、スマートフォン普及の起爆剤になるような人間ってほとんどいないんですよね。

アメリカ人がどっかで「あんなやつ、アメリカでもやつ以外生まれてねーよ!」といってたんですが、そうだと思います。

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というので、「日本はダメだ!」とか「日本はすごい!」みたいな議論って、だいたいにおいて粗いことになりやすいので、きちんと分けて考えたほうがいいかなーと思いました。

僕は今回のケースは「Googleってすごいなあ」だと思っています。



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