【けんすうの座右の本】インターネット黎明期に予言していた、今では当たり前の概念。(前編)

こんにちは!今日は、2022/12/13に公開された、箕輪厚介さんのYouTubeの「座右の本」の書き起こしをお送りします。



箕輪厚介(以下、箕輪):大好評の座右の本のコーナーに今日はけんすうさんが来てくれています。よろしくお願いします。

古川健介(以下、けんすう):よろしくお願いします。

箕輪:けんすうさんにこのコーナーに出てほしいと思っていたんですが、YouTubeあんまり出なくないですか?

けんすう:たしかにあんまり出ないですね。

箕輪:動画自体がそんなに印象ないですもんね。

けんすう:そうですね。喋りに自信がなくて。

箕輪:でも喋りうまいですよね。それこそトークイベントとか。

けんすう:トークイベントはまとまっているものを喋るだけなので、これは簡単なんですよ。4〜5人いる場合は、各人の立ち位置やタイミングを測らないといけない。

箕輪:最初にけんすうさんとはどういう関係かという話を軽くしたくて・・・今メインでやっているのはNFTですか?

けんすう:そうですね。クリエイター向けのサービスをやっていて、やっぱり今NFTがすごい面白いなと思っています。日本のクリエイターがガツンと世界に行けるルートとして相当いいんじゃないかなと思って、その辺をかなり掘っていますね。

※最近創っているNFTマーケティングサービス「dango」

箕輪:プロセスエコノミーの作業配信サービス「00:00 Studio」からNFTまで、やっぱりスタートアップって無限にサービス作りをやっていくんだなっていうのがすごいなって思っています。

けんすう:リアルタイムで見ると、めちゃくちゃ無駄な回り道をしているのが分かってもらえていいかなと思ってやっています。

箕輪:今日は座右の本を紹介してほしくて、僕もまだ聞いていないんですけど、何という本ですか?

けんすう:結構悩んだ結果、『インターネット的』という糸井重里さんの本ですね。これ、お読みになったことありますか?

箕輪:あります!いわゆる名著ですよね。

けんすう:いわゆる名著ですね。これ、書かれたのが2001年で、実はすごい昔なんです。

箕輪:21年前!

けんすう:たしか、2015年辺りでこの本は”予言の書”なんじゃないかとバズったんです。

箕輪:SNSが出てくる前なのに、SNS的なものや今のインターネットの概念みたいなものを、もう既にそれが登場する前から言い当てていたみたいなことですよね。

けんすう:そうですね。「リンク」「シェア」「フラット」がキーワードだと言っていて、でもこの頃はまだインターネットが怪しいとかよく分からないとか、そういう空気だったんです。

時代的には、DeNAやlivedoor、サイバーエージェントがまだスタートアップ、もしくは出る前ぐらいのタイミングだったと思うので、多くの人が「インターネットってよく聞くけど、これ何?」って思っていた頃です。

今で言うとブロックチェーンやNFTに近いんですけど、糸井さんは、インターネットの技術自体は“お皿”であって、大事なのはお皿の上に載せる“料理”ですよねと。

この“料理”のことを、インターネットではなくて「インターネット的なもの」と表現したのが、非常に分かりやすかったですね。

箕輪:その「リンク」「シェア」「フラット」っていう概念を、もう「インターネット的なもの」の3つの共通項として予言していたということですよね。

けんすう:そうですね。

箕輪:それって何でできたんですかね。一番かっこいいやつですよね。

けんすう:一番かっこいいやつですね(笑)。

箕輪:例えば今NFTの本を出すとしたら、それやりたいですもんね。

「リンク」「シェア」「フラット」っていう、糸井さんが「インターネット的なもの」として挙げたものは、今でもインターネットの根幹なんですかね?

けんすう:根幹だと思います。そこで完結していなくても、リンクで飛んでその先のリンクでまた飛んでを繰り返していけば、必要な情報は手に入るよねとか、面白い情報があったらシェアした方がいいよねとか。SNSが出てきてからもシェアボタンがあったりしますよね。

箕輪:シェアリングエコノミーの概念も当然なかった時代ですか?

けんすう:全然ないですね。

箕輪:すごいな。「フラット」は?

けんすう:やり取りしていて、会ってみたら実は小学生でしたとか、実は偉い博士でした、みたいなことが起こるけど、インターネット上だと平等だよねみたいなことです。

箕輪:むしろ今のweb3的なものすら含む感じですよね。

けんすう:まさにそうですね。

箕輪:そもそも、けんすうさんはこの本をどういう時期に読んだんですか?

けんすう:これたしか大学1年か2年だったと思います。

箕輪:早稲田大学時代。

けんすう:友達とインタビューサイトみたいなものをやっていたんです。そこでやっぱり糸井さんってすごいよねって話になって読んだ記憶があります。

箕輪:それは発売からどれぐらい経った時ですか?

けんすう:そんなに経ってないと思います。時系列は覚えてないんですけど、ほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)の本もあって、それとセットで読んだ記憶がありますね。

箕輪:学生のけんすうさんにはどう影響を与えたんですか?

けんすう:インターネットなので、めちゃくちゃちゃんと作ってからじゃなくて途中で出しても、みんなから「これこうした方がいいですよ」って言われたらすぐ直せるじゃんみたいな話は、なるほどなと思いました。

箕輪:大学生がみんなでフリーペーパーや同人誌を作っていた時代だから、納品主義99%という感じですよね。

けんすう:まさに。だから、プロセスを見せるみたいな感覚も、多分当時は本当になかったと思います。糸井さんがほぼ日をやり始めたのが50歳の時とかで、そこから上場まで持ってきているのでめちゃくちゃすごいですね。

箕輪:すごいわ。

けんすう:例えば、糸井さんの「インターネットで書く文章ってこうあるべきだよね」とか、ひらがなが多くてなるべく平易にした方がいいよねとかも、全部影響を受けています。

箕輪:たしかに!そこも『インターネット的』に書いてあるんですか?

けんすう:そうですね。書いてあります。

箕輪:何でひらがなが多い方がいいんですか?

けんすう:今までは、書き手と読み手だと書き手の方が権威だし偉いみたいなものがあったんですけど、インターネットだと情報がどんどん来るので、読み手は「そんな難しいの読んでられないよ」となるんです。

箕輪:コンテンツ側が弱いというか、選ばれるための努力を下から行くって感じですよね。本質を掘ることが仕事だから、そこを分かって実践したんでしょうね。

逆に、話は変わりますけど、僕とけんすうさんは世代は若干違いつつも、インターネットがなかった時代から、あるのが当たり前の時代という流れをきてるじゃないですか。この時代の狭間を経験している僕たちだからこその強みってあるんですか?

けんすう:強みはあんまりないんじゃないですか(笑)。

箕輪:本質を言語化できることが、自分の殻を破る阻害になりそうな気も。でも、糸井さんのように本質を知ってるからこそ、正しい手を打てるっていうのもありますよね。

けんすう:そうですね。希望があるとしたら、糸井さんみたいにインターネットのない時代に活躍した方が、新しいインターネットっていうテクノロジーを手にしても、本質を理解して使える、成功できるっていうのはいいなと思います。

箕輪:なんか今のNFTとかに近いと思っていて、僕ってどっちかと言ったら世の中的にはイノベーター側に見られるけど、本当のイノベーター側からしたら保守だと思っています。

ちょうど西野(亮廣)さん的な新しいものに挑戦しようっていう人と、田端(信太郎)さん的な「そんなものおもちゃやん」っていう老害との間にいて、どっちの気持ちも分かるんです。

そうなった時に、面白いから色々チャレンジしたい自分と、「いやぶっちゃけ10年後NFT全部ゴミだったってなるんちゃうん?」みたいな自分が行き来してて、でもその今の感じが、糸井さんが『インターネット的』を書こうって思った時代のインターネットだってことですもんね。

けんすう:そうだと思いますね。感覚で言うと、日本ではmixiが出る前は本当にアンダーグラウンドなものっていう感じだった記憶があります。

箕輪:それで言うと、NFTは全然普及してますね。

けんすう:その背景もやっぱりインターネットがあるからだと思っています。ABEMAとかもこういうYouTubeだったら話題にできるんですけど、当時はYouTubeもないので、YouTubeもブログもTwitterもSNSもない状態だと、広まるのが遅いんですよね。

箕輪:その『インターネット的』に書いてあることと、けんすうさんがスタートアップをやってきてサービスに生かされた部分って、どういう思想性なんですか?

文章はたしかに平易な感じだと言われれば、めちゃめちゃ下から行きますもんね。

けんすう:はい、そうですね(笑)。

箕輪:口語的と言うか「ちょっと整理してみると・・・」と考えながら書いてるような感じを匂わせるから、読みやすいですよね。

けんすう:そうですね。だから糸井さんの影響ですね。

例えば、情報は出した人に集まってくるよねみたいな、これも今聞くと当たり前じゃんってみんな思うかもしれないんですけど、当時重要な情報を出す方がいいよねっていう概念は、あんまりなかった記憶があります。

箕輪:独占からシェアへみたいなインターネットの基本がその時に分かってるって超強かったでしょうね。

けんすう:そうですね。

箕輪:今のIT起業家が『インターネット的』を読んでも、大事なこととかって書いてあるんですか?

けんすう:書いてあると僕は思いますし、多くの人は当たり前すぎて、本当に意味が分からない可能性もあるなと思います。

糸井さんは、「まず祭りを作って、そこに人が集まってきたらビジネスができると思っている」みたいな話をしているんですが、FacebookやTwitterも人が集まったからビジネスになったという事例をみんなはもう知っているので、超当たり前に聞こえるんです。

でも当時としては、「どうお金を儲けるの?」って言われ続けてたんです。その中で糸井さんは、まず祭りを起こして面白そうってなってたくさんの人が集まってきたら、そこに自動販売機とかを置けば売り上げるじゃないですかという話をしていて、これを当時言えるのがすごいなと思っています。

箕輪:祭りを作って人が集まったら何でも売ればいいじゃんっていうのを聞くのと、ビジネスモデルとしてFacebookやTwitterもまずユーザーを獲得してからその後にマネタイズしたよねっていうのとじゃ浸透率が違うから、その祭りの例で覚えた方が絶対いいですね。

けんすう:そうですね。

箕輪:単純にビジネスモデルとして、まずユーザー確保だマネタイズだって言われても、そこに温度感がないというか。

けんすう:まさに。あと、「ポジションでは価値を表せない時代が来る」ということを言っていますね。

箕輪:へぇ!どういうことですか?

けんすう:昔は位置が大事だったんです。あの人は偉いポジションだよねとか部長が偉いとか。

糸井さんがこの本を書いた2001年ぐらいは勢いが大事でした。なぜかというと、CDのランキングもオリコン上位が偉いと。

箕輪:売れるものがより売れるみたいな。

けんすう:そうですね。だから、ランキングの上位ばっかりあって、要は偉い人だから売れるんじゃなくて、もう勢いがある人だから売れるってなっていると。ただ、これはおそらくCDをたくさん買わせるような仕組みを誰かがやり始めて、勢いじゃないよねってなるんじゃないかと糸井さんは言っています。

箕輪:糸井さんって、どこかで読んだんですけど、コピーライターはもう辞めようって思った時は「これ売れてます」以上のコピーがないって気付いた時だったらしいですね。

けんすう:そうそう。この本にも書いてありましたね。

箕輪:けんすうさんの起業家としてのアイデンティティというか、こだわりみたいなものを言語化すると何になるんですか?あえて言葉にしてみると、どういうものがけんすうさんが好きなサービスなんですか?

けんすう:1つは、それぞれの人の頭の中にある情報や考えが外に出ていくのがめちゃくちゃ素晴らしいみたいなのが多分あります。

昔やっていたハウツーサイトも、その人が知っている超いい方法をみんなが出してシェアするといいよねっていうのがあったので、くだらないアイデアでも、なるべく外に出すとみんなが無理やり広げてくれたりして、広がっていくのとかがすごい好きですね。

箕輪:なんかけんすうさんは、あえて非合理というかネタというか、ある種「ビジネス的な競争とは僕は無縁ですよ」っていう感じを振り巻きながら遠回りしている過程において、それいいじゃんっていうのを見つけたい人ですよね。

一方で、人に対するアドバイスや壁打ち相手としては精度の高いQ&Aができるじゃないですか。その矛盾したひねくれを抱えていても魅力的ですよね。

けんすう:多分、問題解決にはそんなに興味がなくて、何かの発見のほうが好きなんだなって、最近思ったんです。

これをインターネットでこうやってみたらこうなりましたっていう、誰も発見していないものを発見したら気持ちいいと思うタイプで、それにニーズがなくても別にいいっていう。

箕輪:そうね、それは分かる気がする。けんすうさんの読書の仕方みたいなのを聞きたいんですけど、どういう風に本を選んで読んでいるんですか?結構マニアックなものも未だに読んでいるなっていう気もするんですけど。

(続きは後編で!)

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