ベリロンから学ぶ「意味があるから、意味がない」が求められる時代の空気感

こんにちは!けんすうです。

今日のアル開発室では「機能から意味へ」という時代の流れが、ちょっと変わって来ていて、「意味があるものから、意味がないものへ移行しているのでは?」ということを書きたいと思います。

機能から意味へ

2019年くらいに流行った概念として「役に立つことよりも、意味があるほうに価値が移りつつある」というものがあります。

少し長いですが、以下がわかりやすいので引用します。

横軸が「意味がある/ない」、縦軸が「役に立つ/立たない」。世の中にある組織や企業、そして個人も、「役に立つ」か「意味がある」かのどちらかでしか、世の中に居場所を与えられません。

日本はずっと、「役に立つけど、意味がない」分野で戦ってきました。家電メーカーや自動車メーカーが典型で、トヨタの車のほとんどが、「役には立つけど、意味がない」という領域に属してしまっています。

この領域は、価格にして100万円から300万円までで入手しやすく、移動手段としては役に立つんです。ただ買う人にとっての生きがいとか、乗っていることで人生が変わるかといったものではないですよね。

ところが欧州メーカーは「意味が価値」の車ばかりです。ベンツやBMWなどのドイツメーカーは、「乗る意味」という感性価値を与えています。

また、イタリアのフェラーリ、ランボルギーニなどの、数百馬力のエンジンを搭載したスーパーカーは、日本の法定速度からすれば完全にオーバースペックです。ですが、決して日常使いの車とは言えないのに、1000万~数億円の「意味がある」わけです。つまり、役に立つレベルが低い車の方が、値段が高いんです。

役に立つ人より「意味がある人」がこれからは生き残る【山口周×尾原和啓対談2】

役に立つものを作る時代においては、日本勢はかなり戦えてきました。家電から車まで、高品質のものを安価に作っていくことでうまくいってたわけです。

ところが、そういったものがコモディティ化していくと、価値を失っていってしまいます。中国のベンチャーなどでも、同じような高品質のものをもっと安価に作れるようになったりすると、なかなか厳しい戦いになってしまうんですね。

なので「役に立つ、よりも意味がある」みたいなほうがいいよね、というのが山口周さんの書籍や発言により提唱され、この概念が盛り上がったのです。

これは非常に日本勢が持ってた違和感や、このままじゃいけないぞ、という感覚を説明しており、多くのビジネスの場で引用されてきました。

プロセスエコノミーの出現

その概念の延長線上に、「プロセスエコノミー」というものもあります。

高品質なものをみんなが作れるようになった結果、「どのアウトプットを選んでも、大差がない」という感じになってしまった時代の戦い方の一つに「プロセスを見せることで共感してもらったりする」というのが、このプロセスエコノミーです。

「どのお店にいってもおいしいし、どの曲を聞いても高品質だし、どの美容師さんに髪を切ってもらっても変なことにはならない」みたいな状態になったら、アウトプットの品質が勝負の決め手にならないんですね。

アウトプットの品質が勝負の決め手にならない、というのは当然「品質はどうでもいい」ということではありません。品質がいい、というのは当然クリアするべき最低ラインになってしまった、ということです。

SNSの発達によって「共感される」「その人だからいいと思う」みたいなところが、選ばれる理由となってきたんです。

先程の「役に立つから意味がある」というところの意味の積み上げ方として、プロセスを見せたり、一緒にお客さんと作っていったり、などが出てきたのです。

慣れが来てしまった時代の次

実はここまで書いた「役に立つから意味がある」みたいな流れは、誰かが提唱したとか、何かのきっかけがあった、とかそういうものではありません。2010年代はじめくらいから同時多発的におきていた現象です。

なんとなくあった流れや空気に名前をつけたり、説明をつけたのが上記であげた書籍などだった、ということですね。

なので、この10年くらい、やたらと意味を強調したプロダクトを目にするようになりました。生産者の想いがこもった文章がついていたり、プロセスをじっくりと見せたり、などです。

しかし、ここ最近、これらに少し飽きてきたお客さんが多くなってきてきたのか、いまいち効果が薄れてきたような気がしています。

そこで、流れとして来ているのが「意味がない」ものたちです。

たとえば、日本のNFTプロジェクトの中でも稀有な成功をしている「Very Long Animals」、通称「ベリロン」などがあげられます。

https://opensea.io/collection/very-long-animals

「意味がない」が求められる時代へ

これは、起業家の河さんという方が作ったものなんですが、「すごく長い動物」なだけで、特に意味はありません。河さんの原体験がある、とか、日本のコンテンツの流れがある、とかそういうものも特になく・・・。

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