東京のスタートアップコミュニティは"大企業病"に対しての反論を書いたよ
久しぶりに、スタートアップについて書いてみたいと思います!スタートアップ業界じゃない人には、なんのこった、だと思います、すいません。
Twitterを眺めていたら、マイネットの上原さんがこんなことをいっていました。
マイネットについて簡単に触れておくと、マイネットは、『再設計・バリューアップ』という、スマホゲームで「もうこのゲームはうちの戦略的に放出したいな」とか「撤退したいな」というところからゲームを買って、運営をして、継続し、伸ばしていく、という、「スマートフォンゲームセカンダリ市場」という、スマホゲーム業界でも特異な立ち位置を占めている会社です。
たとえば、サーバーを経由するサービスの場合、「おもしろかった、好きだったゲームが運営停止すると、そのゲーム自体ができなくなってしまう」という面もありますし、「スマホゲームは、一つのコミュニティであり、それがなくなってしまうと、居場所がなくなる人がいる」という面もあります。
つまり、運営が停止されると、自分が育てたキャラや、ゲーム内での仲間たちとの関係性も切れてしまうんですね。
しかし、企業は選択と集中をしないといけない。というので、双方のニーズがあるところをマイネットが拾って運営を継続している・・・というので、ネットコミュニティ好きとしては、かなり事業として好きです。
という中で、僕は上原ファンなので、上記のツイートを見て「あー、そうっすよね」と気楽に思ってたんですが、、
このツイートが、思った以上にスタートアップ界隈から共感されているように見えたんですね。
上原さんのやりたかったことって、この投稿に共感を集めることだっけ?と思うと、違うんじゃないかと。
むしろこういう「えらい人がいっている意見をホイホイ共感すること」じゃなくて、若手が「上原さん、それは違うっす!」と意見を戦わせて、そのことによりスタートアップ界隈をより前進させることなんじゃないか・・・?と思いました。
このまま「そうだそうだ」と共感だけを集めてたら、それこそ、東京のスタートアップ界隈はいつまで立っても他国のベンチャーと比べて、しょぼいままじゃないかなと。
ただ、僕が言うと、波風立てた人として厄介もの扱いされたりして、それは嫌じゃないですか。
できれば、安全な場所からヤイヤイいいつつ、表で全員にいい顔したいなと思っているんです。
ということで、友達のとある若手起業家に「こういうのに反論してくださいよ、ビシッと」とけしかけたんですが、「何言っているかよくわかりません」と言われて拒否されちゃいました。
まともな人です。
というわけで、若手ではないですが、微妙に世代が下の僕が、「それ違うんじゃないですか」ということで、議論を盛り上げたほうがいいかなと思ったので、書いてみます。
何が違うの?
というわけで、先程のツイートをもう一度見てみます。
東京スタートアップコミュニティの“大企業病”はもう始まっている。同じ共通言語で、同じ教科書に則り、ルール通りのステップルート。すべてレールが敷かれ、そこに集まる東大早慶。加速度的に洗練され、外れ値は村八分。そして君臨する偉そうなおっさんたち。
まず、このツイートでの問題提起は、「同じ共通言語で、同じ教科書で、ルール通りのステップが大企業病ぽいのではないか」という点です。
大企業病とは何か?という定義にもよりますが、上原さんが、「俺はこういう意味で使った」というオレオレ定義で使うとも思えないので、Wikipediaによる「主に大企業で見られる非効率的な企業体質のことである。」というのを採用することにします。
なので、つまり、上原さんは、「同じ共通言語で、同じ教科書に則り、ルール通りのステップルート」が「非効率的な企業体質」といっていると思うのですが・・・。
個人的には全くそう思いません。
90年代とか2000年前半は、まだスタートアップ界隈が成熟していなかったので、いろいろなトラブルがあったと聞いていますし、たとえば、何もしないおじさんが過半数の株を安く獲得しちゃう、とかもよくありました。
投資契約書もまだこなれていなくて、それこそ失敗したら創業者が買い戻さないといけない、みたいな「それって投資なの?」という契約があったとかも聞きます。
しかし、ここ10年ほど、だいぶ知見が共有されており、失敗しづらい方法や教科書、ノウハウが充実しつつあることで、意味のない落とし穴にハマる人が減ったのではないかと思っています。
最近だとこういう本も出てきたりして、起業家が無駄な失敗をしなくなりました。
ノウハウが流通していない社会だと、たとえば、4社あったとして、みんなそれぞれの会社で試行錯誤をして成功を目指す、という形になっちゃうんですね。なので、「何もわかっていないときの資本政策によって、そっからの成功が阻害された」みたいなこともよくあるんです。
ただ、ノウハウ、教科書がちゃんと揃っていると、そこで転ぶ人が減ります。なので、全体としては、底上げになるんじゃないかなと。
というので、「東京のスタートアップ界隈で貯まっている知見やノウハウが足りない」ことが課題だと思いますし「教科書どおりに進めれば失敗しないところを、無駄に失敗している」というのも課題だと思っています。
なので、上原さんがいう「同じ共通言語で、同じ教科書に則り、ルール通りのステップルート。すべてレールが敷かれ、そこに集まる東大早慶。加速度的に洗練され、外れ値は村八分。」については、
同じ共通言語・教科書・ルールで、レール通りに進むことがダメなんじゃなくて、その共通言語や教科書、ルールの質も量も足りていないからダメなんじゃない?
というのが僕の意見です。
若く、荒々しいのがベンチャーぽくて、ノウハウ通りに丁寧にやって無駄な失敗を避けるのだと、前者のほうがベンチャーぽい、というのはわかるんですけど、多くの人が失敗したものを、あえて教科書を読まずにレールから外れてやっても、だいたいの場合「車輪の再発明」といいますか、無駄な努力なので、もっと事業の本質を伸ばすところにリソースを割いたほうがいいんじゃないかと思っています。
ちなみに、シリコンバレーでは、もっとテンプレ化してるという意見もありました。
なるほど。
たしかに、たとえば「事業を他社にパクられたらどうするか?」というところとかに対しても、日本のスタートアップだとまだ「ちゃんと顧客に向き合って、顧客のためになることをしろ」的な、抽象度の高い話ばかりが出ている印象があります。
もちろん、その抽象度の話も重要なんですが、その上で、具体的なノウハウ、やり方、フレームワークがあり、そして実践があるので、具体的な教科書的なものは重要だと思うんです。
たとえば、こういう記事があるんですけど
事業を他者にパクられないための参入障壁として、「ブランド」「スケール」「エンベッド(埋め込み)」「ネットワーク効果」があり、ネットワーク効果もこういう分類ができる・・・みたいな整理が一つあるだけで、サービスづくりは格段とスムーズに、戦略的になれます。
というので、日本はなんか精神論やハングリー精神、突破力みたいな話が好きな人が多いのですが、むしろそこは足りていて、具体のノウハウ流通が足りていないんじゃないかというのが僕個人の課題感という話でした。
(アメリカとか中国の事例から学ぶというのもあると思いますが、日本社会や日本の法律、ルールにフィットしたノウハウや知見も絶対必要なので、そこが足りていないというイメージです)。
次のツイート
ちなみにツイートには続きがあるので、そちらにも・・・。
ピラミッドは別に固定化していないと思っていて、普通に「顧客が評価する」だけなんじゃないかと。「あの人はスタートアップ業界で大きな影響力持つから」みたいなので評価するお客さんって、あまりいないと思うんですよね。
有利だとしたら、資金調達くらいです。人間関係があり、実績があれば評価されやすい。
しかし、ここも、むしろノウハウが貯まってきたことにとって、新しく参入する人に有利になっています。
日本のスタートアップの投資総額も増え続けています。たとえば、僕が以前起業したときの2009年は、893億円でしたが、2018年は4481億です。
この10年-20年で、投資契約書とかがかなりこなれてきています。そのことにより、悪意ある新規参入者や、変なことをするベンチャー経営者をかなり抑制できるようになったんですね。
ベンチャー投資はリスクが高いイメージがありますし、実際、倒産したり潰れることもあるので間違ってはいないですが、それでも「業界にノウハウが蓄積したことにより、リスクを管理できるようになり、結果として総額が増え、新規に入ってくる人にも、投資が集まるようになった」が現状ではないでしょうか。
個人の感覚からしても、10年前に、何の実績もない人が1億円集めるのは相当大変だったイメージですが、今では、学生だろうと、20代だろうと、そんなに珍しくなくなってきています。
なので、「格付けされて、ピラミッドが固定化している」というよりは「市場が成熟するにつれて、新規参入者が入りやすくなっている」というほうが正しい気がします。
ベンチャー白書2019年によると投資金額もあがっているし、投資件数もぐっとあがっていますね。
なので、地上波の事例を使うのは若干ミスリーディングとも思っていて、地上波は、チャンネル数と番組数に限界があるため、強いプレイヤーが独占し続けやすいというのがありますが、スタートアップにおいては「ノウハウや業界が成熟するにつれて、新規参入者も入りやすくなり、余計な失敗もしづらくなり、投資も受けやすくなり、成長しやすくなる」という感じだと思います。
賛成ポイント
という感じで、基本的に、上原さんのいっていることは、パッと見「お!そうだな!」と思ったのですが、よく考えてみると僕は違うかなーと思ったので書いてみました!
ちなみに賛成ポイントとしては「20代だったらスタートアップをやらない」というところは結構同意で、今のスタートアップは、ちゃんとノウハウを調べて、学習して、実践をちゃんとできる人が有利で、そういう人っていわば、エリート的な高学歴の人だったりするのですね。
もっと雑多で、まだルールが決まっていないところのほうが、どうしようもない人でもなんとかなる可能性があるので、そういう猥雑なところのほうが好きなので、僕が20代だったら
- 投資とかが絶対集まらなそうなところで
- 中央集権ではない仕組みで、国だろうと大企業だろうと抑止できなくて
- 僕自身もどうしようもないような場所を作る
とかをやりたいかもしれません。
そのあたりは同意だなーと思いました!
というわけで、書き殴ってみました。スタートアップ界隈のみなさんもぜひぜひ、議論を戦わせてみると、それもまた、スタートアップのノウハウとして蓄積されるのでいいんじゃないかなと。
おすすめ本
ノウハウでいうと、日本のネットビジネス特有のものまでまとまっているものとしては
これがいいなと思っており、また、スタートアップに参戦したい!と言う人には
これが、めちゃくちゃ熱くておすすめです。めちゃくちゃ起業したくなりました。