「売るための戦場を変える」ことで圧倒的に勝っている状態にするという戦略
人間は他のものと比べるほうが得意な生き物です。
どこかの本で読んだ記憶があるのですが(忘れた、、誰か知ってたら教えてください)、人間は、会話の中の大部分が「噂話」らしいんですね。
人間は社会的な生き物です。で、古代だと、せいぜい150人くらいの集落だったので、その中で、誰がどういう行動をして、周りの人がどう判断したか、というのは極めて重要な情報だったらしいのです。
たとえば、150人のうち、迷惑をおおきくかける人がいたら全体的な悪影響があるわけですし、命の危険性すらあります。なのでその情報は常に収集したくなる。さらに、集落から追い出されたら生命の危険が大きく高まるので、「他人が、その行動をどう評価したか」というのも重要なのです。
自分が何かをしたときに、評価が大きく下がると、命が危ない、という状態なので、死活問題です。なので、「何をしたら評価が下がるのか」に対して、人間は敏感らしいんです。
というのがあるので、人間は評判を気にする生き物なのです。
-----✁-----
そして、ランキングの話です。
よく言われることですが、ランキングって絶大な威力があります。
いろいろなサービスで、いろいろなリコメンドを実装してテストをした結果、ランキングがやっぱり圧倒的にクリックされるよね、みたいな経験があります。上位のものは良い物が多いから、というのはもちろんあるんですが「一番人気のものがこれですよ」というのはやっぱりヒキがあるのですね。
で、、「売っているものの軸を変えて、ランキングをハックする」というのは、極めて有効な手立てです。
たぶんこの記事を読んでいるほとんどの人がAKB48のことを思い浮かべたと思うんですが、あれはめっちゃ賢くて
- 「音楽を聞くツールとしてのCDを売る」
だと、100万部いくとすごく大変なのですが、たとえば、
- 「アイドルと数秒間握手する権利」
だと思うと、より売れる、みたいな形です。
これにより、2018年のオリコンCDシングルランキングは以下のようになっています。
1: Teacher Teacher(AKB48)
2: センチメンタルトレイン(AKB48)
3: シンクロニシティ(乃木坂46)
4: ジコチューで行こう!(乃木坂46)
5: NO WAY MAN(AKB48)
6: ジャーバージャ(AKB48)
7: 帰り道は遠回りしたくなる(乃木坂46)
8: ガラスを割れ!(欅坂46)
9: アンビバレント(欅坂46)
10: シンデレラガール(King & Prince)
1位のTeacher Teacherは181.9万枚売り上げる大ヒットになっています。ちなみに有名な話ですが、2010年から、年間ランキング1位はずっとAKB48です。
2018年 Teacher Teacher(AKB48)
2017年 願いごとの持ち腐れ(AKB48)
2016年 翼はいらない (AKB48)
2015年僕たちは戦わない(AKB48)
2014年 ラブラドール・レトリバー (AKB48)
2012年 真夏のSounds good!(AKB48)
2011年フライングゲット(AKB48)
2010年 Beginner (AKB48)
まあ、このあたりはよく話題になるので知っている方も多いと思いますが、この出来事を抽象化すると
「売っているものの価値をずらし、戦場を変えることで、勝っている状態をキープできて、宣伝効果をあげる」ことができるということなのかなと。
-----✁-----
で、この手法の良し悪しはおいといて、ビジネス的には参考になるなーと思っています。自分の土俵とは違うところのランキングに乗り込んでいって、「すごいんだぞ」と見せることができるわけです。
しかし、個人的には、AKB48の場合は、オリコンを独占し続けてしまうので、ヘイトをためてしまう可能性があるので、やりすぎかも、とは思ってしまいます。あと、オリコンという生態系も崩してしまうので。。
というわけで、もっといい方法はないかなーというを最近考えています。
たとえば、最近、いいなと思った広告としては、以下があります。
“今、一番売れてるビジネス書。”「キングダム」1~30巻の表紙がビジネス書風に(写真41枚)
大人気マンガのキングダムを、ビジネス書、と銘打って販促しています。
ビジネス書って10万部売れれば大ヒット、100万部売れるとメガヒット、500万部で歴代最高、くらいのノリなんですが、キングダムは3000万部売れているんですね。これは、
- マンガは対象人数がそもそも多い
- ビジネス書の値段は1500円くらいで、マンガの単行本は500円くらい
- キングダムは50巻出てるので、同じ人が50冊買う可能性が高い
というのもあるのですね。なので部数が出やすい。
なので、自分が有利な場に出向いて「一番売れているんですよ」という宣伝なのです。
もちろん、キングダムが実際にビジネス書のランキングに入るわけではないので、単純にPR的に使っているだけで、上手だなーと思いました。
-----✁-----
というわけで、これらの手法がいいなって思っているのが以下です。というのも、自分たちの業界内のランキングで競うと、その業界全体が疲弊する可能性があるのですね。
たとえば、僕は今、アルというマンガサービスを作っています。なので、マンガ業界全体をめっちゃ盛り上げたいのですが、このサービス内では、ランキングは作っていません。
というのも、マンガのランキングを作ると「マンガを読んでいる人の中でお客さんを取り合う」ことになるからです。ランキング上位の人は、さらにお客さんを取るので、ランキングの上位にのらない作者さんなどはよりお客さんを取るためには、ランキング上位になるような作品を書くようになります。
その状態が続くと、同じようなジャンルの作品が作られ続けるようになります。多様性が失われます。多様性が失われると、業界全体の活力が失われます。
まあ、まだ弱小サービスなので、あまりここまで気にする状態では全くないのですが、将来性を考えると、「他の戦場にいって、そこで圧倒的に勝って、そこのお客さんを業界に連れてくる」というのをやりやすい仕組みを作るべきかなと考えています。
答えは!まだ全然ありません!どんなネタでもいいので思いついた人がいたら教えてください!
-----✁-----
あ、もちろん、外部の人たちが自分のジャンルに入ってきてランキング荒らしたら困るという人たちがいるのも承知です。AKB48とかは、ある意味では、音楽が主のミュージシャンやバンドは年間トップ10に入るのが非常に難しくなってしまったので、そういう問題は起こります。
そうすると、音楽の売上ランキングというもの自体が廃れてしまうので、やりすぎはよくありません。利益を最大化するためにハックし続けていいのかどうかは考えないといけないなーと思います。
(その意味で、キングダムのキャンペーンはビジネス書業界には迷惑をかけていないのでいいなと思っています)
-----✁-----
ってここまで書いて、これ、キングコングの西野さんがいってたことまんまだなーと気づきました(絵本を○○として売る、とサロンでいってた)。
すいません。
西野さんのサロンにはこういう投稿がたくさんあるので、興味ある方はそっち読んだほうが早いかもしれません(ひどいオチになってしまった)