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自分をストーリー化する物語思考-なぜかWeb3から始まるけんすうx箕輪対談(後編)

けんすう

こちらの記事は、2022年6月15日開催に開催された「プロセスエコノミースクール第二期 4.5講目」で、編集者の箕輪厚介さんとの対談を記事化したものの後編となります。

前編・中編をご覧になっていない方は以下からお読みください。

今回で終わりますが、話はちゃんと着地するのでしょうか・・・。

主に質問に答えていくスタイルで書いています。

ペット業界におけるプロセスエコノミー戦術

けんすう:「ペット業界が、プロセスエコノミー的に取ればいいと思う戦術(とは?)」との質問もあったのですが......。

(サービスの)名前を忘れちゃったんですけど、うまいなぁと思ったのがあります。ライブ配信って、かっこいい人、かわいい人、みたいに見た目が魅力的な人がいたら課金されるじゃないですか。

あれを保護犬・保護猫でやっているサービスがあって。

箕輪:へぇ~。

けんすう:保護犬を見て、かわいいと思ったら毛布やペットフードが課金できるんですよね。課金すると、「ありがとニャン」みたいな、あざとい写真が来るんです。

要は「ライブ配信サービスって、バーチャルホスト・キャバクラみたいな楽しさの要素があるよね」みたいなところと、「犬とか猫も、言ってしまえば愛玩動物だよね」みたいな、本音を言ってしまうとちょっとどぎつく聞こえるようなところでも、ユーザーニーズがあるならちゃんと使う、というのをやっているので、逆にイヤらしさが減ったという。

箕輪:わかる。敢えてやることによってね。むしろ「イヤらしくすること」によって......というのはありますよね。

けんすう:そうなんです。このサービスだと「ホストにお酒をおごる、キャバクラで女の子にシャンパンを入れる」のと同じ感覚で、「捨て犬に毛布をあげる」のですね。あくまで、自分が気持ちいいからあげているわけです。

でも、結果を見れば、後者のほうが慈善活動ぽくなる。こういう感じで、こちらのかわいそうという同情や共感の気持ちを利用するんじゃなくて、欲望に寄り添ってくれているのが、サービスの使い心地として快適なんです。

これが、かわいそうな犬の写真を投稿して「毛布ください。足りてません」って直球でやられると、見てるほうもツラくなっちゃうんですよね。

箕輪:なんだろう、それわかるなぁ。例えば、普通に「良いことやってます」というストーリーを語るのって、けっこう本気でやらないとお金が集まらなくて。

逆に、「新幹線でチケットなくして2万円損したから、PayPayで今すぐ2万円ください」って言ったら、20万円くらい集まったんですよ。

けんすう:すごい(笑)。

箕輪:なんだろうな、これっていう(笑)。「ネタのほうが価値が出る」というか、それはありますよね。

けんすう:そうですね。僕はけっこう寄付とかするので、Facebook広告が寄付ばっかりなんです。

箕輪:あ、言ってた。

けんすう:かわいそうな子どもの動画とかがずっと出てくるので、精神的にイヤになってくる。

箕輪:僕、寄付しないから一切出てこないですね。

けんすう:え? マジですか。僕は「寄付の広告ばっかだなぁ」と思っちゃうくらい出てきます。

だから、「世界は本当にヒドい」みたいなタイムラインになる。気持ちが落ち込むのでまた寄付すると、また出てきてしまうというので、栄養が取れていない海外の子どもたちの写真や、日本でもおなかいっぱい食べたい、というお子さんとか出てきて、落ち込んできちゃうんです。

さっきのペット業界の例でいっても、直球でやると、「ペットのかわいさPR」「かわいそうPR」をしがちなんですけど、「ペットをホストやキャバ嬢みたいに扱う」みたいに、何かしらの変化球があったほうが、お客さんが楽しめる余地があるのかなと思っています。

箕輪:それって、「炎上とかも、ちゃんとエンタメに消化してあげる覚悟」みたいなことなんですかね。

ある意味きれいなことって、みんなに「良いことやってるね」と言われるから良いことなんだけど、「かわいそうな人にこれを贈ろう」って、ぶっちゃけ、だれでもできる。

それを一段(上げて)エンタメにするのは、けっこう叩かれるかもしれないし、おもしろくしないといけない。そっちのほうがフザけているようだけど、やっぱり価値はあるのかもしれないですよね。

けんすう:そうですね。昔「2ちゃんねる」という掲示板があって。2ちゃんねらーの人たちはフジテレビが嫌いだったので、フジテレビで「(海岸の)ゴミ拾いをします」みたいな企画があったんですけど、「台無しにしてやろうぜ!」と言って、前日にゴミを拾いまくって超キレイにしたことがあったんです。

箕輪:あった(笑)。

けんすう:「ゴミ拾いしようぜ」だと、みんな行かないけど、「フジテレビへの嫌がらせ」だと思うと、めちゃくちゃ行動したという(笑)。

「フジテレビ、困るよね」というのはありつつも、結果的に海岸はキレイになっているので......。

箕輪:だれも損はしてないですよね。

けんすう:「だれも損はしていない」というのがポイントだと思っていて。プロセスエコノミーで、そのへんの設計がないと、「やっている人の気持ちよさのためだけに、動かされている」とみんなが思っちゃうのはありますよね。

箕輪:確かにそうだな。

それはめちゃくちゃ大事な超上級編だけど、良いことを、良いことのままにせず、ちゃんとエンタメにする。でも結果的にだれも損はしていないから、ハッピーだよねという、2段構造の悪ふざけですね。

けんすう:そうですね。というのも、『プロセスエコノミー』を読んだ人が実践しようと思った時に、わりとみんな良いことを書こうとして......。

箕輪:もう、イヤになっちゃって(笑)。

けんすう:イヤにはなってないですけど(笑)。

箕輪:「こんなにこだわっているんです」とか「〇日間煮込んでます」とか……。

けんすう:そうなんですよ(笑)。煮込み勝負だと、「2年煮込んだヤツは偉いのか?」と。たくさん見ていると、そういうふうになっちゃうし......。

箕輪:なっちゃう、なっちゃう。

けんすう:「押しつけがましさ」が出ちゃうと、嫌がられる。

箕輪:性格悪いかもしれないですけど、ある種、上級編を身につけるためにはクラファンを一日中見続けて、「イヤらしい突っ込みを入れる」のがいいかもしれないですね。

けんすう:あぁ、それはいいかもしれないですね。

箕輪:だって、みんなそんなにピュアに応援しないじゃないですか。ちょっと意地悪な目線で「じゃあ、もっと煮込めばいいんかい」みたいなことを突っ込むと、磨かれそうですよね。

「インド人完全無視カレー」はなぜ売れたのか?

けんすう:知っている方が多いかもしれないですけど、「インド人完全無視カレー」というのがあって。

本場シェフのアドバイス無視! 「インド人完全無視カレー」登場

箕輪:昔ありましたね。

けんすう:10年以上前なんですけど……。

箕輪:名前がいいよな。

けんすう:インド人を呼んで、カレーのプロを呼んで、そのアドバイスを全部無視して作ったカレーなんですよ。

箕輪:なんかあったなぁ、それ(笑)。

けんすう:これ、バカ売れして。

箕輪:(笑)。

けんすう:こういうの、プロセスが見えると、ちょっと気になるじゃないですか。

箕輪:うん、確かに。プロセスエコノミーの真正面だったら、インド人に話を聞きまくって、カレーにしますもんね。

けんすう:うん、そう。でもそれだと、「ウマいんだろうなぁ」で終わる。だけど、おいしいカレーって世の中にたくさんあるんで、買うところまではいかない。

「アドバイスを全部無視したら、どんなカレーになるのか気になる」みたいなのだと、どうしても気になってしまったりして、買うところまで連れて行ってくれるんです。

箕輪:天才だなぁ。

けんすう:これをレトルトでも出していて。レトルトって味が落ちるので、「おいしさ0.8倍」にしたんですよ。

箕輪:なるほどね。

けんすう:「これは劣化版です」と。普通に風味が犠牲になっているらしいので、「劣化版」というのは正しいんですけど、普通だったらちょっとごまかしたくなるんですよね。「あの味をレトルトでも!」とか言っちゃいそう。

でも、「味の質が落ちた分、カッコいいパッケージでカバーします!」とかも言っているので、おもしろいんです。

これもめちゃくちゃ売れたらしいです。

箕輪:ちょっと違うかもしれないんですけど、『プロセスエコノミー』も『物語思考』も、何のためにプロセスや物語を出しているかというと、ある種、みんなを共犯関係にすることだと思っていて。「応援しよう!」とか......。

でも、100人に聞いて100人が「すばらしいね」って話だと、応援じゃなくなって「勝手にやってください」になるのかもしれないですね。

けんすう:そうですね。他人事になるんですよね。

箕輪:うんうん、それだな。「余白の設計」とかよく言われる言葉になっちゃうけど、何かしらの突っ込み要素とかイジり要素とかネタ要素がないと、「お祭り感」が形成できない感じですね。

読み手を「受信者」ではなく「発信者」にする方法

けんすう:みんな、プロセスを知ってもらう相手や読んでもらう相手を「受信者」として扱うんですけど、「発信者」として扱ったほうがいいと思っています。

箕輪:あー、それはおもしろいですね。

けんすう:「インド人無視カレー」は、この話をすると盛り上がるので、僕にとってはおいしいネタなんですよね。言いたくなる。

箕輪:絶対そうですね。

けんすう:いってしまえば、僕がおもしろい話のネタとして使えるので、僕自身が得しているんです。だから紹介するんですけど、これが「めちゃくちゃおいしいカレーです」だったら、僕が紹介するメリットが減っちゃいますよね。

なので、単においしいカレーは紹介しないんですよ。

箕輪:中編で話にでた、「ガーナの唐揚げ(屋さん)」も、まさにそれですね。

けんすう:そうですね。だから僕、箕輪さんにLINEしちゃったんですよ(笑)。

箕輪:確かに、あったあった(笑)。「なんで僕に影響受けて、ガーナで唐揚げ屋やるんですか?」みたいな。

けんすう:そうです。同じく、中編で話にでた『フォートナイト』も、「わけのわからないボスになった」みたいなのって、あれを作っている人はやっぱり天才的で、計算していて。

わけのわからないボス

箕輪:ツイートしたくなりますもんね。

けんすう:そうなんです。「僕がツイートしたくなるものって、こういうことだよね」というのを理解した上で、アレをやっていると思うので。

箕輪:確かに。「絶妙においしくしないことによって、おいしくさせる」ってことですよね。

けんすう:そうですね。

箕輪:すごいな。ホント、高等なセンスが必要だなぁ。だから、僕が西野さんに「ミノペン」というサウナのペンションで、西野さんの誕生日なのに「誕生日なので100万円ください」って言った、みたいな話ですよね。

けんすう:そうですね。

箕輪:西野さん、それをいろんなところで言いまくってますもんね。

けんすう:そうなんです。これは、なかなかできることではないと思うんですけど(笑)。

箕輪:できないですけどね(笑)。言いたくなりますもんね。

けんすう:そうなんです。「誕生日なのに、100万円カツアゲされた」というのが、西野さんにとっては100万円以上の価値になるし。これが「こういうペンションやりたいんで、ホントに応援してください」ってことだったら、西野さんは発信者にならないと思いますね。

箕輪:確かに。「あの美しい話のために、金だけ払った」という感じですよね。

けんすう:そうですね。僕も箕輪さんのシール、100枚買わされたんですけど。

箕輪:そうそう、「水風呂くんステッカー」ね(笑)。

世の中で一番いらないシール。日付とか入っているのがすごく邪魔。

けんすう:あれもやっぱり言うんですよね。「カツアゲされた」って。

箕輪:たしかに。できるだけ要らないものを作りましたからね。

けんすう:そもそも、水風呂くんってキャラ、全然浸透していないですし。誰?

というので、こういう、真正面で応援してください!みたいにしない仕掛けや考え方はけっこう大事かなぁ、と思っています。

箕輪:これ、頭に入れておくくらいでも、変に「良い話ポエム」に沈まない意味では大切なことですね。

けんすう:そうですね。相手を受信者じゃなくて発信者にする一番簡単な方法は、カウンターだと思っていて。

箕輪:なるほど。

けんすう:Web3でも、「二酸化炭素排出権」みたいなのがやり取りされていて、けっこう盛り上がってるじゃないですか。

二酸化炭素を使う会社は(それを)購入しているんですけど、逆に言うと、「お金を払えば、二酸化炭素を出してもいい」となっちゃってるので、環境が良くなっていない。

なので、とあるWeb3プロジェクトでは、みんなでお金を集めてその権利を買いまくる、みたいなのを企画しているそうです。そうすると、排出権の値段が上がっていくじゃないですか。

そうしたら企業も、「こんなに高いのを買うくらいだったら、(二酸化炭素)減らしたほうがいい」ってなるよねという。

二酸化炭素排出権を買うような企業を邪魔してやろう、それがちょっと楽しいぞ、くらいでやってても、最終的には地球環境のためになる、という設計になってりう。

箕輪:ちょっと革命側というか、反体制的なことですよね。

けんすう:そうですね。まさに、まさに。

箕輪:テクノロジーは、常にそうですよね。

けんすう:自分が「正義側」「良い話側」に陣取るプロセスエコノミーは、けっこう埋もれちゃうので......。

箕輪:それはすごく大事な視点だなぁ。「プロセスエコノミー」って言葉を一般化してから2年も経っていないのに、相当「高度化」してきましたね(笑)。

けんすう:この単語ができてから、見ていて思ったんですけど、めちゃくちゃ真似しやすいし効果が高い分、「一気に増えて、一気に飽きられる」のがあったんでしょうね。

箕輪:いや〜、おもしろい。僕が『物語思考』の話と一瞬重なるなぁと思うのは、僕みたいな「とりあえず動け」系の人は、「そんなプロセス踏まなくても、動きゃいいじゃん」ってなる。

だけど、けんすうさんのこの本、僕が編集した本の中でも、最も細かく丁寧にステップが設定されていて。「行動するために何分割するんだ?」みたいな。

モチベーションが上がらない時やしんどい時、どうすればいいか?

箕輪:「モチベーションが上がらない時、なんかしんどい時、どうしますか? 個人的には、気分転換したところで解決せず……」という質問がきています。

けんすう:良い質問ですね。こういう人のために(本を)書いているんです。尾原さんが言っていたと思うんですけど、たぶん「モチベーション」と「やる気」と「テンション」をごちゃ混ぜにして話しているので、難しくなっているのかなぁと思いました。

質問を読んでいると、「モチベーションが上がらない時」とか「気分転換」とかいろいろな言葉を使っているので、たぶん全部ごちゃ混ぜになっているんですよ。

「テンションは物理的に上げられる」というのが、よく言われることです。ここにいる人たちが集まって、めちゃくちゃノリノリの音楽を爆音でかけて、みんなで肩組んで大きな声を出していると、絶対にテンションが上がるんですよ。なので、テンションを上げる時はそういうことをすればいいんですけど、これって、おそらく「やる気」の話だと思うんですよね。

箕輪:やる気だと思う。

けんすう:やる気は、実は存在しないと言われていて。みんなが言っている「やる気」のほとんどが、作業興奮だという話があるんですよ。なので、やらないと出ないものだったりするんですよね。

「やる気が出ないけど、どう出すか?」とすると、絶対に失敗するので、作るべきは「やる気がない時に、それでも行動する仕組み」です。それを作って行動しているとやる気が出るので、そっちを作ったほうがいいのかなと思っています。

箕輪:確かにな。『物語思考』でも、「家を出る前に、服を脱ぐ」とかからやりますもんね。

けんすう:そうですね。「5秒ルール」というのがあって。ギターを練習している人がいて、ギターが目の前にある場合と棚にある場合、棚にある人はめちゃくちゃ挫折するらしいんですよ。

箕輪:わかるなぁ。確かに僕も「原稿読もう」という時に、リュックからiPadを出すのが一番のハードルですね。

けんすう:あー、そうですよね。

箕輪:そうですよね。出しちゃえば、ほぼ半分の確率で読むし。

けんすう:そうなんですよ。なので、そこを設計するだけでもいいと思います。

箕輪:『物語思考』って、(原稿の)進みがたまに止まるじゃないですか。

けんすう:(笑)。

箕輪:僕は本って、「発酵」が大事だと思っていて。3,000文字だったら誤魔化せるんだけど、10万字書くと誤魔化せない。ロジックの矛盾とか説得力のなさって、気づくと面倒臭すぎて止まるんですよ。

でも、ご飯を食べてる時とか他の仕事をしてる時に、何かどこかで本のことがあるから、「あ、こういうことなんじゃないか」みたいになって、また進めたりして。それが厚みになるような気がします。

けんすうさん「ロジカルモンスター」だから、3,000字だったら何でもそれっぽくできるんですよ。「あ、それ正しいわ」って思わせることができるじゃないですか。10万字だと、たまに「ちょっとここで無理があるかな」と思って止まるから、それは必要なプロセスだなぁと思っています。

けんすう:最初のところのロジックはかなりできて、山は超えたと思ってるんですけど、最後の着地が(まだで)。「発酵」って言葉は良い言葉だと思うんですけど……。

箕輪:「発酵」していないと、ブログを読んでるみたいになるんですよね。矛盾を乗り越えた先で、自分が思っていない着地の仕方をした時に、売れる本になる気がするんです。

けんすう:そうですね。

箕輪:ダメな本というか熱量がない本って、思っていることをそのまま書くから、書いている人も飽きるし、読んでいる人も飽きるという……。

ラスト10分なので、もしここにいる人で(質問したい人がいれば)手を挙げてください。

質疑応答1:センスの磨き方はあるのか?

質問者1:今日の話はすごく参考になりました。特に「意味がある」から「意味がない」という話が、個人的には(参考に)なって。自分のやりたいことを真面目に語ろうとすると、どうしても真面目にやりたくなっちゃうんですけど、逆に「自分らしくない」と思っているところがあるなぁと。

今回の「プロセスエコノミー上級編」のところですけど、「ある種、センスだ」という話だったと思います。受講者からすると、センスで片付けられてしまうと、再現性がないのかなぁと思ってしまって......。

センスの磨き方はあるのかどうか? エンタメの意味でいうと、お笑いとかそういうのを見たほうがよいのか。そのへんって、どういうふうにすればいいのか聞いてみたいと思いました。

けんすう:すごく良い質問ですね。僕らも「センスで片付けたら元も子もないじゃん」と思っているので、おっしゃるとおりなんですけど。

もう少し正確にいうと、たぶん、みんな"絶対的な位置"で話すんですよ。「自分はこうだから、こうしたい」みたいな。

でも物事って、見る側は、いろんなものがある中の"相対的な位置"で判断するので、「位置関係を意識しないと、うまくいかないですよ」ってことをたぶん言っているんですよね。

箕輪:たしかに、たしかに。

けんすう:「自分はこうだから、こう発信する」みたいなのでやっちゃうのって、"絶対的な位置"を取っている行為なのです。

店を出す時って、ある程度の人通りとか家賃とかいろんな要素を考慮すると思うんです。相対的にちゃんと見る。

そこで「俺はここに住んでいるから、ここに店を出す」ってやっちゃっても、だれも来てくれないじゃないですか。そんなイメージですね。

質問者1:その「位置」というのは、ターゲットとペルソナに近しいことですか? 「全体的にウケる」という相場的なところを狙いに行くより、「だれかこの人にウケたほうがいい」みたいなのがいいのかなと。今の位置づけ(の話)はそういうことに近いのかなと思うんですけど、ニュアンスは近いですか?

けんすう:あー、それもありますし、どちらかというと「ポジショニング」のイメージかもしれないですね。

箕輪さんと同じことをやった編集者がいたとして、たぶんダメじゃないですか。僕が編集者だったら、「Web3に特化した編集者」にして、「すべての本はWeb3的にやります」と言ったりして、ポジショニングを取りそうだと思うんですよね。

箕輪さんが成功したってことは、そのポジションには自分は絶対に行けないから、箕輪さんとは反対側に行こう、みたいな。「プレイヤー同士の位置関係」のような感じですね。

質問者1:「空いているポジションを、狙いに行く」みたいなことですか?

けんすう:そうですね。生物の進化って、実は良い具合に進化していくわけじゃなくて、空いてるところを埋めていくだけらしいんですよ。この高さの草、この高さの草とかで、草も高さが分かれていて。要は動物の身長によって「ここは食われない」「ここは食われる」とか、いろいろあって決まるらしいので、そのイメージですね。空いているところでやらなきゃいけない。

箕輪:補足すると、もう1個あって。けんすうさんが最初に言っていたことに近いんだけど、独りよがりにならないために大事なのは、「そもそもだれも興味がないよ」というところからスタートすることだと思っています。

僕とか、自信満々で確信めいたことを言うキャラだから、そう見られがちなんだけど、意外と最初は「そもそもこんなの、だれも買わないし」くらいからスタートしていて。

世の中みんな善人でもなければ暇人でもなくて、それぞれ人生がある中で、こんなの買ってくれるわけないじゃんって思うと、「そんなキレイごと、ぶっちゃけだれも興味ないよね」とか、けっこうシビアに見れるんですよね。

自分で「こうだ!」って思うと、「なんで、こんなすばらしい話をみんな聞かないんだ」ってなっちゃって。「いや、みんなそんなすばらしい話、好きじゃないから」みたいな(ことになる)。その「冷静な客観視」と「人の気持ちを考える」のは、常にやっています。

質問者1:なるほど。ありがとうございます。

質疑応答2:LGBT当事者として、どう発信していけばいいか?

質問者2:僕は今トランスジェンダーで、もともと女性として生きてきました。今まではストーリーがある中で、超主観で発信して反応してもらって……。お涙頂戴的なストーリーを書こうと思えばいくらでも書ける中で、ここからマスに向けて、インフルエンス力をもっとつけていきたいタイミングです。

ポジションでいうと、そこってガラ空きといえばガラ空きなんですよね。「オネエ」といわれる人たちは、けっこうマスにはウケるんですけど、逆のパターンの「オナベ」というポジションは、あまりマスウケしなかったり、あまりいないポジションなんです。

箕輪:たしかに。

質問者2:ですよね。一度テレビ関係の人に聞いた時に、「『元男』はディスっても許されるけど、『元女子』は女性差別的な要素が入るから、あまりおもしろくできないんだよね〜」みたいに言われたことがあって。

けんすう:へぇ~。おもしろい。

質問者2:僕も別に、LGBTの当事者で「かわいそうな人」「困っている人」として発信したいわけじゃないので......。それでいうと、独特のアイデンティティはあるんですけど、そこからマスに向けてだと、どんなところを意識したらいいんだろうなと。「ウケない」ってところは確かにあるなと、すごく感じていて......。

けんすう:あぁ、なるほど。今、マンガとかでは何が起きているかというと......。10年くらい前は、ゲイやLGBTが主人公みたいなことって、すごくホットな話題だったんですけど、今はそういう人が出てきても、言及されないんですよ。つまり、「主要なトピックスにならない」というのがあって。

『ワンピース』でやっていた「ワノ国編」でも、2人くらい出てきたんですけど、ほぼ突っ込まれていないんですよ。

箕輪:突っ込むこと、ネタにすること自体がNGになっているということですか?

けんすう:そうですね。10年くらい前の『ワンピース』だと、ネタにしてたんですけど、(今は)そういう感じになっていて。

要は「普通だよね」ってなっているので、メイン料理ではなくて、調味料的にしておくほうがいいのかなと思っています。

メインのストーリーがあって、たまたま見た時に「〇〇さんってトランスジェンダーなんだ。へぇ~」くらいで使ったほうが、ぜんぜんいいんじゃないかなというのはありますね。

箕輪:めちゃめちゃ鋭いわ。ホントそう思う。それをネタにするのは、自分が傷つかなくても、同じことで「ネタにできない弱さ」を持っている人にとっては、加害だと言われそう。

けんすう:そうですね。それもありますし、逆に言うと、「トランスジェンダーです」「同性愛者です」という人の話を僕はけっこう聞くことがあるので......。

「僕、実は島根出身なんですよ」「僕、今短いのでわからないと思うんですけど、実はずっと天パなんですよ」って言われているのと同じ感覚が若干あります。

「それを聞いたとて、ピンと来ない」と言ったら失礼ですけど......。当事者にとっては重要なことだとわかっているんですが、AB型の人くらいいるので、そうなんだ、くらいで終わってしまう話題のように感じてしまうんです。

箕輪:めちゃめちゃわかる。

けんすう:100人の天パの人から「天パなんです」って相談を受けたら、ピンと来なくなっちゃうじゃないですか。慣れちゃうというか。

「そういう人ってぜんぜんいるよね」になっちゃっているので。そこが主題というのは、マーケティングという観点において効きづらくなっている感覚はありますね。

箕輪:めちゃめちゃわかるわ。スナックでネタにするくらいだったら、「へぇ~」って言って、最初の30分くらい盛り上がるけど、その一点突破だけでメジャーになるというのは(難しい)。確かに(そういう人は)いるっちゃいるって話かもしれない。

けんすう:(笑)。そうですね。さっきの、「海外旅行で危険な目に遭った話」と同じだと思うんですけど。「銃向けられたんだよ」という話って、当事者からしてみると、めちゃくちゃ重要なことだけど、銃向けられた人の話をそこそこ聞いちゃってると、「マジ、ヤバくない?」って反応がそんなにできないという。

そんな感じかもしれないですね。

箕輪:わかる。だから、自分にとっての「大事(おおごと)」は、実際に大事なんだけど、世の中にとっても他人にとっても大事かというと、そうじゃない、というのに尽きるかもしれないですね。「相手が発信したいネタ」のほうが貴重だという。

けんすう:そうですね。僕この前、左の奥歯の神経を抜いて、めちゃくちゃ痛くて大変なんですけど、それ聞いてもぜんぜんおもしろくないと思うんですよ(笑)。

箕輪:「へぇ~、大変ですね」っていう(笑)。

けんすう:みたいなことがけっこうあります。「トランスジェンダー」とか「海外で危険な目に遭った」とかは、刺激が強いからよく語られるものが多くて。メディアを見たら、トランスジェンダーの人をけっこう見かけちゃっている感覚が、たぶんあるんですよ。

なので、もしかしたら、そこは武器じゃないと思って。でも調味料としては魅力的なので、「どこかでちょっと使えるかも」くらいのほうが、うまくいくかもしれないなと思いました。

箕輪:めちゃくちゃ神回じゃないですか? やっぱり、けんすうさんすごいわ。

質問者2:ありがとうございます。調味料で考えてみます。

けんすう:はい、ぜひ考えてみてください。

箕輪:確かに、俺もそう思ったわ。ずっと一緒に戦略考えちゃってたけど、言うとおりだわ。

けんすう:ありがとうございます(笑)。

箕輪:ありがとうございます。またけんすうさん、よろしくお願いします。みなさん、ありがとうございました。


というわけで、いかがだったでしょうか?

おもしろかったら、ぜひともTwitterなどで感想を書いてくれると泣いて喜びます。

では!

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