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NFTがスポーツ業界の課題解決につながる?太田雄貴さんと対談してみた

こんにちは!

今日は、フェンシング選手であり、現在はWeb3プロジェクト「Sports3」を手がける太田雄貴さんとのTwitterスペース配信の書き起こし記事を掲載します。

Sports3は、太田さんが株式会社ドリコムとともに運営しており、Web3の技術によってアスリートの課題解決を目指しているそうです。

ドリコムの担当者・戸高陸さんも参加し、NFTでいかに業界課題を解決していくかというテーマでお話ししました。

きせかえできるNFT「sloth」、一般販売中です。

この記事の内容は、Twitterでの録音で聴くこともできます。

Web3の広がりが遅いのは「よく分からない」から

太田:けんすうさんがNFTに興味を持ち始めた頃に、僕は(ドリコム代表)内藤さんやベリロン(VeryLongAnimals)のAkimくんと一緒にいて、内藤さんが「けんすうを巻き込まないとNFTは広がっていかない気がするから何とか広げたいんだよね」とおっしゃっていて。

この一年間のNFT業界やWeb3の業界について、けんすうさんがどう思っているのかに興味があります。

けんすう:そうなるかなと思ってはいたんですけれども、やっぱり広がっていくのは本当に遅いなと感じています。

太田:けんすうさんは最初の段階から何がネックになると思っていたんですか?

けんすう:足りない要素がたくさんあるんだと思います。まず、始めるのに概念の勉強が大変だし、文化的な壁も大きくて特殊な文化がありますよね。

アローリストだギブアウェイだとか言われてもよく分からないし、ベリロンを買ったらイケてると思われるけど、こっちのプロジェクトは全然イケてないとか、パッと見た感じでは評価が分からなくないですか。

価格も、こっちは50万円だけどこっちは1000円でも売れない、など全然違いますし、難しいですよね。

太田:本当に分からないですよね。たまたま(ナナメウエ代表)石濱さんと内藤さんがメンター的な存在だったので軸が固まったんですが、普通、そういう人が周りにいなかったら、全部一緒に見えると言ったら怒られちゃいますけど、「NFTなんてただのデジタル画像じゃん」と思ってしまいがちだなと。

けんすう:論理的に説明できる部分があまりないんですよね。「ベリロンって何で人気で何で高いんですか?」と聞かれても、よく分からないんです。

太田:内藤さんは「ミーム」だと当時言っていましたね。でも、ミーム的なノリに何十万も払えないですよね。

けんすう:そうですね。文化の流れや音楽、ファッションに近いものがあると思いますが、やはり理解しにくいです。

戸高:ブロックチェーンって思想ドリブンだったりするじゃないですか。パッと見よく分からないし、小難しいことを言っている人がたくさんいると思ったら、なんか長い絵のNFTが人気だとか、そういう難しさもありますよね。

けんすう:そうですね。Web3やNFTに特にすごいものがあるわけではなく、プロジェクト概要や目指しているビジョンでお金が集まっちゃったりするので、より話がややこしいなと思って見ていました。

太田:なるほど。

戸高:ChatGPT等のAIとの違いを感じるのは、AIは生産性を一気に向上させる側面があるので、マスアダプションがこんなにも早くなったんだと思っています。

一方、ブロックチェーンはあくまで技術インフラなので、消費者にとってのニーズが分かりにくいというか、現状そんなにないんですよね。

「あ、これブロックチェーンなんだ」と後から気付くような、インターネットのマスアダプションに近い形なんだろうなと思いながら、僕はこのWeb3界隈にいます。

けんすう:そうですね。デジタルデータの所有が課題解決にどう結びつくかで言うと、まだ皆さん困っていないので、まだ先の話かなと思っています。

太田:けんすうさんくらい思考があって先が見えていて、なおWeb3やNFTに張っているのは、未来予測的にどのような世界観になる、とかがあったりするんですか?あくまで予想だと思うんですけど、先に見える未来というか。

けんすう:(gumi代表の)國光さんという、Web3に詳しい人が言っていることに同意なんですけど、「デジタル空間とリアル空間の主従関係が、そろそろ逆転するだろう」って言ってて。僕も会社のメンバーとリアルで会ったのがまだ今年一回とかなんですよね。
ほとんどSlackとZoomでやり取りしているので、これもほとんどデジタル空間での付き合いといっても過言ではないし、LINEでの付き合いの方が多い人とかの方が、多いと思うんですよ。

そのうちVR空間とかが使いやすくなるとそっちによりいくので、それが起きてから、データの所有ってどうしようってなると思っています。

太田:けんすうさん的に、いつぐらいになるんですか?

けんすう:正直、全然分からなくて、未来がこういう風になるというのは予測できますが、「いつ」かというのは難しいですよね。

太田:AIに関しては、ChatGPTの登場以降、世の中の関心と振れ幅がすごいですね。

けんすう:そうですね、だから、GPT-3がやばいと言われていたのは2020年ぐらいなんですよ。そのときはIT業界で話題になっていましたが、一般的にはまだ知られていなかったですよね。

GPT-3.5を使ったサービスが出てきても、一般向けにはまだまだでした。ChatGPTみたいなわかりやすいアウトプットが出た瞬間だったので、くるときは一瞬だし、それまでゆっくりですよね。

太田:コンシューマーに届くものになってくると、自分ごと化しやすくなるんですかね。

けんすう:そうですね、届くのは一瞬ですよね。

太田:今のメタバースはまだ過疎っていますが、フォートナイトとかのゲームの方が、デジタル空間上で目的があって良いと思うんですが、どの辺りでメタバースとゲームが合流するかが気になりますね。

ちなみにけんすうさんは、メタバースの定義はどう考えていますか?

けんすう:私のメタバースの定義は、ゴーグルをつけることで身体感覚を得られるデジタル空間です。

太田:「レディ・プレイヤー1」とかの、ハードウェアをつけるか、脳に直接アクセスする感じですか。

けんすう:そうですね、そんな感じです。

戸高:現実と錯覚するのに近い体験ということですね。「あつまれ どうぶつの森」とは違いますよね。

けんすう:そうですね。それはゲームの世界という感じがします。ゴーグルつけて、目の前で撃たれた時に、体が自然に避けちゃうみたいな。

太田:なるほど。

戸高:Appleがスマートゴーグルとかを開発すると、マスアダプションの可能性が高まるかもしれませんよね。

けんすう:そうですね、その可能性はあります。

NFTの向き不向き

太田:slothの話の前に、この前けんすうさんがTwitterで「チケットはNFTに向いてない」とおっしゃってたことについてお聞きしたくて、詳しく教えていただけますか?

けんすう:アプリやWebの方が便利だと思ってるので、普通のお客さんにNFTの説明をするのも大変じゃないですか。

二次流通に関しては、確かにNFTが役立つとは思いますが、それ以外のメリットがないので、乗り越えさせるほどのメリットってあるんだっけと思っています。

太田:そうですよね。例えば、2年後にジャニーズの若手のライブの日が決まっていて、そのチケットが先物のように価格が上がる可能性があるとしたら、二次流通が主になりますが、そこまで転売する人がいるのかという問題もありますよね。

けんすう:そうですね。チケットは法律的にも手を出しづらく、問題になりやすいですし、ジャニーズのチケットが例えば80万円とかになったら、ファンもネガティブに捉えるかなと思うと、やらない方がいいかなと思っています。

太田:なるほど。逆にゲーム以外でNFTを活用している人も多いと思いますが、けんすうさんが考える、まだチャンスがある産業や分野はどこでしょうか?

けんすう:ゲームの範疇に入るかもしれませんが、私たちが開発しているのはバーチャルペットのようなものです。例えば、「sloth」というナマケモノのNFTで、着せ替えができるものを作っています。

けんすう:これで本当にバーチャルペットを飼う概念が10年後くらいには現実になるかもと思ってやっていますね。

あとは、証券や資金調達に関してもNFTが役立ちますし、例えば、アニメの制作委員会みたいな感じで、NFTで資金調達して、成功した場合に配分するといったことが可能になると思います。

戸高:酒樽やウイスキー樽のNFTもそうですね。事前に資金を集めることができます。

けんすう:そうですね。

太田:最近、権利だけが流通できるという点で、NFTに意味があると感じてます。

例えば、ゲームやクラウドファンディング2.0のようなものだと思いますが、まだ実装されていない部分も多いですよね。

それに、すべてをNFTで行う必要がないような空気感があります。

今日はちょっとお悩み相談室のような雰囲気ですが、けんすうさんがWeb3やNFTに可能性を感じた理由を教えていただけるとありがたいです。

けんすう:そうですね。人類の歴史上、株式会社の発明はすごくて、それによって、初めて人類が一つの目標に対して組織化することができました。

今まで村とか国とかしかなかったのが、一つの方向に向かえるのもすごいし、株式会社の仕組みによって、お金を出す人と実行する人が分離できたのも大きかったです。

ただ、今の株式会社の仕組みは重くなっていて、労働者保護とかも多いですよね。Web3の世界では、まだまだ規制がないので、大胆な組織が増えそうですよね。

太田:グローバルレベルでWeb3がうまくいっている会社があったりするのでしょうか?

けんすう:まだ最終的には出ていないと思います。現在のWeb3は、インターネットでいう1995年から97年くらいの感じです。

面白いホームページや匿名で掲示板があったりはするものの、2ちゃんねるとかはないですし、ブログのような概念はまだないですね。これから出てくると思っています。

Web3の現状を歴史から振り返る

太田:インターネットの発展と同じように、Web3もアメリカから日本に入ってくるのでしょうか?

けんすう:そうですね。インターネット昔話なんですが、90年代から2000年前半にかけて、アメリカで流行っていたものが日本に入ってきたとかは実はないんです。日本の中でやられていたんです。

その頃のインターネットは世界各国で雑多でしたね。

戸高:それは、各国のインターネットが繋がっていなかったからですか?

けんすう:そうですね、つながっていなかったのかもしれません。

検索エンジンもGoogleではなく、NTT系のものが主流でした。日本のサイトしか見れないことが多かったので、分離していたのかもしれません。

戸高:情報がサイロ化していたという感じですか?

けんすう:そうですね。Web3もそんなイメージで見られています。

太田:なるほど。ちなみに、Web3におけるレイヤー1やレイヤー2の競争はまだ終わっていないのでしょうか?

けんすう:まだ、競争は続いていると思います。GoogleやFacebookが出る前も、「もう勝負はついた」と言われていた記憶があるのですが、それが覆されましたからね。

検索エンジンも、Yahoo!のような人力のものから、ロボットのものまであって、ただ、検索は便利だけどポータルサイトの一機能で、ビジネスにならないよねというイメージでした。

太田:過去のインターネットの歴史を振り返ると、勝者と敗者の差はプロダクトの質か、人間の能力の差なのでしょうか?

けんすう:能力も関係していると思いますが、1000社が1000通り試した結果、うまくいくものが見つかるイメージですね。

検索エンジンでも、Googleのみが成功するモデルや検索技術を見つけたイメージです。

太田:その後、Googleを完全に真似したものは出てこないのですか?

けんすう:まあ出たときに遅かったとかはありますよね。

太田:もう届かないというか。

けんすう:そうですね。ネットワーク効果が効いてしまうと、Microsoftがいくら投資してもダメだということですね。

太田:それが今回、MicrosoftとOpenAIがまさかのタッグで、逆にGoogleがピンチになるという。

けんすう:そうですね。イノベーションのジレンマ的なものがありますよね。

料理動画のときに思ったのですが、レシピは絶対に動画で見た方がいいというのは、事業者も分かっていて、私もハウツーサイトを運営していたので、そう思っていたんです。

いろんな料理動画を試した結果、やはり上から撮影して早送りするのが良かったんですけど、それが発明されるまで、ダメな料理動画がたくさん撮られてたんですよね。

みんながその方法になり、クラシルなども生まれました。

太田:なるほど。

戸高:あれが出てからの広まりが本当に早かったですね。

けんすう:そうなんですよ。あれを発明した人は確かにすごいですが、他の人が失敗しているからこそ、というのも感じますね。

二次流通中心のNFTの現状はいびつ

太田:なるほど、ありがとうございます。今回はちょっと、slothというナマケモノのNFTや、Sports3というスポーツとNFTを使った活動について話していきたいんですけど。

slothはどういったことができるのでしょうか?

けんすう:はい、slothは「ナマケモノだけど働き者」というコンセプトのキャラで、NFTで着せかえができます。

そして、本体と着せかえのNFTが別で、着せかえの中でも衣装やアイテムが分かれています。サイト上でそれらを合成して、一つのNFTにまとめることができます。

太田:でも、それが非常に面白いですよね。いろんなところとコラボもされているし。

けんすう:そうですね。様々な大手企業と話して、NFTに参入しようと考えた際に、マーケティングがちょっと特殊なんです。そのため、NFTに参入できないような状況になってしまっています。

そこで、slothとのコラボによって、NFTに参入しやすくなるような入口を作れるといいんじゃないかなと。

太田:このペットで遊べるんですか?

けんすう:そうですね。今、簡単なゲーム機能を作っていますが、デジタルペットのようなものを目指しています。今は、ChatGPTのAPIを使っておしゃべりできる機能も開発中です。

戸高:けんすうさんのツイートで、slothの着せかえ機能があることで、NFTの価格判断が難しくなることを狙っているという話がありましたね。

けんすう:そうですね。基本的にNFTは投機として扱われやすくて、お金の話って重力が強いので、「5万で買ったものが、15万で売れた」とかの話ばっかりになりがちです。

それって初心者には敷居が高く、面白くないので、そうでないものを作りたいと思ったんです。

ただ、評価基準が分からなすぎて、結局はお金の基準がNFTのメインとなってしまうので、着せかえ機能を利用して、比べて評価することが難しくなるようにすることが狙いの一つです。

太田:アイテムにはレア度があったりしますか?

けんすう:アイテムにはレア度はついていませんが、コラボアイテムなどは限定数が設定されていますね。

戸高:パーツの種類によって、コラボの仕方も変わりますよね。

けんすう:そうですね。それも狙いの一つです。実際に今、本体よりも衣装の売り上げが大きいので、一度売って終わりというビジネスにはならないかなと考えています。

太田:実際には、投機目的の人って多いんですか?

けんすう:slothは本当に二次流通されていなくて、二次流通って何だという人もいますね。

marimoも初心者向けに作ったのですが、初日には二次流通が100ETHとかを超えちゃって、価格が大きく上がったりしたんですけど。

戸高:それはなんか嬉しい反応ですよね。

けんすう:そうですね。

太田:それはプライマリーで売り続けているからなんですか?

けんすう:それもあると思います。

一時、アローリスト(※NFTの有線購入権のこと。ALとも呼ばれる)をたくさん配って、はけた後に一次流通ですぐ完売させて、「完売しました!」みたいなマーケティングがあったんですけど、普通にちょっと不便じゃないですか。

「洋服を売ったけどすぐ完売しました!皆さん、メルカリで買ってください」って言われても、「何で?」ってなるじゃないですか。

戸高:フィジカルに置き換えると、相当いびつな感じがしますよね。

けんすう:そうなんですよね。だから普通に売られた方がいいかなと思っている派です。

戸高:リビールまで期間があったイメージがありますね。

けんすう:そうですね。でも、一般販売から2週間くらいかな。

戸高:一般販売が長かったんですかね。ちょっとそこが今までのNFTと違うなっていう体感があったので。

けんすう:ALを持っている人の先行販売から1ヶ月ぐらいですね。ゆっくりというコンセプトなので。

スポーツ業界の課題をNFTで解決したい

太田:我々がやっているSports3という、スポーツ選手とNFTを使った活動について話したくて、けんすうさんにもいろいろアドバイスをいただきたいと思っています。

けんすう:そもそもSports3は、初めての方に説明するとしたら、どういう説明をされるんですか?

太田:ファンと選手が直接つながって、距離を近づけられるような取り組みです。

例えば、日本代表の選手が活躍しても、個人や中小企業ではスポンサーになれないですよね。

でも、NFTを買うことで直接選手の応援につながれば、もっと気軽にスポーツ選手を支援できるのではないかというのが、最初の仮説の元です。

スポーツ業界が抱えている課題をNFTを通して解決できないだろうかというのが、発端です。

引退したアスリートって、寄付に頼るだけでは、1年目や2年目はいいけどずっとは厳しいとか、企業が支援できる仕組みがあると良いとか思ったり、あと実際、スポーツでも種目が違うとなかなか出会えないんです。

選手同士は競技で別れてしまっていますが、同じNFTを持っていることで選手同士も仲良くなり、ファンと選手も近くなるといったことができないかと。

けんすう:いいですね。基本的には、Sports3パスのようなものがNFTとして出ていて、それを持っていると、まずこのSports3という企画に参加することができるんですね。

太田:そうですね。現在はDiscordのコミュニティには誰でも参加でき、あわせてアスリートの方に限定して、Sports3 PassというNFTを配布しています。

今後、Sports3 Collectionという、アスリートとファンが共通のイベントに参加できるようなNFTを発行するのですが、Sports3 Passを持っていると、そちらを早く購入できる権利を付与する予定です。

Sports3 Collectionでは、現代アートのアーティストの方と組んでNFTを出していくというやり方です。

けんすう:なるほど、なるほど。

太田:ユーティリティ(※NFT所持者に提供される付加価値)としては、選手と一緒に試合の応援に行くとか、実際にSports3の選手たちの試合を一緒に見に行くという企画を考えている最中です。

今、戸高さんはじめドリコムチームと一緒に作っている感じですね。

けんすう:なるほど。僕、大学生の頃にアマチュアスポーツのサイトをやっていて、当時インターネット上で野球やサッカー以外の情報がなかったんですよ。

で、セパタクローとかで世界3位になっている人がいるのに、全然載ってないので、そういう選手のブログやニュースを探して投稿していて、当時月間800万PVまで伸びたんです。

アマチュア選手はスポーツがマイナーなだけで食べていけていなさそうだし、そういう人たちを株みたいな感じで応援できないかなというのを作ろうとして、挫折したことがあるんです。

なので、Sports3はめっちゃいいなと思いました。

太田:まだ僕らも始まったばかりですが、ただ試合情報をまとめるだけでもニーズはあると思います。

けんすうさんが昔それをやっていたと聞いて、私たちも頑張らないとなと思いました。

けんすう:でも、Web3だとできると思っていて。

実は僕たちも一時期、無料漫画を掲載していた「アル」っていう漫画サイトで、980円を払って有料コミュニティの「アル開発室」に入っているメンバーが、お金を払っているにもかかわらず、一生懸命作業をしてくれていたんです。

我々はメンバーが記入したスプレッドシートを読んで、サイト上に掲載するっていう作業をしていたんですけど、漫画ファンの人たちだけで回っていたんですよね。

ファンの人たちも漫画業界に貢献できることを楽しんでくれていて、毎日熱心に出版社のサイトを人力でクロールして、無料漫画の情報を掲載していて。

求められてるのってこっちだなとすごい思いました。マイナースポーツでも、日程をまとめたり情報を届けたりしたい人がたくさんいそうなので、すごくいいんじゃないですかね。

コミュニティの力を借りてサービス運営する

戸高:そうですね、今私たちのコミュニティでも、さまざまな情報を取りまとめてシェアしたり、Sports3に参加しているアスリートの情報をシェアしたりする活動を、皆さんが好きにやってくれる状況がいいなと考えてます。

ですが、まずは熱量を高める必要がありますし、心理的安全性を確保して、みんなが話しやすい雰囲気を作ることが大事だと思っています。

けんすう:確かに。ただ逆な気もしていて、そういう活動があるから熱量が上がるんじゃないですかね。

戸高:鶏と卵のような話ですけど、モチベーションのある人を連れてくるか、モチベーションを高めるか、どちらが先か分からないんですけど。

どのようなきっかけがあれば、熱が生まれると思いますか?

けんすう:例えば、Q&Aサイトを作るのは簡単で、人って質問されると答える傾向があるので、どんなQ&Aサイトでも回答率は簡単に99%に達することが多いんです。

というので、人は作業を振られると、反射的に取り組む傾向があるので、皆がやりたいと思うサイズの作業を考慮してあげることが大切だと思います。

戸高:なるほど。

けんすう:例えば、普段の生活に満足していないと感じたり、仕事で評価されづらいと感じている人が、プロジェクトメンバーやコミュニティの人から褒められたりすると、充実感を感じて嬉しくなるので、そういった場をちゃんと設計してあげることが大事だと思います。

太田:ちなみに、けんすうさんが取り組んできたことの中で、その仲間をどのように集めることができたのでしょうか?

けんすう:アルの場合、かなりテクニカルすぎて参考にならないんですけど、漫画村騒動がありました。

まず、漫画村は違法サイトなので、検索の上位には出ないんです。

アルはもともと「漫画ビレッジ」という名前で運営していて、これは略すと漫画村になるので、Googleから漫画村と認識されて、検索で一位を取れたんですね。

それでプレスリリースを打ち、Yahoo!のトップに載ると、出版社の人が「違法サイトに抵抗している勢力があるらしい」というので注目してくれて。

そこから一般の人も集めて、漫画村のような悪影響を与えるものではなく、合法的に漫画業界を盛り上げるために、多くの人がコミュニティに参加してくれたという流れです。

それはさておき、Sports3の活動は応援しやすそうなので、太田さんがテーマを区切って募集するだけで、人が集まりそうですけどね。

太田:それって具体的な要望ですか?

けんすう:そうです。例えば、「マイナースポーツの試合日程が分からないと困っている人がいるので、ボランティアで情報を集めてくれる人いませんか?Googleフォームです!」とかで募集すれば、「私はセパタクローに詳しいですよ」みたいな形で人が集まって、Discordで活動してもらえば、かなり人が集まりそうですよね。

太田:1競技につき1人でも参加してくれると助かりますね。

けんすう:そうですね。例えば、「今、女子バドミントンの情報が足りないんです」と言われると、詳しい人は反応しそうですけどね。

太田:確かに、スポーツというだけだと範囲が広すぎますが、具体的に競技名まで言われると、私も参加できるかもと思ってもらえるかもしれませんね。

けんすう:まさにそうです。火事のときに「誰か助けてください」って言うと誰も助けてくれないけど、「そこの赤い服の人助けてください」って言うと絶対助けてくれるっていう法則があるので。

「これは自分の助けが必要だ」と思ってもらうのが大事ですね。

太田:確かに、自分にできることだと思えば、手を挙げやすくなりますね。

けんすう:そうですね。フェンシングでメダルを取ったことがある人と言われたら、自分しかいないんじゃないかと思ってしまいますよね。

太田:確かに、確かに。じゃあ、私たちも声をかけてみましょうか。

けんすう:はい、それがいいと思います。

スポーツライターになれる場を作る?

けんすう:ちなみに今、一番困っていることって何ですか?

太田:今、Discordに300人いるんですけど、選手たちに積極的に発信してもらうのが難しいんです。

選手たちも練習があるし、彼らに手を動かしてもらうのはなかなか難しい状況です。

ファンと選手を近づけたいのですが、選手たちとの距離感があるように感じます。

みんなで楽しむ雰囲気という感じよりも、選手たちは自分のブランドや名前を売っている方がおおいので、Web3やミーム感にはまだ慣れが足りない状況だと思います。

私たちのコミュニティについて、どのような形が理想なのか、常に模索している感じです。

けんすう:確かに、選手の方も忙しいですし、不慣れだと怖いですよね。

太田:特にDiscordは慣れていないと難しいですよね。

戸高:それが大きなポイントだと思います。

今回、Web3やNFTに関心がある人よりも、スポーツにおける社会課題解決に興味がある人たちが中心になっていて、そこに関心がある人を集めていて。

そのため、DiscordやNFTに不慣れな人が多く、その方たちがDiscordで何かをする動機がなかなか生まれないんです。

そこの体験を届けられていないというのが、おそらく一番大きい問題だと思います。

それはアスリートの方にも、サポーターの方々にも当てはまっていて。不慣れなDiscordで積極的に発言するというハードルを超えられていないという状況があります。

けんすう:スポーツ業界や特定の競技に貢献したい人たちを集めないと、難しそうですね。

太田:今日は本当に良いヒントをいただきました。

現状だと、範囲が広すぎて皆が迷っているように感じました。競技ごとに絞ることや、Sports3がスポーツメディアとしての役割を果たしていけるといいんじゃないかと思いました。

選手のインタビュー記事などを出せれば、多くの人に届くことになり、選手にとってもメリットがあると思いますし。

けんすう:私もスポーツメディアをやっていたとき、セパタクローの大学生選手権とかに行ったんですけど、観客はほとんど身内だけだったんです。

でも、写真を撮って記事を書くことで情報を広げる仕事はやっぱり楽しいですよね。

コミュニティの中には、自分なら記事が書けるという人は少ないかもしれませんけど、場を作ってあげるだけで盛り上がる可能性がありますね。

戸高:サポーターがアスリートに取材して、記事を発信するというのはいいアイデアですね。

けんすう:そうですね、総合メディアのようなものですね。試合を観戦し、感想を書くなどですね。

太田:Sports3のホームページがあるので、そこで展開すればいいですよね。

けんすう:スポーツ好きな人なら、スポーツ分野のライターになりたいという人は多くいるでしょうから、そういうことができる場所になると、とても魅力的だと思います。

プロ引退後のキャリアをいかに支えるか

戸高:スポーツ選手が現役の頃になかなか気づけなかったような視野とか、将来を見据えて現役時代にやっておくべきことを得られる場というか。

交流を通じて、スポーツ選手がそういったことに気づける機会を提供するっていうのも、コミュニティの一つの役割かなと思っています。

けんすう:そうですね、やっぱりプレイで結果を出せばいいという考えになりやすい構造になっているんでしょうね。

多分そんなに間違っていないんですけど、引退後に収入源がなくなっても、誰も責任を取ってくれないみたいな状態に陥りやすいのかもしれないですね。

太田:調子がいいときって、聞く耳を持てないんですよね、選手って。自分もそうだったから。

みんな「俺はお前とは違う」みたいに思ってしまうんですよね。俺は違うし、俺は特別だから絶対引退後も大丈夫だとかで、大体なんか
いろいろ言うんですけど。

僕も(日本フェンシング協会の)会長だったときとかにいろいろ言っていたんですが、後になって選手たちから、「あのとき先輩が言っていた意味が痛いほど分かります」と連絡をいただきます。

戸高:いろんな角度からそういったことを考える機会を提供するのが大事なんですかね。

それは本人の体験もそうですし、他の人からアドバイスされるのでもいいですし。実際に手を動かしてみて気づくことも大事だと思います。

太田:選手によっては、僕が言ってもダメで、けんすうさんが言ったらOKという選手もいるだろうし、直接的すぎると、逆効果になることがあるので、客観性の高い言葉で言われた方が納得感があるかもしれません。

けんすう:Sports3で、選手が自分のグッズを作って売る経験をしてもらうのも面白いかもしれませんね。

太田:それも面白いですね。商品化までちょっと後押ししてあげるというか。

けんすう:そうですね。ファンが喜ぶだろうと思ったものが全然ウケないとか、逆に売れる経験をすると、ビジネス的な感覚が身につきそうです。

太田:そういったことを実社会で試す場所になるのはいいですよね。

実社会で失敗するより、Sports3上で失敗してもらう方が、再起もしやすいでしょうし。

けんすう:選手主催の飲み会のようなものでもいいですね。思ったより集まらないという経験が得られたりとか。

太田:それもすごくいい体験だと思います。選手がSNSで試合の告知をして、ファンを呼ぶのですが、ほぼ無風というか。

でも、工夫が必要です。例えば、10人のグループに1本ラインを入れるより、一人ひとりに10回LINEすると、成功率が全然違うということがあります。

けんすう:堀江(貴文)さんも、お店を立ち上げたり、新メニューが出たときに、僕に1対1のメッセージを送ってくれるんです。

堀江さんはスタッフの手を借りずに、一人ひとりに送っているんですね。フォロワーが200万人もいる有名な人でも、それをやっているからこそ、すごいと思ったりします。

戸高:体験を通じてじゃないとなかなか実感が持てない部分があると思います。

けんすう:そうですね。選手を囲む会を開くときや、サイン会などのコンテンツを用意する際も、その方法によって変わるよねみたいな経験は、引退後に役立ちますよね。

スポーツ選手が提供する価値とは?

太田:それでいうと、ファンが自分についているのか、チームについているのか、結構混ざってしまうことがあるんです。

賞金をもらっている間は、ファンサービスをしたくないという選手もいるでしょう。

男子と女子の競技で、女子の方が人気が出て、男子は人気が出ないと、スポンサーがつかないこともあったりとか。

スポンサーやファンが求めていることを考えることが大切なんですよね。

けんすう:そうですね。意識するのは難しいですが、大切なことですね。

太田:そうですね。賞金が出るというだけで、選手は満足してしまうことが多いですが、長続きしないことも多いので。

だから、選手たちが個人事業主のような感覚で、自分に求められていることを考えるきっかけができるといいなと思います。

けんすう:極論、たとえ負け続けても、応援したいと思わせる選手なら、お金が入ることもありますもんね。

太田:そうなんです。例えば、斎藤佑樹くんと僕はたまたま仲が良いので名前を出させてもらうんですけど。

やっぱりユニフォームは売れるし、よく話題になるので、日本ハムファイターズにとっては、彼がいてほしかったんだと思います。

アスリートとして、競技で強いだけじゃない価値をどう作っていくのかという考えが必要だと思います。

戸高:何が社会にとって価値になるかという視点が大事ですね。

太田:そうですね、社会だけでなく、ファンや身内でも良いと思います。

自分が何に対して価値を提供しているのかについて考えるきっかけが作れるといいなと思っています。

目標としては、来年の夏のパリオリンピックで、そこまでにはある程度コミュニティが盛り上がり、私たちのコミュニティに参加している選手たちが活躍してくれることです。

国籍を越えた応援ができると最高だと思っています。

みんなが国を応援するけど、日本代表ばかりが好きだと、クラブチーム単位になっても有名選手以外は見なくなるような状況になってしまいます。

そうじゃなくて、Sports3のNFTやコミュニティに入ってくれる外国の選手も応援するような状況になってほしいですね。

Discordで絡んだことがあるから応援するみたいな状況を作りたいです。

けんすう:オリンピックまであと1年ですし、活躍しそうな選手のインタビューを今のうちにやっておくといいと思います。

活躍すると、そのときになって検索されてたくさんの人が来るので、逆算してやるとすごくいいと思います。

戸高:やりましょう、やりましょう。

太田:ちなみにけんすうさん、大学生の頃は記事のまとめや取材を行っていたんですか?

けんすう:はい、取材も行っていましたし、まとめもやっていました。

例えば、スキーの上村(愛子)選手がまだブレイクしていなかったときに記事をまとめていたら、東京オリンピックで大変注目され、たくさんの人がみてくれました。

太田:確かに、それは素晴らしいですね。

けんすう:スポーツ好きでライターになりたい人たちって募集すれば来てくれるんですが、普段はアクセンチュアとかで働いている頭のいい人たちが集まったりするんですよ。

本業でライターはできないけれどやりたいという人たちがいるので。その人たちは仕事ができるので、何でもできちゃうんですけど、当時はそういった人たちで構成していましたね。

「取材に参加できる」みたいなことは、私が運営していた漫画サイトのほうでもやっていて。

ライターさんたちがある程度書ける力を付けてきたら、取材に参加してもらって、好きな漫画家さんの話が聞けるのですごいみたいになりましたし。

結局その人たちは編集プロダクションみたいな会社を作って独立し、今も結構仕事を回していたり、そこから漫画業界に就職できましたみたいな人が何人も出ていたりします。

Sports3も同じように、「ずっと憧れだったスポーツ関係の仕事につけました」みたいな人が出てくるコミュニティにできると思います。

スポーツ業界とのつながりがない人にとっては大変なチャンスなので、初期から関わっておけば、得するコミュニティになるでしょうし。

そこをアピールできれば5000人ぐらいはすぐに集まるのではないでしょうか。

戸高:その可能性はすごいと思うんですよね。

太田:そうですね。けんすうさんに頼るしかないでしょう。

けんすう:お手伝いできる範囲で頑張ります。

さいごに

太田:戸高さん、最後に改めてプロジェクトの説明を簡単にしていただけますか?

戸高:はい。私たちのプロジェクトは、Discordを中心に展開しているコミュニティで、誰でも気軽に参加できます。

現在、太田さんがアイコンにしているパスのNFTや、コレクションと言ってアーティストとコラボして作るNFTなどがあります。

これらのNFTを使いながら、スポーツの社会課題をアスリートとサポーターが一体となって解決しようという取り組みを行っています。

まだ始まって2ヶ月ほどで、これから立ち上がっていく段階ですが、楽しい部分もあると思います。ぜひ、公式アカウントをフォローして、Discordに入っていただければと思います。

太田:けんすうさんにも最後、slothの説明をしていただければ。

けんすう:はい。私たちはslothという着せ替え可能なNFTを開発しています。

バーチャルペットとして本当に親密さを感じるものを作れると、日本はキャラクター作りが得意な国なので、そこから世界に向けて何かできないかと考えています。

興味を持った人はぜひ買ってみてください。

太田:私もこの後すぐに購入したいと思います。本日はお忙しい中、けんすうさん、本当にありがとうございました。

けんすう:こちらこそ、ありがとうございました。とても楽しかったです。



というわけで、Sports3運営のお二人とお話しした記事でした。

繰り返しになりますが、きせかえできるNFT「sloth」、一般販売中です。

NFTを買ったことがない、という方向けのヘルプページも用意しましたので、こちらもぜひご覧ください。

NFT初心者でも大丈夫!sloth初心者ガイド

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