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自分をストーリー化する物語思考-なぜかWeb3から始まるけんすうx箕輪対談(前編)

こちらの記事は、2022年6月15日開催に開催された「プロセスエコノミースクール第二期 4.5講目」での対談を記事化したものです。編集者の箕輪厚介さんとの対談です。

プロセスエコノミーとWeb3が交差する地点を探るような会話になっています。お楽しみください!

Web3がつくる組織のカタチ

箕輪厚介氏(以下、箕輪):これ、「プロセスエコノミースクール」といって、参加者30人くらいでやっています。第2期は尾原さんが抜けたんですけど、普通に話をして、質問がきている部分で『物語思考』というテーマで何か話せればと思っているんですけど。よろしくお願いします。

けんすう氏(以下、けんすう):よろしくお願いします。

箕輪:まったく関係ない話をしても、いいですか?(笑)。

けんすう:いや~、どうでしょうね???僕はいいんですけど、お客さんがどう思うんでしょうか・・・?僕はいいんですけどね〜。

箕輪:いや、大丈夫なんです。プロセスエコノミーと物語思考的な話は擦り続けていて、みんな100回目くらいなので。敢えて(テーマを)無視して......。けんすうさん、Web3が好きじゃないですか。

けんすう:はいはい、最近話題の(笑)。

箕輪:(笑)。しかも、けんすうさん、キャラ的に好きな気がするんです。今までの歴史を見ても、やっていることを含めて「合ってるなぁ」って......。

単純に、「インセンティブが偏らないこと」がWeb3的なことだと定義すると、「欲望によって駆動される人間の努力」というのが、わからなくもないんだけど難しい気がしていて。

けんすう:良いテーマですね。

箕輪:僕、国光(宏尚)さんの「FiNANCiE」で、「ミノ村」というのをやっているんですよ。「みんなでバッてお金をもらって、村を作ろう」というので、600万円くらい集まったんです。

正直、そのお金を集める力も宣伝も、けっこう僕の力じゃないですか。だけど、そのお金はオンラインサロンやクラファンと違ってみんなのお金なので、みんなのために使うわけですよ。

そうすると、「え、そんなら俺、頑張る必要なくね?」と思っちゃうんです。

けんすう:はいはい、逆に責任が分散しちゃうというか。

箕輪:そうそう。そこって社会主義がうまくワークしないのと同様で、Web3も、資本主義みたいに欲望がエンジンになっているほうが簡単なんじゃないか?という気がするんですけど、どうなんですかね?

けんすう:歴史を見ると、株式会社の発明ってめちゃくちゃデカくて。みなさんの身の回りのもの、ほとんどは株式会社が作っているんですよ。

株式会社ができるまでは、「1つの目的に対してみんなが向かう組織」って存在しなかったんですね。国とか村とか教会は、目的に対してみんなが動くわけじゃなくて、「(ただ)その場にいる人たち」みたいなことだったので。

それが大きな変化なのと、一般論として、株式会社では「お金を出す人」と「実行する人」を分離したという。

箕輪:まさに。

けんすう:当時もけっこう批判されたらしくて。「実行する人がお金を出さないと、責任ないじゃん」って言われていたらしいんですよ。

箕輪:あー、なるほどね。「金出してるだけじゃん」「リスク取ってないじゃん」みたいな。

けんすう:そうなんですけど、株式会社の初めって、「船を出して新大陸を見つける」みたいなことが多かったので、お金持ちは超行きたくないし。船が沈没すると(お金が)ゼロになるから、10億円とか払いたくない。

箕輪:なるほど。

けんすう:1,000万円だったら(払っても)いいというので、(船に乗る人を)100人集めて投資して、「お金はないけどやる気があって、一発当てたい荒くれ者」が常に乗っていく。それで成り立っているのがあったので、すばらしい発明だったなと。

でも株式会社の問題点って、株主と創業者と従業員以外、儲からないことなんです。

箕輪:まさにまさに。

けんすう:箕輪さんが今言った、「俺の力で600万円集めた」というのは正しいんですけど、僕って、Twitterにめっちゃ投稿していて貢献しているのに、Twitterの利益を1円ももらえないんですよね。

箕輪:それもわかる。

けんすう:でも、Twitterみたいなサービスは、絶対に投稿する人が必要じゃないですか。

そう考えると、「サービスを使うユーザーも、リターンがあって然るべきだよね」って流れが必ずくると思っています。

箕輪:なるほど。「自分のアクションに応じて報酬が得られる、中央がない組織」と捉えたんですけど。例えば、「Twitterで投稿しまくったら、何かが戻ってくる」みたいなことですか? 

けんすう:そうですね。

箕輪:そういう、“New Twitter”みたいなものが出てくるってことか。

けんすう:「お金がもらえる」というより、“New Twitter”みたいなのが出てきて、「ユーザーがまだゼロ人です」というときに、箕輪さんが投稿したら、箕輪さんのファンが来てくれるじゃないですか。

箕輪さんからしてみたら、まだユーザーがゼロ人のところに投稿するのって、自分の客を連れてきているので、「俺のおかげだ感」がある。

なので、それを初期からやってくれた箕輪さんには、「New Twitterの株式を10パーセントあげます」ということに近いですね。

(注:Web3においては、実際は株式ではなくて、トークンと呼ばれるものを使う)

箕輪:あー、なるほどね。

けんすう:そのTwitter社の価値が1兆円になったら、箕輪さんは1,000億円の価値を持っているということになるわけです。

箕輪:それこそ、最初のユーザー獲得のインセンティブ設計としては、めっちゃ強いのか。あと、アクティブにさせるってことか。

けんすう:そうですね。プロセスエコノミーとちょっと近い話でいうと、昔「nanapi」というハウツーメディアをやっていた話をします。

このサイトは、最初はCGMで、「好きだから、楽しいから投稿する」というかたちになっていました。

この時は、めちゃくちゃクオリティは高かったけど、投稿する人が少なかったんですね。具体的にいうと、CGMって1パーセント投稿すれば、まあまあ良いほうだと言われるくらいです。ここにいらっしゃるみなさんだと、Wikipediaを見たことがあっても、投稿した人はかなり少ないと思うんですよね。

そこで、投稿数をあげるために、「1投稿で300円を払います」というのをクラウドソーシングでやったんです。当時はまだクラウドワークスとかが出る前だったので、自分たちで作りました。

そうしたら、突然、月に1,000本とか記事が投稿されるようになったんですね。

「これ、めちゃくちゃ来たじゃん!」と思ったんですけど、みんなだんだん「300円で働いてもいい、ギリギリのクオリティ」を投稿していくようになったんですよ。

箕輪:なるほどね。損したくないですもんね。

けんすう:損したくないんですよね。

すると、15分くらいで書ける記事ばっかりになるので、記事としてはつまんないんですよ。

箕輪:逆にお金を与えることによってね(笑)。

けんすう:そうですね。当然、次に考えるのは「PVに応じて、報酬を上げる」なんですけど、そうすると、炎上記事とかを書いたほうが得になるんですよ。

箕輪:ああ、わかるわ。人間ってそうですよね。

けんすう:そうなるんです。何が言いたいかというと、自分の楽しみだったり、自分のお金だったりが目的になるので、「サービスの価値を上げよう」とは思わなかったんですね。サービスの価値をあげても、何の得もないんで。

なので、うまくいかなかったんです。

箕輪:確かに。そう言われると、わかる。

けんすう:Web3でいうと、「サービスの価値を上げないと自分が儲からないので、一生懸命お手伝いする」みたいなことがあるとおもしろいなと。

箕輪:株主も民主化であり、「行動する人と株主的な人との境界を溶かす」みたいなことかぁ。みんなで良くして、みんなで動く。

けんすう:そうですね。

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