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【けんすう×高城剛 賢者の未来予測】「進化する脳と停滞する脳」VR革命で起きる人類を二分化する超格差社会(1/4)

こんにちは!

先日高城剛さんと対談した模様を4回に分けてお届けします!インターネットやコミュニティーの将来はどうなるのか?混沌とする世界の政治や経済の行き着く先は?衝撃的な近未来予測が飛び出しているのでぜひお楽しみください!

★対談相手プロフィール★
高城剛氏
作家、映像作家、広告プロデューサー、DJ、写真家、映画監督など、メディアを超えて横断的に活動。Louis Vuitton、SONYなど100本を超えるCMやミュージックビデオなどの監督やプロデュースを務める。
著書に『2049 日本がEUに加盟する日』『不老超寿』『2035年の世界』『50mm』『BIO HACKING』『いままで起きたこと、これから起きること。』など累計100万部を超える作家としても活躍。2022年には自身が脚本/監督/撮影を務めた初の長編映画となる『ガヨとカルマンテスの日々』を公開。

★高城剛氏が発行するメルマガ
高城未来研究所「Future Report」

■ネットコミュニティが作り上げた「けんすう」という存在

高城剛氏(以下、高城):さっそく、お話しをお伺いしたいと存じますが、毎週金曜日にメールマガジンを出しておりまして……。

けんすう氏(以下、けんすう):はい。僕も読ませていただいています。

高城:ありがとうございます。たまに号外を出していて、その時に今ご活躍されている方にお会いして、お話を伺っております。今回は、インターネットを中心とした次のコミュニティを探りたく、お会いする機会を頂戴しました。ちなみに「けんすう」さんというのはご本名ではないですよね? なぜ、その名前で活動しているのですか。

けんすう:本名は古川健介といいます。インターネットを始めるときに、みなさんハンドルネームを使いますよね。僕がインターネットに触れ始めた当時は、いろんなサイトでいろんなハンドルネームを使っていたんです。そのうちの一つが「けんすう」で、それがそのまま生き残っているんですよ。

高城:インターネットを始めた当時というのは、1990年代ですか?

けんすう:はい。おそらく99年か2000年ぐらいですね。

高城:というと、ITバブルが弾ける前ですね。

けんすう:ええ。その時は学生の中で匿名掲示板が流行っていて、僕はその運営をやっていて、そこで使っていた名前が「けんすう」です。

高城:当時からのファンが今もけんすうさんを追っかけていらっしゃるんですか?

けんすう:はい。たまに声をかけられてびっくりします。

高城:インターネットでのご活躍が長く、けんすうさんは、コミュニティ形成に関してピカイチだと思います。今回は、コミュニティの未来がどうなるか、次の社会がどうなるかというお話を聞ければと考えています。

そういえば、最近本を出版されたそうですね。「物語思考」という本ですが、すでに手に入りにくいそうですね。

けんすう:ありがとうございます。売れているからなのか、販売の問題なのかは不明ですが(笑)。ありがたいことです。

高城:この時代、いわゆる街中の書店は1日1店舗が潰れていくとも言われていて、紙の本は大変貴重だと思います。この「物語思考」は電子でも人気だと思いますが、あえて紙と電子で出される目的や、その違いをどう実感なさっているかお聞きできますか?

けんすう:そうですね。やっぱり身体的な感覚は大事だなと思っていて、電子の伝え方と紙の伝え方は、全然違うと感じています。僕は両方のタイプで出しますが、個人的な思いとしては紙の方をけっこう重視していますね。

高城:けんすうさんご自身が本を買われる時は、電子と紙、どちらが多いのでしょうか?

けんすう:半々ぐらいですね。

高城:ということは、書店にも行かれる?

けんすう:はい、よく行きます。代官山の蔦屋書店や渋谷のTSUTAYAにも行きますし、六本木にある「文喫」に行ったり、くまざわ書店みたいな感じなところにも行きますね。

高城:書店で新しい本との出会いはありますか?

けんすう:ありますね!電子だと出会えない感じがします。書店では、リコメンドされないのがいいと思っているんです。

高城:自分の力で見て、拾っていくってことでしょうか?

けんすう:それもありますし、Amazonだと「こういう傾向ある人はこうだよね」って通り道に運ばれていってしまって、常に一定の本しか出てこない感覚があるんですよ。外れた道に入ることがないから、新しい情報を獲得できないというか。

高城:自分の射程距離の外にあるものが見えてこないと。AIに理解されていないご自分に興味があるんでしょうか?

けんすう:はい。興味もあるし、仮に興味が無くても本棚にこんな棚がある。それを横から読んでいくと、こんな世界観なんだ…というようなことを知るのって大事なんじゃないかと思うんです。

高城:そうした書店で、最近お買いになった珍しい本はありますか?

けんすう:珍しい本というと…新刊ではないですが、20~30年ぐらい前に書かれた、未来はこうなるという予測をしている本を見るのが面白いですね。最近「2050年の世界」という本が出たんですが、その著者で経済ジャーナリストのヘイミシュ・マクレイが、30年ぐらい前に2020年の金融世界について書いた本があって、それもあわせて読みました。

高城:2020年についての予測については、実際に検証できますよね。だいぶ当たってると思われましたか?

けんすう:当たっているとは思いますが、当時と2020年の今の日本ではテンションがかなり違うと感じました。1995年ぐらいに書かれた本では、まだ日本は元気なイメージで、中国に対してはまだ懐疑的だったりする。現在書かれたものとニュアンスが違うので、そこを読み解くのが面白かったですね。

■書店の本も超速自炊。電子書籍に適合した高城式読書術

高城:確かに当時の日本は1人当たりのGDPが世界トップ1、2位で、今はもう20台後半ぐらいですからね。その間に、恐ろしい格差も生まれたし、国力自体が低下していますよね。自由民主主義国家の三大国力と言われる経済力(ファイナンシャル・パワー)、文化力(ソフト・パワー)、軍事力(ハード・パワー)の、どれもが周辺国家に抜き去られています。それに対して、けんすうさんは危惧していますか?

けんすう:そうですね…日本は150年以上前にはちょんまげを結っていたり、日露戦争(1904~1905年)のころは、すごいライジングしている感じだったんだろうなと考えると、30年や50年も先の未来はどうなるのか、全然わからないなという気持ちになります。

高城:2019年にノーベル経済学賞を受賞したMITのアビジット・バナジー教授とエステール・デュフロ教授は、「テクノロジーやインターネット、イノベーションが経済成長を促進させるという証拠やデータは一切ない」」と言っています。たとえばビジネス系の映像メディアを見ると、イノベーションが肝心だと言い、インターネットやデジタル、情報化が、これからの生活を変えていくと伝えていますよね。でも、デジタルイノベーションが経済成長を牽引するのは幻想で、経済成長したことは一度もないのが歴史的事実ですが、たぶん多くの起業家はイノベーションを探し求めています。そう考えると、我々はまるで熱にうなされるように、何か変わった物語の中に生きてるんだと思うんですよ。

けんすう:つまり、成長しないけど成長していると思っていることが変わってるということですね。そもそも、インターネットという大きなものが出来ているのに成長しない世界に入っているということですか。

高城:おそらく両方だと思います。インターネットは平準化や利便性を高めたのは事実ですが、これは成長にはあまり関係ない要因なのではないかと。

けんすう:なるほど。面白いですね。

高城:非常に面白いと思っているんです、バナジーの考察は。いまも多くの人は、インターネットというか、デジタルや情報化、透明化やイノベーションが起きれば、日本は成長できるという論調が圧倒的ですよね。でも、それが錯覚だとしたら。

けんすう:かなりまずいことになりますね。

高城:ええ。だから今回、けんすうさんに未来はどうなるのかと感じているのかすごく聞いてみたいと思っているんです。ちなみに少しだけ僕の話をすれば、全く紙の本を買わなくなりました。これにはいくつかの身体的な理由があるのですが、まず、光ってないと読めなくなっちゃったんです(笑)。

けんすう:光ってるから読みづらいという人は見たことがありますが、光っていないと読みづらいという人は珍しいですね(笑)。目がデジタルの本に適合したということですか?

高城:そうかもしれません。身体的な変化なのか、進化なのか……あえて今日は、進化としましょうか。ただ、紙の本でしか出版されていないものもたくさんあるので、仕方がないから自炊というか、断裁してデジタルで読むんです。先ほど、身体的な感覚のお話が出ましたが、もはや身体感覚が希薄になり、浮遊しているような感覚があります。

けんすう:高城さんは適応するスピードが速いんですよ。きっと。

高城:これは遺伝子というかSNPs(一塩基多型)の問題でもあります。多くの人類は変化に対応しづらくて、だから保守的になる。特に日本人は変化に強い遺伝子を持っている人が少ないことがわかっています。ただ、人類史で捉えると、6万5000年前に人類がアフリカを出て海を渡ったのは、変化を求めたからです。変化していく人たちだけが残り、結局彼らは淘汰されるのが人類史なわけですよね。進化論でも同様です。だから、遅かれ早かれ紙の本ももっと淘汰されていくのではないでしょうか。実際、僕の読者の8割が電子です。進化中の読者が多いんだろうなと勝手に夢想しています(笑)。

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